Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ファビオ・ルイージ/N響

2014年01月27日 | 音楽
 ファビオ・ルイージ指揮N響のAプロ。オルフの「カトゥリ・カルミナ」と「カルミナ・ブラーナ」という魅力的なプログラム。「カトゥリ・カルミナ」は実演に接する機会がめったにないので、これを逃す手はない、と飛びついた。

 ステージを見て、「そうか、こういう編成だったか」と思い出した。指揮者の前に4台のピアノ、その後方に多数の打楽器(10人の打楽器奏者が演奏)。ストラヴィンスキーの「結婚」と同じ編成だ。オルフが「結婚」を参照したことはまちがいない。もっとも、「結婚」の精緻きわまる――ある意味で人工的な――リズムに比べて、こちらはもっとシンプルだ。器楽パートだけではなく、声楽パート(ソプラノ独唱とテノール独唱そして混声合唱)についてもそういえる。

 器楽パートが出てくるのは「序奏」と「大詰め」だけ。中間の第1幕~第3幕は声楽パートだけ。ア・カペラで延々と続く。これは怖いだろうなと察するとともに、こういう特殊な曲だからオーケストラのプログラムには載りにくいのだな、と納得した。

 その声楽パートだが、ソプラノ独唱はモイツァ・エルトマン。ステージに出てきた途端に目を見張った。スリムな美人だ。こういってはなんだが、オペラ歌手とは思えない体つきだ。ベルリン国立歌劇場で2012年に「ルル」のタイトル・ロールを歌ったそうだ。「ルル」か、……観てみたい。

 テノール独唱はヘルベルト・リッパート。ベテラン歌手だ。最近ではウィーンで「死者の家から」を観た。健在だった。今回は、どういうわけか、時々苦しそうにしているような気がした。

 合唱は東京混声合唱団。もう見事の一言に尽きる。器楽の支えがない状態で、あの長丁場を、崩れもせず、よく歌い切ったと感心する。

 器楽パートも見事だった。10人の打楽器奏者というと、やかましい音楽を想像する向きもあるかもしれないが、けっしてそうではなく、塵一つない――と形容したくなるほどの――秩序だった音楽だ。くわえて、ピアノも打楽器的に使われているので、4人のピアノ奏者をふくめた14人の器楽奏者が、整然とした演奏を展開した。

 「カルミナ・ブラーナ」も名演だった。オーケストラがマッスで咆哮する部分でも、ダンゴ状態にならずに、すべての音が明瞭に聴きとれる、と感じられる演奏だった。今まで何回聴いたかわからない曲だが、これほどの演奏には出会ったことがないと思った。
(2014.1.25.NHKホール)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする