Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「シャガール 三次元の世界」展

2017年11月27日 | 美術
 先日、元の職場の友人たちと飲み会があった。スタート時間が遅かったので、それまでの空き時間で「シャガール 三次元の世界」展に行った。金曜日の夜間開館の時間帯だったが、予想外に人が多かった。シャガール人気の故か。

 シャガール(1887-1985)は長命だったが、その長い画業の中で、1950年頃から陶器や彫刻なども手がけるようになった。本展は初期から晩年までの油彩画、版画などとともに、それらの陶器と彫刻を展示したもの。シャガールの全体像を知るためには必見の展覧会と思っていたので、行けてよかった。

 わたしは、陶器はよく分からないので、彫刻のほうが面白かった。素材は大理石やブロンズの他、(わたしには未知の)ロニュの石というものも使われていた。プロヴァンスの一都市ロニュで採掘された石。淡い茶褐色の色を持ち、微細な化石を含むザラザラした粗い質感。

 そのロニュの石を使った彫刻が4点展示されていた。どれも1951~1954年の作品。その頃シャガールがロニュの石を入手したという事情でもあったのか。モーゼ、キリストという宗教的なテーマと、恋人たち、風景という世俗的なテーマとがあったが、わたしは独特のザラザラした質感から、宗教的なテーマの作品に惹かれた。

 一方、大理石やブロンズを使った作品は、制作年代が1950年代初めから1980年代初めまで広範囲に渡っていた。わたしは、雪のように白く、きらきら光る微細な成分が浮く大理石の作品に、惹かれるものが多かった。

 一例をあげると、旧約聖書からテーマをとった「ヤコブの梯子」(1973年)。縦長の直方体の素材に、下からヤコブ、ヤコブの肩から上方に伸びる梯子、その梯子の上に2人の天使、左右の側面に各1人の天使が彫られている。油彩画にはない凝縮した造形。大理石に刻まれた鑿の跡が生々しく、力強い。

 それらの彫刻、陶器、油彩画、版画などに囲まれていると、たっぷりシャガールの世界に浸った気分になった。またニースにある国立マルク・シャガール美術館から来た彫刻5点に接することができたことも、得難い機会だった。

 わたしは今年5月にドイツのマインツに行ったとき、シャガールのステンドグラスがある聖シュテファン寺院を訪れ、想像を超える美しさに時間がたつのを忘れた。そして本展。わたしの中でシャガールの世界が広がりつつあるのを感じる。
(2017.11.24.東京ステーションギャラリー)
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