Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

没後100周年オディロン・ルドン展

2016年12月07日 | 美術
 岐阜県美術館はフランスの画家オディロン・ルドン(1840‐1916)のコレクションで知られている。その数253点。2012年に三菱一号館美術館で開かれた「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展は、三菱一号館美術館の新規収蔵品「グラン・ブーケ(大きな花束)」のお披露目を兼ねた岐阜県美術館のコレクション展だった。

 ルドンは今年没後100年。それを記念して岐阜県美術館では2016年4月~2017年4月までの1年間、253点のすべてを展示するという壮大な展覧会を開催中だ(途中展示替えがある)。わたしはたまたま仕事で岐阜県を訪れる機会があったので、ぜひこの機会にと立ち寄ってみた。

 ルドンは1879年、39歳のときに初めて石版画集「夢の中で」を刊行した。遅いスタートだった。本展ではその中から代表作「幻視」が展示されている。聖堂のような空間の中に出現する黒い巨大な眼。それを見て驚く2人の人物。怪奇趣味といってもよいような作品だ。そういう作品が多数展示されている。

 ルドンの作品は、1889年、次男アリの誕生から、劇的に変化する。それまでの黒いモノトーンの作品から、色彩の渦巻く幻想的な作品へ。1890年代に入ってからの色彩豊かな作品群が、わたしたちには馴染みのルドンだ。

 もっとも、本展を見ていると、そんな明快な分岐点があったわけではないことに気付く。1890年代に入ってからも、黒いモノトーンの石版画は制作されていた。本展の中では1899年の石版画集「聖ヨハネの黙示録」がもっとも遅い作例だ。一方、彩色されたもっとも早い作例は1886年の「カインとアベル」だった。

 本展を見ていると、黒いモノトーンの石版画も面白いが、鮮やかな色彩の油彩画やパステル画の魅力はやはり格別だと思った。ルドンでなければ出せない色彩。それは黒の世界の住人(ルドン)が夢見た色彩の世界だと思った。色彩への憧憬、もっといえば焦燥感のようなものが感じられた。

 ルドンは、わたしのような音楽好きには、武満徹と結びつく画家だ。武満徹はルドンが好きだった。武満徹のピアノ曲「閉じた眼」と「閉じた眼Ⅱ」は、ルドンの「眼をとじて」に触発された曲だ。「眼をとじて」には油彩画と石版画との両ヴァージョンがあるが、本展では石版画3点が展示されていた。

 帰宅後、久しぶりにポール・クロスリー演奏のCDで両曲を聴いた。
(2016.12.6.岐阜県美術館)
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