Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

秋山和慶/都響

2014年01月12日 | 音楽
 都響の定期Bシリーズ、「日本管弦楽の名曲とその源流」の第17回。秋山和慶の指揮。今年初めて聴く演奏会だ。

 1曲目はフリードリヒ・チェルハ(1926‐)の「シュピーゲル(鏡)」第2曲。55人の弦楽器奏者によって演奏される曲。スコアは55段組み。その見開きページがプログラムに印刷されていた。どう見ても右上から左下にかけての対角線上に楕円形が見える。片山杜秀氏のプレトークで事情が判明した。楕円形のその内側(白抜きの部分)には音符がなく(つまり休止)、楕円形の外側(黒い部分)には音符が書かれているとのこと。さらに驚くことには、各見開きページに同様のグラフィック(菱形や四角など)が見られるとのこと。

 もっとも、問題は――というか、重要なことは――それがどういう音楽を形成するかだが、55人の奏者がほんのわずかずつズレながら集団に入り、かつまた離れていく推移が、たとえていうなら、無数の虫が飛んでいくときに、集団の形が少しずつ変わっていくような印象を受けた。

 こういうことは電子音楽でやれば簡単なのかもしれない。でも、それを生身の人間にやらせることに――ある意味、過酷な――ライヴ感があった。チェルハは「ルル」を補筆・完成させた人だが、こういう音楽を書いていたのか。

 2曲目は原田敬子の「エコー・モンタージュ」。予定されていた新曲がこれに差し替えられた。事情は知らないが、ツィッターの世界ではとんでもない憶測(=デマ?)が流れていた。まったくどうしようもない世の中だ。

 事情はどうであれ、この曲を聴けてよかった。じつに大胆かつ鮮烈な曲だ。決然としたたたずまいは驚嘆に値する。その才能は群を抜いている。この曲はN響の委嘱作品で、Music Tomorrow2008で初演され、尾高賞を受賞し、翌年再演された。わたしはどちらも聴いていないので、よい機会だった。

 以上2曲は演奏困難な曲だと思うが、さすがに都響は見事に演奏した。今は絶好調なのだろう。秋山和慶の指揮も見事だ。昔から――若手指揮者の頃から――ずっと聴いてきたが、ベテラン指揮者になった今でもこれらの曲に果敢に挑む姿勢がうれしい。

 3曲目は池辺晋一郎のシンフォニー5「シンプレックス」(注)。原田作品にくらべると50年以上前の作品のように聴こえるが、これはこれでいい。わたしたち聴衆を解放して演奏会を終わらせてくれた。
(2014.1.10.サントリーホール)

(注)「5」は正しくはローマ数字の大文字です。このブログでは変換できないので、「5」としました。
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