Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

風景画の誕生展

2015年11月13日 | 美術
 Bunkamuraのザ・ミュージアムで開催中の「風景画の誕生」展に行ってきた。この会場は、ありがたいことに、会期中は無休、しかも平日は夜7時まで(金曜日と土曜日は9時まで)やっているので、仕事の都合を見ながら行くことができる。

 本展は風景画の誕生をいくつかの出発点――たとえば‘宗教画’の背景として描かれた風景、1月から12月までの各月の情景を描いた‘月歴画’の中の風景、王侯貴族の日々の祈りのための‘時祷書’に描かれた風景――に遡って捉えた内容。研究者にとっては興味深い内容だろうし、わたしのような素人も気楽に楽しめる。

 会場に入ってすぐの作品は「二人の天使のいる聖母子」(バスティアーノ(またはセバスティアーノ)・マイナルディに帰属)。ボッティチェリ風の作品だ。普通の展覧会なら幼子イエスに授乳する聖母マリアの作例として見るだろうが、‘風景画’が切り口の展覧会なので、窓外の風景にも目が行く。この辺の意識の変化が(自分でも)可笑しい。

 以下、知っている画家は少なかったが、未知の画家との出会いが、こういう展覧会の醍醐味ではないだろうか。わたしはルーカス・ファン・ファルケンボルフ(1535‐1597)という画家が‘発見’だった。

 ファルケンボルフという画家は、マルテン・ファン・ファルケンボルフと、上述のルーカスと、2人来ていた。わたしが惹かれたのはルーカスのほうだ。その作品は2点あった。一つはチラシ(↑)に使われている「夏の風景(7月または8月)」。ブリューゲル風の作品だ。画像だと分かりづらいが、会場で間近に見ると、前景の農民たちの表情が漫画的でユーモラスだ。

 もう一つは「盗賊の奇襲が描かれた高炉のある山岳風景」。題名どおり、山道で盗賊に襲われて、必死の形相で逃げる男が描かれている。これも漫画的でユーモラスだ。男には気の毒だが、思わず吹き出してしまう。

 ファルケンボルフはピーテル・ブリューゲル(1525/30‐1569)の後輩の世代だろう。どのような人生を送った人か、また(画家として)だれとどういう繋がりを持った人か、まったく知らないのだが、ブリューゲルとの共通点が感じられる。加えてブリューゲルにはない‘やんちゃな’個性がありそうだ。

 ウィーン美術史美術館に行って見たら、並みいる巨匠たちの中に埋もれてしまうだろう。日本にいればこその発見だ。
(2015.11.12.ザ・ミュージアム)

主な作品(本展のHP)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする