Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル~ルイージ/N響

2024年05月12日 | 音楽
 昨日は午後は東京シティ・フィルへ、夜はN響へ行った。連チャンは苦手だが、わたしが定期会員になっている5つのオーケストラのうち4つのオーケストラの演奏会が、昨日と今日に重なったため、2つのオーケストラを振り替えたからだ。

 東京シティ・フィルは藤岡幸夫の指揮。1曲目はディーリアスの「夜明け前の歌」。藤岡幸夫がプレトークで「ディーリアスはイギリス音楽の代表のように思われているかもしれないけれど、ディーリアス自身はフランスに住んでいて、フランスが好きだった」(大意)といっていた。なるほど、そういわれてみると、「夜明け前の歌」はフランス近代の音楽のように聴こえた。

 2曲目はリストのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏は福間洸太朗。緩急のメリハリをつけた演奏だ。演奏によっては捉えどころがなくなりがちなこの曲だが、福間洸太朗の演奏は、現在地がはっきりわかる演奏だ。ピアノの音も輝いていた。アンコールにフォーレの「3つの無言歌」から第3番が演奏された。心優しいシンプルな曲だ。

 3曲目はヴォーン・ウィリアムズの交響曲第2番「ロンドン交響曲」。演奏時間約45分の大曲だ。随所に出てくるロンドンの霧とか、老ヴァイオリン弾きとか、ビッグベンの鐘の音とか、そういったエピソードが藤岡幸夫のプレトークで説明されたので、「ああ、これか」と楽しく聴けた。わたしのように吹奏楽をやった人間には、「イギリス民謡組曲」に似た旋律が出るのも楽しかった。

 次にN響へ。指揮はファビオ・ルイージ。1曲目はリッカルド・パンフィリRiccardo Panfili(1979‐)の「戦いに生きて」Abitare la battaglia。現代イタリアの作曲家の作品だ。現代の作品の例に漏れずに、聴きやすい音で、構成もつかみやすい。演奏時間は約16分。3管編成が基本の大きなオーケストラ編成だが、むしろ音は抑制され、静かな緊張感がある。最後は白黒決着がつくのではなく、霧のような響きの中に韜晦する。

 2曲目以降はレスピーギのローマ三部作が演奏された。その演奏順に一ひねりがあった。まず「ローマの松」が演奏され、休憩をはさんで、プログラム後半が「ローマの噴水」と「ローマの祭り」という順だった。

 3曲の中では「ローマの祭り」がもっとも聴き応えがあった。彫りが深くて、ダイナミックで、いかにもヴィルトゥオーゾ・オーケストラの演奏だ。「ローマの祭り」はアメリカで初演される予定で書かれたので、曲自体、他の2曲とは性格が異なるのかもしれない。他の2曲に抜きん出た派手さは、そう考えると腑に落ちる。
(2024.5.11.東京オペラシティ~NHKホール)

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