Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ:ミクロコスモス「ヴェールを剥がれた夜」

2019年05月06日 | 音楽
 ラ・フォル・ジュルネは5月5日の最終日に出かけた。4公演聴いたが、中でもミクロコスモスという合唱団(ロイック・ピエール指揮)の公演が圧倒的だった。

 プロフィールによると「30歳以下の約40名の歌手から構成される」というが、今回の公演では30名くらいの編成だったろうか。男女ほぼ半々の団員たちが、舞台上だけではなく、客席まで使ってパフォーマンスを繰り広げた。

 「ヴェールを剥がれた夜」と題されたその公演は、「おおまかに3部から構成」(プログラムの解説)される。特定のストーリーがあるわけではないが、おもしろく、飽きさせない。なぜ、おもしろいのか、それを説明しようとすると難しいのだが、次から次へと生起する団員たちの動きが、意表を突き、予想ができない。そして一種の儀式的な雰囲気がある。それがおもしろいのではないか。

 合唱団なので、当然、歌が歌われるが、プログラムに掲げられている曲目は13曲あり(ただし、同じ曲が第1部の冒頭と第3部の冒頭で歌われるので、実質的には12曲)、その中で曲がりなりにもわたしの知っている曲は、プーランクの「人間の顔」(抜粋)とグリーグの「抒情小曲集」作品71だけ。しかもグリーグのその曲はピアノ独奏曲なので、だれかが歌詞を付けたものだろうか。

 あとの曲は作曲者も知らない曲ばかり。それがどの曲も親しみやすく、懐かしい感じさえする。ある曲が終わり、余韻に浸っていると、誰かが(一人または複数で)別の曲を歌い始める。それが波紋のように全員に広がる。それが終わるとまた別の誰かが歌い始める‥という具合に連鎖的に続いていく。

 前述のように、団員たちは舞台上で歌うだけではなく、客席の間の通路を歌いながら練り歩いたり、客席の2列の通路に分かれて並び、連祷のように歌い交わす中で、舞台上のグループがメロディを乗せたりする。また舞台上で歌う場合も、整列して歌うことはまずなく、複雑な動きを伴って歌う。

 指揮のロイック・ピエールは当合唱団の創設者(1989年に創設。本拠地はフランスのトゥール)。プロフィールでは「作曲者、演出家、舞台美術家、造形作家としても活躍」とあるので、当公演のすべてがかれの作品なのだろう。

 最後の曲は「ソンメロー/ペーデション:結婚行進曲」。北欧の素朴な民俗音楽を想わせるその曲を歌いながら、団員たちが腕を組んで退場したとき、思わず感動がこみ上げてきた。
(2019.5.5.東京国際フォーラム ホールB7)

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