Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

2016年の回顧

2016年12月29日 | 音楽
 今年もそろそろ終わりだ。今年はなにを聴き、なにを見て、なにを学んだのだろうと、自分に問い掛けてみる。そのとき想い出すものはなんだろう。

 音楽では、なんといっても、山田和樹が日本フィル、東京混声合唱団そして武蔵野音楽大学合唱団を指揮して演奏した柴田南雄(1916‐1996)の「ゆく河の流れは絶えずして」のインパクトが強かった。柴田南雄が劇的によみがえった感がある。

 山田和樹は事前にこう語っていた。「今年没後20年を迎える武満徹と柴田南雄だが、武満徹は多くの方がやるだろう。でも、柴田南雄は今年自分がやらないと、しばらく演奏されないかもしれない。赤字が出た場合は私財を投げ打つ」(大意)と。

 その意気込みがいい。当日の演奏は立派なもので、この作品の真価を伝え、今も少しも古びていないことを感じさせた。むしろ東日本大震災を機に「方丈記」が見直されている現状にあって、柴田南雄のこの作品は新たな意味を持ったように感じられた。

 武満徹に関しては、武満徹が深く関与したサントリーホールと東京オペラシティで、それぞれ記念演奏会が開かれた。サントリーホールでは、特殊編成のために演奏機会が稀な2群のオーケストラのための「ジェモー」が演奏された。タン・ドゥンとともに指揮を務めた三ツ橋敬子が精彩を放った。

 一方、東京オペラシティでは、オリバー・ナッセンが指揮する演奏会が開かれた。そのプログラムは、1曲を除いてすべて初期作品、初期作品以外の1曲は亡くなる直前のもの。‘武満トーン’の作品は素通りなのが目を引いた。わたしには今の日本の武満受容に一石を投じたものと感じられた。

 毎年恒例のサントリー芸術財団のサマーフェスティヴァルでは、プロデューサー・シリーズに佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドと板倉康明/東京シンフォニエッタが起用された。ともに地道に現代音楽の演奏を続けてきた団体。そこにスポットライトが当たってよかった。

 わたしは佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドの2公演を聴いた。こういう機会でなければ取り上げることが難しそうな曲が含まれ、演奏水準も高かった。

 最後に海外での経験になるが、バイエルン州立歌劇場で「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を観たときのキリル・ペトレンコの指揮が圧倒的だった。テンポを揺らす表現意欲に溢れた演奏。カラヤン以来の流れを変えるか‥と思われた。

 では、よいお年を。
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