Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木秀美/東京シティ・フィル

2022年10月29日 | 音楽
 東京シティ・フィルの定期演奏会に鈴木秀美が客演した。4年ぶりだそうだ。曲目にはハイドンが2曲ふくまれている。ハイドンを聴くのは久しぶりだ。楽しみにしていた。

 1曲目はハイドンの交響曲第12番ホ長調。レアな曲だ。1763年、ハイドン31歳の年の作品だ。もちろんわたしは初めて聴く。全3楽章からなり、第2楽章がホ短調で書かれている。哀愁の漂う美しい音楽だ。演奏は弦楽器が4‐4‐1‐1‐1で、管楽器をふくめても16人の小編成だった。ハイドンは作曲当時、エステルハージ家の副楽長をつとめていた。そのころの同家のオーケストラは14名ほどだったという(柴田克彦氏のプログラムノーツより)。とするなら今回程度の編成だったか。

 ともかくわたしはこの曲が、そして演奏が、たいへん気に入った。清新で、しかもたしかな音楽がある。ハイドンの作品ではあるが、まだ前古典派の名残が感じられる。わたしは前古典派の音楽が好きだ。バロックからウィーン古典派へのあいだの時期の音楽だ。わたしはいままであまり集中的に聴くことはなかったが、残りの人生ではこの時期の音楽を聴くのも悪くないかと思った。

 2曲目はハイドンの交響曲第92番「オックスフォード」。1789年の作品だ。堂々とした威容を誇る作品だ。ハイドンの長足の進歩に驚く。ハイドンの交響曲の数々は交響曲の歴史そのものだとよくいわれるが、まさにそうだと思った。演奏には力感がこもっていた。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第7番。これもメリハリの効いた熱い演奏だった。ハイドンの2曲もそうだが、音の作り方にハッとする箇所があった。第4楽章の熱狂的な演奏はもちろんだが、それ以前の楽章でも、鈴木秀美の、音楽家としての充実が感じられた。演奏全体に、鈴木秀美が屹立しているような存在感があった。

 わたしにとって今年はベートーヴェンの交響曲第7番の当たり年だ。4月にエッシェンバッハ指揮のN響で聴き、6月にはヴァイグレ指揮の読響で聴き、そして10月にはインキネン指揮の日本フィルで聴いた。そのどれにも感銘を受けた。寸描を試みたい気持ちはやまやまだが、煩瑣になるので避けるが、それぞれ個性的だった。今回の鈴木秀美指揮の東京シティ・フィルもまたそうだ。

 チェロのゲスト首席に元N響のレジェンド、木越洋さんが入っていた。体と楽器を大きく揺らして情熱的に弾く姿は少しも変わっていない。もともと熱量の高い演奏をする東京シティ・フィルだが、そこに木越洋さんが入った影響はあるだろう。さらに鈴木秀美の音楽にたいする真摯さと情熱が加わり、今回の演奏に結実した。
(2022.10.28.東京オペラシティ)

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