昨年12月に葵トリオ(ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝したトリオ)の演奏会に行ったとき、チェロを弾いている伊東裕という若手奏者の音楽性に注目した。その伊東裕が東京・春・音楽祭(東京春祭)の「東博でバッハ」シリーズに出演するので、聴きにいった。
プログラムは前半がバッハの無伴奏チェロ組曲第1番とガスパール・カサド(1897‐1966)の無伴奏チェロ組曲、後半がバッハの無伴奏チェロ組曲第2番と同第6番。第1番が始まると、チェロの音が会場の法隆寺宝物館エントランスロビー中に鳴り響いた。まるで残響の多い教会の中で聴いているようだ。「東博でバッハ」を聴くのは初めてではないが、以前とは会場が違うせいか、その鳴り方に驚いた。
そのためかどうか、第1番はよくわからなかった。次のカサドになると、きわめてよく焦点の合った演奏になった。シャープで、明晰で、生気があり、会場の残響もしっかり計算しているようだった。
休憩後のバッハの第2番はカサドと同様に名演だった。伊東裕の真摯な内面と繊細な感性が伝わってくるようだった。最後の第6番は構えの大きな曲だが(演奏もそれにふさわしかったが)、わたしにはよくわからないところがある。
以前に「東博でバッハ」を聴いたときもそうだったが、終演後に東京国立博物館の「総合文化展招待券」をいただいた。総合文化展とは収蔵品展のこと。翌日上野に行く用事があったので、ついでに同館の一角の黒田記念館(↑)に寄ってみた。
黒田記念館は、明治~大正期の画家・政治家の黒田清輝(1866‐1924)の遺志に基づく建物。黒田清輝の作品を多数収蔵しているが、公開期間が限られている。今はちょうど公開期間中なので、よい機会だった。上記の招待券で入るつもりだったが、入り口でチケットの提示を求められなかった。
赤レンガの外観が古風だが、内部の黒光りする廊下やどっしりした扉なども風格がある。その一室に展示された黒田清輝の代表作「読書」、「舞妓」、「湖畔」、「智・感・情」の4作品をじっくり鑑賞した。静かで贅沢な時間だった。
今回は「読書」に惹かれた。窓辺で読書するフランスの女性を逆光で捉えた作品(※)。外から差し込む陽光が女性の額とうなじを照らす。その照り返しが美しい。黒田清輝のフランス留学中の作品だが、画力の高まりが一つのピークを迎え、眩しく輝いている。
(2019.3.26.東京国立博物館法隆寺宝物館、3.27.黒田記念館)
(※)「読書」の画像(東京国立博物館のHP)
プログラムは前半がバッハの無伴奏チェロ組曲第1番とガスパール・カサド(1897‐1966)の無伴奏チェロ組曲、後半がバッハの無伴奏チェロ組曲第2番と同第6番。第1番が始まると、チェロの音が会場の法隆寺宝物館エントランスロビー中に鳴り響いた。まるで残響の多い教会の中で聴いているようだ。「東博でバッハ」を聴くのは初めてではないが、以前とは会場が違うせいか、その鳴り方に驚いた。
そのためかどうか、第1番はよくわからなかった。次のカサドになると、きわめてよく焦点の合った演奏になった。シャープで、明晰で、生気があり、会場の残響もしっかり計算しているようだった。
休憩後のバッハの第2番はカサドと同様に名演だった。伊東裕の真摯な内面と繊細な感性が伝わってくるようだった。最後の第6番は構えの大きな曲だが(演奏もそれにふさわしかったが)、わたしにはよくわからないところがある。
以前に「東博でバッハ」を聴いたときもそうだったが、終演後に東京国立博物館の「総合文化展招待券」をいただいた。総合文化展とは収蔵品展のこと。翌日上野に行く用事があったので、ついでに同館の一角の黒田記念館(↑)に寄ってみた。
黒田記念館は、明治~大正期の画家・政治家の黒田清輝(1866‐1924)の遺志に基づく建物。黒田清輝の作品を多数収蔵しているが、公開期間が限られている。今はちょうど公開期間中なので、よい機会だった。上記の招待券で入るつもりだったが、入り口でチケットの提示を求められなかった。
赤レンガの外観が古風だが、内部の黒光りする廊下やどっしりした扉なども風格がある。その一室に展示された黒田清輝の代表作「読書」、「舞妓」、「湖畔」、「智・感・情」の4作品をじっくり鑑賞した。静かで贅沢な時間だった。
今回は「読書」に惹かれた。窓辺で読書するフランスの女性を逆光で捉えた作品(※)。外から差し込む陽光が女性の額とうなじを照らす。その照り返しが美しい。黒田清輝のフランス留学中の作品だが、画力の高まりが一つのピークを迎え、眩しく輝いている。
(2019.3.26.東京国立博物館法隆寺宝物館、3.27.黒田記念館)
(※)「読書」の画像(東京国立博物館のHP)