Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

マスクの品切れ騒動

2020年02月28日 | 身辺雑記
 遅まきながら、わたしもマスクの品切れ騒動を経験した。昨日のことだが、マスクの手持ちがなくなったので、4~5件のドラッグストアをまわったが、どこも品切れで「入荷未定」とのこと。道行く人の多くはマスクをつけているので、皆さんは早手回しにマスクを確保したのだろうが、わたしはいつものとおり要領が悪かった。

 マスクの品切れ騒動を2月27日の東京新聞のコラム「筆洗」が書いている(※)。おもしろおかしく、実感を込めて。その中に「非常時に付け込んで、大量購入し、法外な値段で売っている人間もいるそうだが、(以下略)」というくだりがある。それを読んで、最近読んだ津村記久子の短編小説「小規模なパンデミック」が頭に浮かんだ。

 同作はまさにマスクの品切れ騒動の話。語り手が勤める会社でインフルエンザが流行する。最初は少しずつ広がっていくが、やがて全社的に流行し、ついに臨時休業に追い込まれる。その過程でマスク不足に陥る。ドラッグストアに行っても売り切れだ。社員の中には手作りのマスクをみんなに分ける人もいるが、中には「おれの友達でマスクを調達できる奴がいるから安く売ろうか?」とだれかれ構わず持ち掛ける人もいる。まさに「筆洗」が書いている状況だ。

 同作は短編小説集「職場の作法」に収められている4篇の中の一つ。「職場の作法」は文庫本の「とにかくうちに帰ります」に併録されている。今は文庫本で出ているが、初出は2012年2月の単行本だった。「職場の作法」の4篇はどれもおもしろいが、その中の「小規模なパンデミック」は今の状況を先取りしているので驚く。作家の想像力の凄さだろうか、それとも人間はいつも同じようなことをしている、ということだろうか。

 「小規模なパンデミック」に描かれているように、今のマスク不足も早晩収束するだろうが、問題は今だ。今の世の中では、マスクをつけないで咳をすると、殺気立った視線にさらされる。先日(2月22日)あるオーケストラの演奏会に行ったが、開演前に聴衆の一人が咳きこんだ。そのとき、わたしの席から少し離れた席の人が、キッとした目つきで咳のした方向を睨んだ。それが今の状況だ。

 その演奏会では聴衆の大半がマスクをしていた。わたしの席は2階だったので、それがよく見えた。なんだか病院で聴いているみたいだった。ブラックジョークのような光景だと思った。演奏者から見た客席を想像するとゾッとする。

 昨日は在京オーケストラの公演中止の発表が相次いだ。どこも苦渋の決断だったろう。そうかと思えば、来日を取りやめた外人指揮者もいる。東日本大震災の直後の状況と(事情は異なるが)似てきた。

(※)2月27日の東京新聞の「筆洗」https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2020022702000159.html

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« METライブビューイング「アク... | トップ | コルネリウス・マイスターのCD »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

身辺雑記」カテゴリの最新記事