新国立劇場の「カルメン」。これは典型的なレパートリー公演だ。
私事だが、4年前に現役を退いて、時間ができたので、新国立劇場の年間会員になった。現役のときには観られなかったプロダクションを観ることができて面白かった。だが、それも4年たつと、繰り返し観るプロダクションが出てくる。「カルメン」もその一つだ。正直いって、モチベーションが上がらない。年間会員はもうやめようかと思ったが、芸術監督が代わって、来シーズンは俄然力のこもったラインアップになった。とりあえず来シーズンも続けてみるかと――。
で、その「カルメン」だが、レパートリー公演はこんなもの、といってしまえばそれまでだが、なんとも新味のない、――実感に即していうなら――なんの発見もない公演だった。最近、林田直樹氏が「どんな演奏会(公演)にも学ぶべき点はある」という趣旨のことを書いておられて、ひじょうに共感したのだが、残念ながらこの公演は――わたしとしては――お寒い結果になった。
なんでそうなったか。第一義的には演出にその要因があると思う。ストーリーを丁寧になぞった演出だとは思うが――なので、「わかりやすい演出」とか「初心者にも安心して勧められる演出」とかと評価する向きもあると思うが――、残念ながら演出家の主張はあまり見いだせない。演出家がこのオペラをどういう切り口で提示しようとしているのか。それが中途半端というか、こちらに伝わってこないのだ。
細かい点もいろいろある。たとえばカルメン登場の場。例のハバネラを歌いながら、胸にさした赤いバラをだれに投げつけようかと思わせぶりなカルメンを、兵隊たちがひざまずいて取り囲む仕種。これなどは、あゝ、ステレオタイプ!と思ってしまった。
やはり「カルメン」はこの劇場にとってトラウマなのだろうか。いや、トラウマというよりも、可もなく不可もないこの演出の、その可もなく不可もない点にこそ、考えるべき課題があるのではないだろうか。
「カルメン」は当然どの劇場でもレパートリーとして持っていなければならない演目だが、このままではまずいのではないか。
なお、今回ほとんどの歌手と指揮者は前回(2010年)と代わり、イメージを一新した。その点での面白さはあったが、でも、そのレベルにとどまると、品評会とあまり変わらないことになってしまう。オペラの受容とはそんなものではないはずだ。
(2014.1.29.新国立劇場)
私事だが、4年前に現役を退いて、時間ができたので、新国立劇場の年間会員になった。現役のときには観られなかったプロダクションを観ることができて面白かった。だが、それも4年たつと、繰り返し観るプロダクションが出てくる。「カルメン」もその一つだ。正直いって、モチベーションが上がらない。年間会員はもうやめようかと思ったが、芸術監督が代わって、来シーズンは俄然力のこもったラインアップになった。とりあえず来シーズンも続けてみるかと――。
で、その「カルメン」だが、レパートリー公演はこんなもの、といってしまえばそれまでだが、なんとも新味のない、――実感に即していうなら――なんの発見もない公演だった。最近、林田直樹氏が「どんな演奏会(公演)にも学ぶべき点はある」という趣旨のことを書いておられて、ひじょうに共感したのだが、残念ながらこの公演は――わたしとしては――お寒い結果になった。
なんでそうなったか。第一義的には演出にその要因があると思う。ストーリーを丁寧になぞった演出だとは思うが――なので、「わかりやすい演出」とか「初心者にも安心して勧められる演出」とかと評価する向きもあると思うが――、残念ながら演出家の主張はあまり見いだせない。演出家がこのオペラをどういう切り口で提示しようとしているのか。それが中途半端というか、こちらに伝わってこないのだ。
細かい点もいろいろある。たとえばカルメン登場の場。例のハバネラを歌いながら、胸にさした赤いバラをだれに投げつけようかと思わせぶりなカルメンを、兵隊たちがひざまずいて取り囲む仕種。これなどは、あゝ、ステレオタイプ!と思ってしまった。
やはり「カルメン」はこの劇場にとってトラウマなのだろうか。いや、トラウマというよりも、可もなく不可もないこの演出の、その可もなく不可もない点にこそ、考えるべき課題があるのではないだろうか。
「カルメン」は当然どの劇場でもレパートリーとして持っていなければならない演目だが、このままではまずいのではないか。
なお、今回ほとんどの歌手と指揮者は前回(2010年)と代わり、イメージを一新した。その点での面白さはあったが、でも、そのレベルにとどまると、品評会とあまり変わらないことになってしまう。オペラの受容とはそんなものではないはずだ。
(2014.1.29.新国立劇場)