Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「絵画のゆくえ2019」展

2019年01月31日 | 美術
 本展は「FACE展」の2016年~2018年のグランプリと優秀賞受賞者の各受賞作品とその後の作品の展覧会。FACE展とは「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募するもので、損保ジャパン日本興亜美術財団の運営。FACEとはFrontier Artists Contest Exhibitionの頭文字を取ったものだ。

 今、東京ではフェルメール、ルーベンス、ムンクなどの展覧会が開催中だが、本展のような公募展には、どんな才能に出会えるか、という楽しみがある。

 本展では、グランプリ受賞者3名と優秀賞受賞者8名の合計11名、総数101点の作品が展示されている。作風はさまざまで、まさに「年齢・所属を問わず」の理念が具現化した感がある。プロなら、本展で将来性のあるなしを見るのだろうが、わたしのような素人は、自分の感性に合う作家を探すことになる。

 一番感銘を受けたのは、遠藤美香(えんどう・みか)という作家の2016年グランプリ受賞作品「水仙」だ。チラシ↑の右上に掲げられた作品で、木版画(墨・和紙)、縦182㎝×横91㎝。チラシだとはっきりしないが、実物を見ると、びっしり彫り込まれた水仙の群生と、そこに溶け込むような女性の姿が、息をのむほど繊細に表現されている。

 その女性の姿だが、スカートの裾を丸めて、中腰になって歩む姿が、チラシだと奇妙に見えるかもしれないが、実物だと自然で説得力がある。少し昔の女性像かもしれないが、女性は原っぱや磯辺をこういう格好で歩いたものだ。

 遠藤美香は1984年生まれなので、けっして年配の方ではないが、古風な感性の持ち主かもしれない。

 わたしが驚愕した作品は、2017年の優秀賞受賞作家、石橋暢之(いしばし・のぶゆき)の諸作品。鉄道関連の風景をリアルに描いたそれらの作品は、なんとボールペンで描かれている。ボールペン?と近寄って見るが、それがボールペンとはわからないほど繊細な線だ。もう一つ驚く点は、この作家が1944年生まれということ!

 最後にもう一人あげると、仙石裕美(せんごく・ひろみ)の2018年グランプリ受賞作品「それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている」(チラシ↑の左下)などの諸作品。この人の作品には一種の強さがある。その強さが透明感と重なり合って、独自の画面を作っている。1982年生まれ。
(2019.1.29.損保ジャパン日本興亜美術館)

(※)本展のHP

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