大野和士が都響のヨーロッパ・ツァー(11月13日~23日)に持っていくプログラム。1曲目はラヴェルの「スペイン狂詩曲」。第1曲「夜への前奏曲」の冒頭で弦が奏でる弱音に絹のような光沢があった。大野/都響の美質の一つかもしれない。
全体に入念な演奏だった。音づくり、表情付け、普段は埋もれて聴こえない音の動きの掘り起こし、どれをとっても入念だった。びっしりと中身の詰まった演奏。この曲でこれほど聴き応えのある演奏はあまり経験がないと思った。
2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。ヴァイオリン独奏はレーピン。第3楽章の最後の追い上げはさすがにスリル満点だった。
でも、実をいうと、オーケストラの方が面白かった。大野和士の音楽の感じ方がよく分かった。大野和士は音楽に具体的なドラマを感じているようだ。息つく暇もない活発なドラマ。意外性があり、どう展開するか分からないドラマ。コミカルだったり、シリアスだったりするドラマ。そんな音楽の感じ方が、音色やテンポの多様な変化に表れ、また思いがけない音の動きに表れているように感じた。
3曲目は細川俊夫の新作「嵐のあとに」。演奏時間18分ほどの曲で、前半はオーケストラが‘嵐’を表現し、後半は2人のソプラノがヘルマン・ヘッセの詩「嵐のあとの花」を歌う。東日本大震災が強く意識された曲だ。
前半の音楽は、風の音や波の音の模倣を挟みながら、膨張と収縮を繰り返す。細川俊夫の得意な音楽だ。後半の音楽は、ソプラノ2人が2本の糸をより合わせるように歌う。全体に分かりやすい曲だ。オーケストラの演奏会に普通に収まる曲。細川俊夫に委嘱が絶えない所以だろう。
ソプラノ二重唱はスザンヌ・エルマークとイルゼ・エーレンス。前者の明るく華やかな声にたいして、後者の陰影のある細い声が(そう作曲されているからかもしれないが)、絶妙なバランスを保っていた。
4曲目はドビュッシーの「海」。前3曲でかなり疲れてしまったが、もう1曲あると気合を入れて聴いた。音が瑞々しい。第2楽章「波の戯れ」の後半では、めくるめくような激しい演奏に息を呑んだ。思い返せば、前3曲でも感得されたことだが、大野和士の動的な音楽性の総仕上げというか、そのピークに触れるような気がした。第3楽章「風と海の対話」でのトランペットのファンファーレ音型はなかった。
(2015.11.2.サントリーホール)
全体に入念な演奏だった。音づくり、表情付け、普段は埋もれて聴こえない音の動きの掘り起こし、どれをとっても入念だった。びっしりと中身の詰まった演奏。この曲でこれほど聴き応えのある演奏はあまり経験がないと思った。
2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。ヴァイオリン独奏はレーピン。第3楽章の最後の追い上げはさすがにスリル満点だった。
でも、実をいうと、オーケストラの方が面白かった。大野和士の音楽の感じ方がよく分かった。大野和士は音楽に具体的なドラマを感じているようだ。息つく暇もない活発なドラマ。意外性があり、どう展開するか分からないドラマ。コミカルだったり、シリアスだったりするドラマ。そんな音楽の感じ方が、音色やテンポの多様な変化に表れ、また思いがけない音の動きに表れているように感じた。
3曲目は細川俊夫の新作「嵐のあとに」。演奏時間18分ほどの曲で、前半はオーケストラが‘嵐’を表現し、後半は2人のソプラノがヘルマン・ヘッセの詩「嵐のあとの花」を歌う。東日本大震災が強く意識された曲だ。
前半の音楽は、風の音や波の音の模倣を挟みながら、膨張と収縮を繰り返す。細川俊夫の得意な音楽だ。後半の音楽は、ソプラノ2人が2本の糸をより合わせるように歌う。全体に分かりやすい曲だ。オーケストラの演奏会に普通に収まる曲。細川俊夫に委嘱が絶えない所以だろう。
ソプラノ二重唱はスザンヌ・エルマークとイルゼ・エーレンス。前者の明るく華やかな声にたいして、後者の陰影のある細い声が(そう作曲されているからかもしれないが)、絶妙なバランスを保っていた。
4曲目はドビュッシーの「海」。前3曲でかなり疲れてしまったが、もう1曲あると気合を入れて聴いた。音が瑞々しい。第2楽章「波の戯れ」の後半では、めくるめくような激しい演奏に息を呑んだ。思い返せば、前3曲でも感得されたことだが、大野和士の動的な音楽性の総仕上げというか、そのピークに触れるような気がした。第3楽章「風と海の対話」でのトランペットのファンファーレ音型はなかった。
(2015.11.2.サントリーホール)