Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

コルネリウス・マイスターのCD

2020年03月03日 | 音楽
 演奏会が軒並み中止になったので、家でCDを聴いている。今聴いているのは2月28日の読響の定期(定期の前日に中止が決まるという慌ただしさだった)を振る予定だったコルネリウス・マイスターのCDだ。ナクソス・ミュージック・ライブラリーで聴いた範囲で感想を。

 一番感銘を受けたのはツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」だ。オーケストラはウィーン放送交響楽団、2010年5月28日のウィーン・コンツェルトハウスでのライブ録音。マイスターが同響の首席指揮者に就任する直前の演奏だ(首席指揮者就任は2010/11年のシーズンから)。その時期だからこそマイスターもオーケストラも気合が入っていたのかもしれない。と、多少後付けの気味はあるが、そういいたくなるほど緊張感に富んだ演奏だ。ことに冒頭の深々とした響きは印象的だ。マイスターは1980年2月23日生まれなので(ドイツのハノーファー生まれ)、この演奏の時点で30歳。30歳の「若者」という演奏ではなく、もっと堂々とした実力派の演奏だ。

 その後のキャリアを追うと、マイスターは同響の首席指揮者を2017/18年のシーズンまで続けた後、2018/19年のシーズンからシュツットガルト歌劇場の音楽監督に就任している。同歌劇場のホームページを見ると、マイスターの今シーズンの演目は「トリスタンとイゾルデ」など6プログラムで(そのうち一つはダブルビル)、その他にも同歌劇場のコンサート・シリーズを多数振っている。

 その「トリスタンとイゾルデ」の第1幕への前奏曲と愛の死がナクソスに入っている(オーケストラはウィーン放送響、2013年3月と10月のスタジオ録音)。第1幕への前奏曲での弦の切迫したテーマ(トリスタンを表す)と木管の虚ろな応答(イゾルデを表す)、その後両者が絡み合って燃え上がる展開――そのドラマトゥルギーは息をのむようだ。愛の死のほうは、残念ながらソプラノのアンネ・シュヴァネヴィルムスの歌唱が硬いのだが、オーケストラはしなるような演奏だ。

 マイスターは2017年4月から読響の首席客演指揮者に就任したが、その実力を発揮する機会には恵まれなかったように思う。わたしが聴いたかぎりでは、2018年6月19日の定期(リヒャルト・シュトラウス・プロ)でようやくマイスターと読響の息が合ってきたように感じた。そこで今回の定期に期待したが、残念ながら中止になり、マイスターは3月末日で任期終了になる。

 もう一つ、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」のCDをあげておこう(ウィーン放送交響楽団、2011年6月のスタジオ録音)。第2楽章「対の遊び」が、1番奏者だけではなく2番奏者の動きも克明に聴とれ、またハーモニーをつけるパートも鮮明に浮き上がる演奏だ。

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