Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヤノフスキ/N響

2017年11月13日 | 音楽
 ヤノフスキとN響とはワーグナーの「リング」4部作の上演ですっかり信頼関係を築いたようで、それが如実に感じられる演奏だった。プログラムはヒンデミット2曲とベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。演奏順とは逆になるが、両者の今が感じられる「英雄」から先に感想を記したい。

 弦は16型(16-14-12-10-8)、木管は倍管(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット各4)、ホルン3、トランペット2そしてティンパニ1対。木管は倍管だが、それによって木管が強調されるわけではなく、16型の弦に合わせたバランスの補強にとどまる。興味深かった点は、ティンパニの音を抑えていたこと。名手、植松氏がティンパニに入ったが、普段は打音が強い植松氏が、この日は極力音を抑えていた。

 で、オーケストラの音はどうなるかというと、弦主体の音になった。ずっしりと厚みのある、だがけっして重くはなく、ニュアンス豊かな弦の音が、オーケストラの前面に立った。比喩的にいえば、尖った音ではなく、丸い音だが、たんに丸いだけではなく、弱音が徹底的にコントロールされていた。

 往年の巨匠を想わせる演奏。でも、だれかに似ているかというと、ちょっと思いつかない。現代に生きる巨匠。N響の歴史から考えると、サヴァリッシュやシュタインの系譜につながる可能性があるが、三者三様の面もある。ヤノフスキの台頭はN響にとって重要な意味を持つかもしれない。

 平末広氏執筆のプロフィールによると、ヤノフスキはベートーヴェンの交響曲全曲録音を「構想中」とのこと。仮に実現するとして、オーケストラはどこになるのだろう。長年芸術監督を務めてきたベルリン放送交響楽団は2016年に退任しているが‥。

 ともかく、現代においては希少価値があり、また、だれか受け継ぐ人がいるかどうか、見当がつきにくい芸風なので、ぜひとも実現してほしいもの。

 話を戻して、前半のヒンデミットだが、曲目は「ウェーバーの主題による交響的変容」と「木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲」(独奏はN響の首席奏者たち)。前者では、とくに刺激的な表現ではないのに、作曲者が仕組んだ奇妙でシニカルなパッセージが浮き上がった。

 後者はヤノフスキ自身「演奏するのは初めて」とのこと。妙に明るい曲。演奏する側は面白いかもしれない。
(2017.11.12.NHKホール)
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