Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

梅田俊明/都響

2014年01月24日 | 音楽
 出先から直接、上野へ。都響の定期だが、かなり早めに着いたので、国立西洋美術館に寄った。ムンクの版画展を観るためだ。同館所蔵の作品34点の展示。そのなかには連作版画「アルファとオメガ」がふくまれている。2012年5月にエッティンガー指揮の東京フィルが日本初演したギル・ショハットGil Shohat(1973‐)のオペラ「アルファとオメガ」の原作だ。

 これは奇妙な作品だな、と思った。アダムとイヴの話を下敷きにしているが、なんともいえず、ねじ曲がっている。グロテスクな変形。そのストーリーを説明すると長くなるので控えるが、ともかく、愛、性、嫉妬そして死の物語だ。ムンクの原風景というか、原風景の奇妙な表明だ。

 よくこれをオペラにしたものだと思った。ムンクはムンクでいいが――変な言い方だが――、それをオペラにする感覚がすごい。あの音楽は、甘く、苦く、一筋縄ではいかない音楽だったと記憶しているが、さて、どうだったろう。

 では、話を本題に戻して、都響。1曲目は安良岡章夫(1958‐)の「レイディアント・ポイント2」(注)。独奏打楽器とオーケストラのための曲だ。独奏は安江佐和子。その力量は高く、打楽器だけ聴いていると面白いのだが、曲としては意外に‘熱さ’を感じなかった。

 2曲目は同じ作曲家の「ヴィオラとオーケストラのためのポリフォニア」。ヴィオラ独奏は川本嘉子。これは面白かった。ヴィオラとオーケストラがかみ合っている。とすると、前曲ではそれが足りなかったのか。振り返ってみると、前曲では独奏打楽器とオーケストラとの関係がよそよそしく、オーケストラが一歩引いていたような感じがする。

 3曲目はシェーンベルクの「5つの管弦楽曲」。この曲を聴くのは久しぶりなので、楽しみにしていたが、正直いって、つまらなかった。音を置きにいっているというか、端的にいって、ちっとも表現主義的に聴こえなかった。申し訳ないが、その責めは指揮者に負ってもらいたいと思うのだが。

 面白かったのは片山杜秀のプログラム・ノートだ。シェーンベルクの妻マティルデは若い画家のゲルストルと恋におち、1908年の夏に家出した。同年10月に妻は家に戻り、12月にゲルストルは自殺した。このエピソードはよく「弦楽四重奏曲第2番」と関連付けて語られるが、片山杜秀は「5つの管弦楽曲」と関連させ、絵解きのように解説してみせた。
(2014.1.23.東京文化会館)

(注)「2」はローマ数字の大文字だが、変換できないので「2」とした。
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