Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

デュトワ/N響

2016年12月18日 | 音楽
 デュトワ/N響のCプロはヴァラィティに富んだカラフルな曲目が並んだ。1曲目はブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」。デュトワがブリテンをどう振るかと期待が膨らんだが、きれいに整った演奏ではあったものの、それ以上のもの(たとえば高いモチベーション)は感じられなかった。

 2曲目はレーピンを独奏者に迎えたプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番。レーピンの独奏は、安定した、まったく危なげのない演奏だったが、どこか醒めたようなところがあり、一言でいって、感興に乏しい演奏だった。

 レーピンの演奏でそう感じたことは、じつはこれが初めてではない。若いころのレーピンとは違って、最近のレーピンは、音楽に興味を失ってしまったというと言い過ぎになるが、音楽との距離が広がってきたような、あるいは音楽との関係が冷えてきたような感じを受ける。

 3曲目はラヴェルの「チガーヌ」。技巧だけで弾ける曲なので、この曲の方がのん気に聴いていられたが、それでもレーピンの醒めたような雰囲気は拭えなかった。

 以上が前半。休憩時には気分が沈みがちだったが、後半に入ってオネゲルの交響曲第2番で気合が入った。16型の分厚い弦が、アタック、音色、その他のあらゆるニュアンスを解き明かすような演奏を繰り広げた。多層的な弦の構造から思いがけないディテールが聴こえてくる瞬間もあり、この曲のすべてが聴けたような手応えが残った。

 最後はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。デュトワは完全にこの曲を手中に収めている‥と、そんな感じのする演奏だった。鮮やかな音色。隙のない構成。デュトワの最良の面が発揮された演奏だった。

 余談になるが、N響では恒例の「最も心に残ったN響コンサート&ソリスト2016」の投票を募集中だ。それもよいのだが、‘最も残念だったコンサート’とかも募集したらどうだろうと、ふと思った。周知のようにドイツのオペラ専門誌「オペルンヴェルト」ではそのような設問があるので(もっと強烈な表現だ)、そのパクリだが。

 「オペルンヴェルト」ではその設問の投票結果も公表しているが、N響の場合は、もし差支えがあるなら、公表しなくてもよいけれど、聴衆の本音はどうかという点は、参考にならないだろうか。少なくともわたしは、もしそのような設問があったら、意見を表明したいが‥。
(2016.12.17.NHKホール)
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