平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ワールドカップ 日本×オーストラリア

2006年06月13日 | スポーツ
 う~~ん、残念!
 川口はよくセーブした。中澤らディフェンダーはよく守った。

 だが、懸案の決定力不足は解消されていない。
 キリンカップのブルガリア戦に見られるように日本はシュートが下手。
 ブルガリア戦で高原と柳沢はいなかったから、彼らに期待したが……。
 逆にビドゥカやケネディのパワーが目立った。
 スーパーストライカーが必要か?

 中盤に関して言えば、ブルガリア戦のようにボールを支配できないでいた。
 逆に攻め込まれていたし。
 ジーコのサッカーはシステム・戦術よりは個人重視のサッカー。
 テーマは「自由」。システムでガチガチになるよりは、その場その場で臨機応変に対応、応用できることを重視するサッカーだ。
 一方、知将・ヒディングは3-5-2の布陣。
 中田、中村をマークするためだ。
 中田、中村と言えど徹底的にマークされていては仕事はできない。
 三都主らサイドからの攻撃もガードされた。日本はガードに終始。
 個人の技は封じ込められ、相手DFを切り崩すことができなかった。
 自由を重視する個人のサッカー。
 しかし、個人の力を封じ込められては力を発揮できない。日本人向きではない?
 組織的に切り崩していくシステム・戦術は必要か?

 前にボールを運べない以上、有効なのは1点を取ったミドルレンジのシュート。
 とはいえ、これにもシュートの確実性が必要になって来るのだが。
 後半の福西のシュートは失敗。
 また、有効なのは思い切ったカウンター。
 カウンターに入る時、どうして日本はパスで繋いでしまうのか?
 パスで繋いでしまえば時間がかかり、カウンターでなくなってしまう。

 そしてメンタル。
 よくテレビの解説などで言われていることだが、もし駄目押しの2点目を入れていれば、この試合の結果は違っていただろう。
 スポーツでのメンタル面は馬鹿に出来ない。
 悪夢の終盤9分。一挙に3点。
 ここでメンタル面の弱さを露呈した。
 前半から攻め込まれて精神的にはギリギリの試合をしていただけに、緊張の糸が切れると弱い。
 スローイン。川口が前に出て同点。
 同点にされ緊張の糸が完全に切れた。
 あるいは日本は点を取りにいったのだろう。
 逆にカウンター攻撃で2点目。
 (※ここで同点引き分けでもいいから守るという判断もあったと指摘する方も)
 点を取るために大黒投入。
 しかし完全に攻撃モードの日本は同じくカウンターで3点目を取られてしまう。
 前半45分+後半39分は戦術面でのまずさを精神力でカバーしていた。
 しかしそれがなくなると……。
 スポーツでのメンタル面は非常に怖ろしい。
 同時にアスリートたちの精神面の弱さはあまり見たくはない。
 僕を含めて観客は選手たちの戦いの中から力や勇気をもらおうと思って見ている。
 選手たちの中に自分たちと同じ弱さを見たくはない。
 今後のクロアチア戦・ブラジル戦では勇気をもらえる試合を見せてほしい。
 もちろん、僕たちも応援で選手たちに力を与えようと思うが。

★追記
 後半の9分については、至る所で選手の疲労が指摘されている。
 ヒディングは3-5-2で前半を1点でしのぎ、後半の疲労を狙ったのだ。
 192センチのケネディ。
 縦への突破を得意とするケーヒル。
 元気で今までの攻撃にバリエーションを持たせて日本を翻弄した。
 疲労した日本イレブンはついていけない。
 ヒディングの作戦勝ちか?
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功名が辻 本能寺

2006年06月12日 | 大河ドラマ・時代劇
 「本能寺の変」は戦国時代最大の見せ場。
 もはや現代の日本人にとっては、かつての「忠臣蔵」のようなものであろう。
 どう描かれ、どう演じられるか?
 「功名が辻」の「本能寺」は信長の死と共に女性の視点が随所に盛り込まれていた。
  1
 まずは濃(和久井映見)と信長(舘ひろし)。
 千代とのふれあいから、信長の妻として生きていく気持ちを固めた濃。
 狂気にとらわれた信長の心をほぐすのは自分しかいないと思っている。
 久々の膝枕。
 濃は「昔の殿はよく笑われた」と言う。
 昔の記憶。それが信長の心を解きほぐす手段だ。
 そこへ知らされる光秀(坂東三津五郎)の謀反。
 濃に逃げるように指示し、「あの世とやらでまみえようぞ」と告げる信長。
 だが、濃は戻ってくる。
「あの世では殿は地獄で私は極楽。これでは死に別れでございます」
「抜かしたな」
 歴史の真偽はともかく名セリフだ。
  2
 そして光秀と濃。
 薙刀を振るって戦う濃は馬上の光秀と目が合う。
 見つめ合うふたり。
 信長への愛を強めることで、押し隠した光秀への想いが甦る。
 しかし、次の瞬間、鉄砲の音と共に濃が撃たれる。
 愕然とする光秀。
 これも悲劇。
 シェークスピアの歴史劇を見るよう。
  3
 そして光秀の娘・玉(長谷川京子)。
 現在は細川家に嫁いでいるが、細川家は反光秀にまわる様子。
 細川が背けば、諸侯はすべて反光秀になる。
 味方するよう姑・幽斎と夫・忠興に説くが聞き入れてもらえない。
 幽斎は忠興と玉は光秀についてもいいと言ったが、忠興の考えは変わらない。
 玉に謹慎を命じる。
 これも悲劇。
  4
 そして千代(仲間由紀恵)、寧々(浅野ゆう子)、市(大地真央)はこの事態に迅速に対応する。
 市は岐阜城・清洲城の守りを堅め、領民を城に引き入れるように指示を出す。
 六平太(香川照之)から報告を聞いていた千代は寧々の所に行き、避難することを主張する。長浜の領民を岐阜・清洲に逃がすように指示を出し、自らは伊吹山山中に身を隠す準備をする寧々。千代は領民を逃がすことに尽力するように言われた。
 ここで描かれるのは、千代に象徴されるたくましさ。
 女たちはたくましい。
 既に気弱になって妻に励まされる光秀や副田甚兵衛(野口五郎)とは正反対。
 寧々のもとに戻ってきた千代は「お腹がすきました」と言って、握り飯をほおばる。そして疲労からその場で寝入ってしまう。
 千代はいつでも食べられどこでも寝られるたくましい女性なのだ。
(そう言えば、山崎へ向かう前、光秀は眠っていないという描写があった)
 そのたくましさは寧々や秀吉の母(菅井きん)もそう。秀吉の強運と生還を信じている。
 旭(松本明子)は、百姓から野菜を調達してきた。
 堀尾吉晴の妻いと(三原じゅん子)は城の着物や宝物のことを気にしていた。

 このように歴史の名場面に女性たちのドラマを織り込んで作られた今回の「本能寺」は見事。(前回の「光秀転落」は歴史をそのままなぞったドラマだったから、面白くなかった)
 千代と濃、千代と玉の姿も対照的に描かれていていい。
 
 だが、時代が大きく動き始めて、大根を洗う楽天的な千代の顔にもかげりが。
 次回以降が楽しみだ。

★研究ポイント
 物語の作り方:歴史事件に別の物語を織り込ませる。
 シェークスピアのような悲劇を描けるのも大河ドラマならではの愉しみ。
 現代ドラマの悲劇といえば、人の死ぐらいしかない。

★キャラクター研究:山内一豊(上川隆也)。
 天下分け目の決戦。全員が功名を求める中、一豊だけが冷静。
 謀反を起こした光秀の心中に想いを馳せる。
 主人公は他の人間と同じリアクションをしないという好例。
 これで一豊のキャラクターが立った。
 やさしさが伝わった。

 また千代とも心を通じ合わせている様子。
 千代は夢の中で馬に乗って走ってくる一豊を見た。
 一方、秀吉は毛利への密書を持った使者を捕まえた一豊を「運を運んでくる男」と認識したらしい。
 こういうキャラクターの立たせ方もある。

★名セリフ
 「痛いのう……このわしも死ぬのか」
 撃たれた信長が濃に言う。
 天魔・信長が人間に戻った瞬間。

★名場面
 信長の死を知らされる秀吉(柄本明)。
 涙を流す中、黒田官兵衛(斎藤洋介)が「天下を取る絶好の機会でございますぞ」と告げる。
 このシーンも日本人なら誰もが知っている歴史上の名場面と言えるであろう。
 秀吉が大泣きするのか、あっさりと演技で泣くのか?
 さあ、どんな秀吉が描かれるのか?
 今回はあっさり。しかも細川からの密書で鼻をかんだ。

 「敵は本能寺にあり」と言う光秀。
 炎の中で「夢まぼろしの如くなり」と言って命を絶つ信長。
 泣き叫ぶ秀吉。
 これらの名場面を演じる役者さんは役者冥利に尽きるだろう。

★追記
 清水宗治の湖上での切腹。辞世の句を詠む。
 「早くせんか」と急かす秀吉は俗物。

 信長の死を知って大喜びする足利義昭(三谷幸喜)。
 光秀に望む官位を与えると言う。
 義昭は自分と時勢がわかっていない裸の王様。

★追記(公式HPより)
 舘ひろし「信長が死を覚悟した瞬間というのは、きっと笑ったのではないか。”本能寺”撮影に入った瞬間思ったのはそのことでした」

★追記(公式HPより)
 演出・尾崎充信インタビュー
 光秀について
「光秀は“本能寺”以降、“ゆるやかな自殺”が始まっているという形になっています」
 ※ゆるやかな自殺という表現が面白い。
 『是非もない』『しばし相手をしてつかわそう』と言って戦う信長について
「これは信長の意地のようなものだったと解釈しています。もう死ぬことがわかっていながら、なぜ表に出たのか。それは、死に様というか、自らの最期をどう見せるかということでしょうね」
 ※本能寺を銃撃戦にしたのは、革新者信長が弓矢を使うのはおかしいと思ったからなのだそうだ。また、大階段は舞台を意識したものらしい。

★追記(2006年6月14日 読売新聞より)
 脚本の大石静さんは人生についてこう語っている。
「人は意に反して生まれ、意に反して死ぬ。この世に存在すること自体が苦しみなんです」
 その思いを放送中のNHK大河ドラマ「功名が辻」で、坂東三津五郎演じる明智光秀に投影した。織田信長の妻・濃への淡くも断ちがたい恋慕の情に、人の世のままならなさをかみしめる人物として描いている。
そうだ。

 また脚本家について
「不幸な目に遭うと、このことをいつか書こうと思いますね」。
 脚本家は、転んでもただでは起きない。身を削って生んだドラマで、人々を引きつける。

 また立ち直りの3カ条として
1.人のせいにしない。
2.自分だけと思わない。
3.何とかなると思う。
 ※生きる上でも重要なことですね。
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ギャルサー 第9話

2006年06月11日 | その他ドラマ
 ギャルサーの特徴3つ。

  1
 敵が自分である。
 例えば「医龍」。敵は野口教授であり霧島軍司。
 「クロサギ」はカモにする詐欺師であり桂木。
 ギャルサーは個人的な悩みと葛藤する。
 今回は「妹子」という名前。
 自分の劣等感と戦って、いかに克服するかが物語のモチーフになる。
 明確な敵が設定できない現代。
 野口教授は今まで描かれてきた教授像だし、霧島は下手するとギャグになってしまう。
 そのため敵を自分に持ってくるドラマが多くなっている。
 ギャルサーはそれを突き詰めて、誇張したもの。
 その点で「ギャルサー」は新しい。
 今回の名前の件は、殴られ続けるシンノスケ(藤木直人)とお巡り(佐藤隆太)それに変な名前をつけ合ってレミ(鈴木えみ)を迎入れたエンゼルハートのメンバーたちで救った。
「(名前を偽って)ここから逃げてもまた新しい街で同じ事繰り返す。逃げる事、心休まらない。何やっても楽しくない。永遠に妹子幸せになれない」
 と言うシンノスケのメッセージはグッと来る。
「だせえ名前が最高にクールって事なったんだよ」
 というナギサ(新垣結衣)の言葉がグッと来る。

 この様に敵を個人に持ってきたこの作品。
 「名前」「年齢」という漠然としたものを敵にして、自分で勝手に悩んでいる。
 目に見えないものに不安になって、勝手にドツボにはまっている。
 実に現代を象徴する作品だ。
 次回は商店街が敵になりそうだが。

  2
 見たことのない絵。
 前回の土に埋められたサキ(戸田恵梨香)もそうだったが、この作品には見たこともない映像がいっぱい。
 今回は殴る女。
 きれいな女の子がボクシングのファイティングポーズで殴っていく。
 す、すごい! 
 今までのドラマで見たことがない。
 ここが新しい。
 もっとも渋谷にカウボーイがいること自体、すごい映像なのだが。

  3
 ナンセンス。
 全話を貫くイモコ探しは実はあまり重要でない。
 シンノスケはすぐ忘れるし、ジェロ~ニモ~(古田新太)も小野小町のほうに興味があるみたい。
 普通のドラマは目的に向かって主人公たちが戦っていく姿が描かれる。
 しかしギャルサーは……。

 これはお巡りの一ノ瀬の恋にも言える。
 レミを好きになる伏線なんてこれまでの話で何も描かれていない。
 きっかけは、タバコをポイ捨てした文房具屋(高田純次)を殴ったのを見ただけ。

 このいい加減さ、ナンセンスが素晴らしい。
 いい加減、ナンセンスでありながら、メッセージはある。

 今までのドラマに一石を投じたギャルサー。
 今後もこの作品よりもさらにパワーアップした作品を見てみたい。

★ドラマの作り方
 テーマ:個人的なコンプレックスが敵。コンプレックスで落ち込んでいく人物たち。
 企画の作り方:新しい絵。見たこともない絵。無目的・ナンセンス。

★キャラクター研究:小野小町(三浦理恵子)
 日本史好きの父が美しく育つようにという願いをこめて、小町という名前をつけた女性。
 その思いもあって彼女は美しく育ち、渋谷の人気者に。
 ジュリアナのお立ち台では彼女がトップ、スッチー時代は彼女のフライトに合わせて空港前に車の列ができたほど。
 ※ここでそんな話はいいからとユリカ(矢口真里)に止められる。
 そんな彼女が妹・妹子の苦しみに気がついたのは、秋田さんという男性と婚約した時。
 名前が秋田小町になってしまう。
 恥ずかしい。
 妹の気持ちを知った彼女は、早川晶子と名乗りブスの格好をしてドラッグストアに勤めた。
 妹を守るために。妹子という名前がバレるのを防ぐために。
 
 何とブッ飛んだ経歴!
 こういうすごい経歴のキャラが中に入って違和感のないこの作品はやはりスゴイ。
「ハンサムボ-イ、猛烈アタック、ブイブイ」と言うせりふも90年代っぽくていい。

★名セリフ
  1
「夢でも見てたんじゃないですか?」
 シンノスケたちに集会所に運ばれてきたレミ。
 目を覚ますと、仲間たちに殴ってしまったことを謝る。
 その時に言われるせりふ。
 実際の生活でも使えそうだ。

  2
「言えよ。みんな待ってんだろ。おまえのつまんないギャグ聞きたくて、みんなエンゼルハートにいるんだよ」
 レミがみんなのリーダーであることを表すせりふ。
 このせりふを言わせるために、今までのレミのつまらないギャグがあった?

★追記
 今回、ジェロ~ニモの例え話はなかった。
 自分でもないことを言い訳していた。
 しかし、『の』の字は重要と力説。
「小さい頃から木登りが大好きだったの」
 と言われれば、このおてんばさんめとリアクションができる。
 だが、『の』を取ってしまうと
「小さい頃から木彫りが大好きだった」
 と娘の陰惨な過去に触れることになる。(※意味不明)
 さらにへのへのもへじ。
 『の』を取ると
「おまえ、怒られて何ニヤニヤしてんだ!」みたいな顔になってしまう。
 さらに、あのバカボンの名せりふ「これでいいのだ」から『の』を取ると、「これでいいだ」
 すると
「なにがいいんじゃ、この田舎もんが!」と思わず突っこみたくなってしまう。
 ※確かに『の』の字は重要だ。
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クロサギ 第9話

2006年06月10日 | 職業ドラマ
 黒崎(山下智久)を理解して距離を置くことにした吉川氷柱(堀北真希)。
 しかし、話しかけられれば嬉しい。
 黒崎は氷柱を「疫病神」と言う。「何よ、それ!」「世間話だ」。
 たわいない世間話でもできれば嬉しい。

 黒崎に干渉しないことにした氷柱。
 しかし、恋心は干渉せずにはいられない。
 桂木(山崎努)の店で捕まった詐欺師を見て氷柱は「大丈夫なの?」と黒崎に言ってしまう。
 黒崎には「干渉だ」といなされてしまうが。

 また、氷柱は「幸せ教」の信者だ。
 幸せを信じている。
 黒崎にも復讐をやめて幸せになってほしいと思っている。
 氷柱は黒崎に直接言うことができないから三島ゆかり(市川由衣)に言う。
「何もかも放棄してただただ復讐してるだけ?あたしは嫌だよ、そんなの。人生ってもっと夢とか希望とかいろいろあるはずでしょ?ゆかりお願い。あいつを止めて」
 悩みを先輩の祖母にぶつける。
「幸せになろうと思ってない人を幸せにしたいって言うのはやっぱり無理なんでしょうか?」
 祖父は言う。
「幸せなんてそんなたいしたもんじゃないのよ。温かいお布団がいいとかさ。お漬物が美味しいとか。幸せなんてそんなものなのよ」
 氷柱は与えずにはいられない女の子だ。
 そして芯が強い。
 黒崎やゆかりに何を言われても揺るがない。
 自分を信じてまっすぐ前を見つめている。
 若さゆえストレートな部分があって煙たがられるが、思いは強い。
 与えずにはいられない女の子・氷柱は黒崎に幸せを与えようとする。
 幸せを味わってもらおうとする。
 作った手料理。
 黒崎がもらってくれて「やったー!」と喜ぶが……。

 「クロサギ」は2プロット。
  1.桂木への復讐の物語
  2.氷柱との物語
 これに個別の詐欺事件が絡む。
 桂木との話がなかなか進展しないため、どうしても氷柱との話に視点が行くが、次回以降、桂木話に進展がありそう。
「いよいよダメだな。そろそろ捨て時かな?」
 さて、どうなる?

★キャラクター研究:吉川氷柱
 芯の強い女の子。

★ディティル
 黒崎が好きなのは「鴨南蛮」のカップ麺。
 これにねぎをきざんで入れて食べる。
 たまたまカップ麺を見てしまった氷柱。
 カップ麺ではなく手料理を食べさせてあげたいと思う女心。

★追記
 今回のストーリー(公式HPより)
 黒崎(山下智久)のアパートにゆかり(市川由衣)がやって来た。
 今度は夕有子(麗菜)の祖母・辻本ひろみ(白川由美)が詐欺に遭ったのでお金を取り返して欲しいという。
 スピード違反で裁判所を訪れたひろみが手続きに戸惑っていると、親切そうな中年女性が「スピード違反の罰金を安くできる方法がある」と声をかけて来たのだと言う。
 すっかりその言葉を信じたひろみは、“罰金を安くするための手続き料”をその女性・冴島洋子(片平なぎさ)から指定された口座に振り込む。
 ところが、そんな手続きが存在するはずはなく、全くのデタラメだったのだ。
 桂木(山崎努)に、冴島の情報を依頼した黒崎は、彼女が区役所や税務署、警察などでその役所の人間になりすましてカモを狙う「なりすまし詐欺専門のシロサギ」であることを聞かされる。
 しかもこの冴島という女、もともと女優志望で芸は細かいらしい。

 黒崎は、税務署職員に“なりすました”冴島に接近。
 桂木から買った財団法人のバカ息子を装い遺産相続の相談を持ちかける。
 冴島はいいカモが見つかったとほくそ笑むが、それこそが黒崎の狙いだった…。

 ある日「桂」の店で詐欺のプランを買っていたシロサギが、店を出た途端に神志名(哀川翔)から詐欺容疑で逮捕される。
 黒崎を執拗に追う神志名から桂木への宣戦布告なのか?
 そこへ偶然、氷柱(掘北真希)が通りかかる。
 氷柱は黒崎が逮捕されるのではないかと不安になり、黒崎の元へと急ぐのだが。

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医龍 カルテ9

2006年06月09日 | 職業ドラマ
 今回の物語の流れはこう。

1.敵・霧島軍司(北村一輝)登場。
   野口教授(岸部一徳)と手を結んだ最強タッグ。
   チームドラゴンの解散を画策。
2.加藤晶(稲森いずみ)の自己犠牲。
   第2回バチスタ手術。チームドラゴンの素晴らしさを実感した晶。
   彼女は積み上げてきた論文データと引き換えにチームの存続を野口に頼む。
3.チームドラゴンの団結。
   晶の自己犠牲。
   それに対して彼女を引き詰める仲間たち。
   チームを作ったのは晶。彼女なしではチームドラゴンではないのだ。
   手を重ね合う仲間たち。
4.鬼頭笙子(夏木マリ)登場。
   朝田龍太郎(坂口憲二)の要請もあり、教授戦に晶を推薦する鬼頭。
   医局全員の投票制という改革案も提出。
5.3人目のバチスタ手術患者登場。
   「完全内臓逆位」「単一冠動脈」「生後9か月」という困難な患者。
   実は朝田に挫折感を味合わせるため、霧島が画策して連れてきた患者。 
   患者である赤ん坊は病院をたらい回しにされ、朝田の所にやってきたのだ。

 この物語の流れを少し客観的に見てみるとこうなる。

1.敵ボス登場
2.仲間の自己犠牲
3.団結する主人公たち(反撃1)
4.主人公たちを助ける第3者登場(反撃2)
5.新たなる敵

 題材は病院を扱っていても、物語の流れは「キン肉マン」や「ドラゴンボール」だ。
 古今東西の物語はこうした基本構造によって作られている。
 この骨組みにどんな肉付けをするかで、物語の個性が出て来る。
 今後は物語の基本構造についても考察していきたい。

★研究ポイント
 物語の作り方:物語の基本構造

★キャラクター研究:鬼頭笙子
 物語のジョーカー的役割。
 主人公たちの敵にもなれば味方にもなる。
 もっとも彼女の行動理由は一貫しているのだが。
 すなわち、朝田を自分のERに連れてくる。
 ERで朝田が携わった症例をもとに論文を書く。
 この論文をもとにERの教授としてトップを目指す。
 老教授たちに対する反骨意識も。
 彼女は言う。
「本当の改革がどういうものかジジイどもに見せてやっただけ」
 またプライドも。
「あたしは、ほしいものは自分でとる。おしつけがましいのは嫌いなの」

★名セリフ
 朝田、病院をたらい回しにされた母親に
「病院なんて信じなくていい。ただ本物の医者は信じて欲しい」

 論文のためにバチスタ手術をしなくてもいい患者にも手術をしてきた霧島。
 そんな霧島を教授にしていいのかと問う晶に野口教授は
「君は信念が強すぎる。組織のトップとしてはとても危険だ。信念で舵を取る船頭は船をしずめるんだよ」

 霧島が手術困難な赤ん坊を連れてきた理由
「朝田にとって一番の屈辱は目の前で患者が死ぬ事だ。自分が何もできずに。さすがの朝田もあの赤ん坊にはなすすべがないだろ」
 ※そんな理由で?と視聴者に思わせ、しかも霧島の幼児性を感じさせるせりふ。

 母親の訴え
「このままほっといたら隆は助かりません。たらいまわしにされて、このまま死んでいくんじゃあまりに可哀想で。時々ジーっと見つめるんです。『僕何の為に生まれてきたの』って。お願いします。ほんの1%でも確立があるんなら、手術してやってください」
 ※赤ん坊が母親を見つめている情景が浮かんでくる。情景セリフ。

★追記
 この作品の面白さの理由に「視聴者を裏切ってくれること」がある。
 鬼頭は朝田の要請をいったん断る。
 伊集院登(小池徹平)は霧島の軍門に下る。(果たして本当にそうなのか?)
 朝田は赤ん坊の手術はできないと言う。(その真意は?)
 
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博士の愛した数式

2006年06月08日 | 邦画
 博士(寺尾聰)は数字によって、人を理解する数学者。
 やって来た家政婦
 彼女(深津絵里)の靴のサイズは24。
「実に潔い数字だ」
 家政婦の誕生日は2月20日。
 昔、博士が学長賞を取って記念にもらった時計の番号は284。
 220と284は友愛数。
 だから博士と家政婦は滅多にないめぐり会わせで出会った存在。

 そんな博士は80分で記憶をなくしてしまう。
 博士は、家政婦に一本の線を書かせる。
 端と端のある1本の直線。
 しかし、博士は直線は無限に続いているものだと説明する。
 これは博士と家政婦、そして家政婦の息子ルート(齋藤隆成)の関係を示す象徴的な話。
 端と端のある1本の直線は80分で消えてしまう博士の記憶。
 しかし、無限に続く直線は博士と家政婦、息子ルートの物語。
 博士の記憶は80分でなくなってしまうが、彼らの関係は、無限に伸びる直線のように永遠なのだ。
 現に大人になったルート(吉岡秀隆)は数学の教師になり、生徒たちに博士との物語を語っている。
 ルートの中には博士の記憶が永遠にあるのだ。

 そして博士の義姉・未亡人(浅丘ルリ子)との関係。 
 博士は、オイラーの公式……e(πi)=-1 の数式を使って自分の意思を伝える。
  eとは博士のこと。
 (πi)とは家政婦とルートのこと。
  ー1は母屋で3人の楽しそうな暮らしを眺める未亡人のこと。
 
 博士はe(πi)=-1をこう書き換える。
  e(πi)+1=0

 博士はこの4人の生活を望んでいる。
 その数式の答えがゼロで記憶として失われてしまうものかもしれないが、+1で共に人生の時間を歩んでいきたいとメッセージする。

 数字で人を表し、数式で人間関係を表す。
 それが博士という今まで見たこともない人物を作り出し、見たこともない静謐な物語を作った。
 大きな事件が起きるわけではないが、数字・数式が盛り込まれることで淡々とした日常が違ったものに見えてきた。
 そして、ここで描かれた人たちは穏やかで皆やさしい。

★研究ポイント
 ドラマの作り方:日常をどう切り取るか。数式で切り取るという画期的な方法。

★名セリフ
 数字に託されたメッセージ(公式HPより)
1.完全数
 24の約数(1、2、3、4、6、12)を全部足すと24。
 デカルトは完全な人間が滅多にいないように完全な数もまた稀だと言っている。この数千年の間に見つかった完全数は30個にも満たないんだよ。
 ※完全な人間などいないことを知る。
  そうすれば他人に対してやさしくなれるし、自分に対して傲慢にならない。

2.素数
 素数の素は素直の素。
 何も加えない本来の自分という意味。つまり1と自分自身以外では割り切れない数字のこと。
 例えば、2、3、5、7、11、13、17、19……。
 この数字は夜空に輝く星のように無限に存在します。
 ※世の中のしがらみを脱ぎ捨てていった時に現れる自分。素直な自分。それが孤高の他に代わることができない自分。

3.友愛数
 284の約数の和は220。
 220の約数の和は284。
 神の計らいを受けた絆で結ばれた数字なんだ。美しいと思わないかい?君の誕生日と僕の手首に刻まれた文字が、これほど見事なチェーンで繋がり合っているなんて。

4.ルート
 どんな数字でも自分の中にかくまってやる寛大な記号。
 ※ルートはどんな人間でも受け入れるやさしい少年だ。

★追記
 小泉堯史監督は原作・小川洋子のさんの小説をこう表現している。(公式HPより)
「小川洋子さんの原作には私の好きな言葉が数多く織り込まれています。
 潔い、孤高、静けさ、調和、清明、魂、慈しむ、敬う、安心、直感、おかげ、素直さ、毅然、無事 等々。
 これら書き言葉のひとつひとつが、美しい響きを持っています。
 それぞれの言葉が、歴史の重み、深さを秘めているからでしょう。
 言葉は過去から、今に、直接働きかけ、記憶を呼び起こし、イマジネーションを豊にしてくれます」

 ※言葉の力。
  潔い、孤高、静けさ、調和、清明、魂、慈しむ、敬う、安心、直感、おかげ、素直さ、毅然、無事……。
  これらの言葉から浮かぶイマジネーションは確かに美しく心を凛とさせる。
  ちょうど、この作品を見た後のように。   
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アテンションプリーズ  「告白…大空の初デート」

2006年06月07日 | 職業ドラマ
 今回は物語を作る上で参考になる点がいっぱい。

1.タメにタメて泣かせる。

 ひとりOJTに進めなくて空元気の洋子(上戸彩)。
 弥生(相武紗季)&関山ちゃん(大塚ちひろ)にお祝いしようぜなんて言って。
 ウソもついた。
 翔太(錦戸亮)には「3人とも合格した」と言ってしまう。
 理由は2,3日もすれば自分もOJTに進めると思っているから。
 しかし、三神教官(真矢みき)の課した訓練はお辞儀など基本的なもの。
 これでOJTに進めるとは思えない。
 OJTに進むために何をすべきかを書いたレポートも突き返されるし。
 そして三神が自分を落としたことを知ってショックの洋子。
 ・味わった挫折。
 ・仲間に対する恥ずかしさ。
 ・見えない出口。
 これらのことが積もり積もってついに洋子は洗面所で泣いてしまう。
 そして翔太には本音をぶつける。
「おまえに何がわかんだよ!どいつもこいつも顔を合わせりゃ頑張れ頑張れって。人生の中でMAX頑張ってんだよ!これ以上どうしろっていうんだよ!もう無理なんだよ」

 タメにタメて爆発されるから観ている者に伝わる。
 その前の気持ちを丹念に描いているから気持ちが伝わる見事な構成。

2.主人公は人のやれないことをする。

 朝、やって来る三神教官。
 昨日、欠席した洋子のことが気になっている。
 見るとデスクの上に洋子のレポート。
 レポートにはこう書かれている。
 OJTに進むために何をすべきか?
 1.世界一のキャビンアテンダントを目指す。
 2.現場に出る。
 3.適性を身につける。
 4.自分のできる事をやってみる。
 5.何があっても飛ぶことを諦めない。
 先日は申し訳ありませんでした。

 未熟だが、洋子の素直さが現れているレポート。
 それだけではなく洋子は実行に移した。
 「自分にできる事をやってみる」
 洋子はエレベーターの前に立つと、出勤してくる社員たちに「おはようございます」とお辞儀をした。
 お辞儀の千本ノック。
 からかう人、穏やかにあいさつを返してくれる人。
 様々だが、洋子の想いは揺るがない。
 人がやれないことをする。まさに主人公の面目躍如だ。

3.メッセージ+アルファ
 三神教官が洋子に伝えたかったことはこうだった。
「美咲さん、あなたが一流のCAになるためには誰より大変。あのレポートに書いた事嘘じゃないわね?」
「あなたにはちゃんと理解してほしかった。仕事の厳しさも怖さもちゃんとわかってから進んで欲しかった」
「空に対する誰にも負けない愛情、覚悟、技量を身につけてほしい」
 仕事の厳しさと怖さ。
 仕事への覚悟。
 CAになるために必死になったこと、悩んだこと、思ったこと。
 これらは洋子の体の中に強く染み込んだことだろう。
 洋子はそれらのことをCAになっても折に触れて思い出すだろう。
 洋子の中に一本筋が入った。

 そしてここで特筆すべきは、このメッセージに加えて、洋子と三神の師弟愛が描かれていることである。
 「ギャルサー」でも毎回メッセージが出されるが、シンノスケと事件の当事者との間にはドラマはない。
 シンノスケは事件の当事者について悩まないからだ。(シンノスケは「なぜだ?」「わからない」というリアクションをする)
 一方、三神は洋子を落とすにあたって随分迷った。このまま潰れてしまうのではないかとも思った。
 この迷いがあって心を鬼にしたから師弟愛が生まれた。
 メッセージ+アルファはドラマをさらに盛り上げる。

★研究ポイント
 物語の作り方
  1.タメにタメて泣かせる。
  2.主人公は人のやれないことをする。
  3.メッセージ+アルファ。

★キャラクター研究:若村弥生
 翔太との待望の動物園デート。
 目一杯のおしゃれをして、かわいいお弁当を作って。
 実にけなげ。
 でも翔太は来ない。
 早起きしてお弁当を作り、おしゃれした彼女の気持ちを考えると実に泣ける。
 関山ちゃんには空元気。
 それがわかった関山ちゃんは、作ってきたお弁当を全部食べてあげる。
 いい子だ。
 でもボケだから、パンダが整備の人の制服に似ていると地雷を踏んでしまうが。

★名セリフ
 迷う三神に桜田キャプテンは挫折した後輩と比べて言う。
「確かに彼女は似てますが、ひとつだけ違う所がありますよ。美咲洋子の教官があなただってこと。せっかく教官と生徒という立場で出会えたのだから教えてあげられることは全部おしえてあげればいい」

 洋子に負けてほしくないという想い。
 翔太、怒って
「何で黙ってんだよ!おい!訓練さぼってどうするつもりなんだよ!クビになりたいのかよ。お前何やってんだよ!」

★名シーン
 ベタだが。
 洋子を飛行機に乗せる翔太。
「ごめんな。お前に何がわかるんだって。翔太もパイロット諦めたんだよな」
 と謝る洋子。
 挫折した翔太には洋子の痛みがわかっている。
 洋子に夢を諦めてほしくないとも。
 翔太は言う。
「なあ、飛行機が何で飛ぶのか知ってる?」
 揚力、推力などと説明する洋子。
 翔太はこう言う。
「無理って思わない人間がいたからだよ。こんなでっかい鉄のかたまりを空に飛ばそうと本気で考えてた人間がいるからだよ。無理なんて言うなよ」

★追記
 お祝いでカラオケに行く洋子たち。
 曲は3人3様。
 歌い方も3人3様。
 ロックな洋子は何と演歌。
 カラオケは人の違った一面を見せる。
コメント (4)
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あいのり 6/5

2006年06月06日 | バラエティ・報道
 人が人を好きになる理由というのは、第3者にはわかりづらいものだ。
 和泉→田上くん。
 本人も「(田上くんの)いいところを上れば5つぐらいしかない」と言っていたが、人生経験も違う和泉が田上くんを好きになる理由がわからない。
 和泉の理想は「包容力のある年上の男性」。
 体の相性みたいなこともアウトローと話していた。
 しかし、恋の情熱は理想とは正反対の男性を選ばせてしまう。
 実に不思議。
 恋は盲目。恋は勘違い?
 アウトローがそうであったように、あいのりの旅は今まで背負ってきた殻(価値観)をすべて脱ぎ捨ててしまう旅。
 旅をしてきた和泉が年上の男性という「自分の理想」を捨ててしまうこともあり得るのだけれど。

 そんな和泉だが、今回はスーザンが名アシスト。
 タカノとおまみの戦いを間違っていると思っていた和泉の背中を「パッションだ!」と言って押した。
 ひさよんと田上くんの間に割って入って自己嫌悪の和泉。
「こんなの嫌な自分だ」と言う。
 しかし、そんな和泉にスーザンは「新しい自分」だと言う。

 今まで信じてきた自分など、環境や人間関係でどんどん変わっていく。
 実に奥が深い。
 哲学だ。

 一方、ひさよん。
 和泉の告白を知って、自分は告白するほど(田上くんのことを)好きではないと言いながら、泣き出してしまう。
 この矛盾。
 今、自分が告白しても和泉に負けてしまうと思っているのかな?
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GOAL!

2006年06月05日 | 洋画
  1
 スポーツ映画は大好きだ。
 この作品「GOAL!」は数あるスポーツ映画の中でも異彩を放つ。
 主人公が強くなるために努力する過程をひたむきに描いているからだ。
 主人公が強くなろうと努力する理由・動機はいろいろある。
 「ロッキー」は恋人のため家族のため。
 「炎のランナー」は神のため、差別を克服するため。
 しかし、この「GAOL!」の主人公サンティアゴ・ムネス(クノ・ベッカー)は違う。

 1.プロへの憧れ(好きなサッカーでメシが食いたい)。
 2.自分の才能を信じ、開花させたい。

 このふたつを動機にして、主人公は試練と戦っていく。
 いわば自分との戦いのみ。
 この戦いはいつでも撤退は可能だ。
 自分に才能がなかったと適当に折り合いをつけて、アメリカに戻ればいい。
 取り巻く人たちも彼を応援はしているが、たとえ彼が挫折しても受け入れる気持ちを持っている。
「がんばったわね」「やはり才能がなかったんだ」「これからは地道に働け」と言われるくらいである。
 実にリアル。サンティアゴは我々と同じ等身大の人間だ。
 だから彼が自分に負けずに栄冠を勝ち取った時、観客は拍手を送る。
 同時に「誰かのために、誰かとの幸せのために戦うヒーロー」は色褪せて古くなってしまった。
 スポーツヒーローも自分との戦いをテーマにする時代となった。
 「GOAL!」はその点で新しい。

  2
 サンティアゴの戦いは自分との戦いだ。
 その戦いを支えてくれる人たちがいる。
 サンティアゴを信じている人たちだ。

 まずは祖母のメルセデス(ミリアム・コロン)。
 彼女は孫たちが夢を実現することに助力する。
 彼女はイギリス行きの切符をサンティアゴに渡す。
 メルセデスはサンティアゴが成功することを信じているのだ。
 ふたりめはグレン・フォイ(スティーブン・ディレイン)。
 彼はサンティアゴをスカウトし、チームのトライアルを受けるように言う。
 ぬかるみ、時差などでサンティアゴはトライアルに失敗するが、それでも彼の才能を信じてチームに食い下がってくれる。

 一方、サンティアゴを信じない人もいる。
 それはサンティアゴの父親ヘルマン(トニー・プラマー)だ。
 ヘルマンは地道にコツコツと働くことを信じている男。
 夢を見てがんばることなど浮ついたことだと思っている。
 おそらくアメリカにやって来た頃の彼は大きな夢を抱いていたのだろう。
 それが無惨に裏切られた。アメリカにあったのは貧乏な生活。
 だからサンティアゴがイングランドに行くことに反対する。

 また、サンティアゴの恋人、クラブチームの看護士ロズ・ハーミング(アンナ・フリエル)の立場は微妙だ。
 もちろん恋人にサッカー選手として活躍してほしいとは思っているが、成功して自分が捨てられることを怖れている。
 非常に微妙な立場だ。
 
 物語はこれらの人とサンティアゴとの関わりで進行していく。
 まず信じる人に対して、サンティアゴはその信頼に応えたいと頑張る。
 力が足りずチームをクビになった時は「信じていた人たちを裏切ってしまった」とサンティアゴは悩む。
 一方、信じていない父親に対しては、反発半分・哀しさ半分。
 父親を見返したくて、父親に喜んでもらいたくて頑張る。
 そして恋人に対しては、その応援と彼女を悲しませる裏切り行為(浮気)はしたくないと思う。

 これが主人公を取り巻く人間関係。
 これらの人に応えようとしながら、サンティアゴは自分を信じ強くなっていく。
 これが物語の基本モチーフだ。

  3
 この作品は夢に向かって頑張っている人にはお勧めの映画。
 夢の実現とは他ならぬ自分との戦いなのだと教えてくれる。

 エイドリアンがいなければロッキーにはなれない。
 神への信仰や差別がなければ「炎のランナー」のリデルたちにはなれない。
 だが、サンティアゴは自分たちと同じ何も持っていない人間。何も抱えていない人間。
 だから勇気づけられる。

 ラスト、サンティアゴはメンタルがこんなに強くなる。
 父親が心臓マヒで死んだ時、彼はアメリカに帰らずこう監督に言う。
「このままアメリカに帰ったら、父親の死を理由に自分を甘やかすことになる」
 試合で結果を残せなかったら、弱い自分は父親の死をその言い訳にしてしまうと言うのだ。
 彼は言い訳できない状況に自分を追い込んだ。
 また、こうも言う。
「監督にダメだと言われても、何度でも食い下がる」

 そんな強くなったサンティアゴに歓喜の時はすぐにやって来た。
 チームはイングランドのプレミアリーグで優勝。
 名アシストでチームに1点を与え、決勝点を自分のシュートで生み出した。
 そしてこんなことを聞く。
 亡くなった父親が彼の前の試合をテレビで見て、喜んでいたというのだ。
 嬉しいサンティアゴ。
 父親に認められることが彼の目標のひとつでもあったから、それは何よりも嬉しいことだったろう。

★研究ポイント
 物語の作り方
 自分を信じるか否か。その孤独な戦い。
 孤独な戦いに勝利したものだけが得られる栄光。



コメント (11)
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ギャルサー 第8話

2006年06月04日 | その他ドラマ
 どこにも居場所がないサキ(戸田恵梨香)。

 リーダー代理が務められずつらくて、エンゼルハートから逃げた。
 高校。教頭からは問題児、ゴミ扱い。やはり居場所がない。
 こうなってしまった理由をサキは考える。
 要領が悪い。
 リカ(岩佐真悠子)の言うとおりテキトーにあしらって生きていけば波風立たずにやっていけるのに自分にはできない。
 真っ正面から感情的にぶつかってしまう性格。
 感情に任せて集会所はぶっ壊すし、「ちょちょっと謝って」(エンゼルハートに)戻ってくることができない。
 また、ぶつかって問題が解決するのならいいが、いつも跳ね返されてしまう。
 前回の野原の花を摘んで入院しているシオリ(松山まみ)の所にお見舞いに行くが、仲間の自分への悪口を聞いてスゴスゴと帰る彼女には泣けた。  
 サキは要領が悪くて無器用。
 かわすことが出来なくてぶつかって痛い想いをして挫折。
 そうやってどんどん居場所を狭めてきた。
 そしてついに居場所をなくした。

 そんなサキにさらなる試練が。
 アリゾナの秘薬ヨミガエリ。
 これを食べてしまったサキの命は残り24時間。
 認められることもなくてこのまま惨めに死んでいく。
 こんな悲惨なことがあるかと自暴自棄になる。
 シンノスケ(藤木直人)はサキを土の中に埋める。 
「お前自分を何も出来ないゴミだと言った。お前にこの世での役目はない。土に帰れ」
 自分は死ぬ。
 自分が本当にやりたいことをやって死にたいと思うサキ。
 リカの想いも重なって、サキはパラパラ4の会場へ行く決心をする。
 そんなサキにシンノスケは言う。
「心のままに生きること。とても尊い。今を生きること、とても気持ちがいい」
 そしてパラパラ4の本番。
 踊りはズレてダメダメだったが満足。  
「もう、思い残すことはありません」と言うサキに仲間たちは変な顔。
 そこへ現れるシンノスケ。
「ジャスト・ア・ジョーク!」
 ヨミガエリはただの栄養剤だった。
「はあ?」
 怒るサキにウンチクをたれるシンノスケ。
「何も選べず、自分をゴミだと言っていたおまえは死んだ。そして今、おまえは生まれ変わった。人生のタイムリミット感じて選ぶことができた。人生は今日の積み重ね。いつも今日一日だと思えば大事なもの選ぶことができる」
 そしてジェロ~ニモ~(古田新太)のひさびさのブーメラントーク。
「人生というのはブーメランに似ている。受けとめる勇気のないまま投げてしまえば永遠にその楽しさを得ることはできない。また、調子こいてふたついっぺんに投げちゃえば、ふたついっぺんに戻ってきてちょっと危ない。ちょっと慌てる」

 今回もどうせサキは死なないだろう。オチがあるに決まっていると思ってみていたが、居場所のないサキに感情移入できたため、素直に入れた。
 勘違いオチや騙されオチは物語手法としてはNGだと思っていたが、人物の心情が的確に描かれていればOKだと思った。
 あとはメッセージ。
「人には生まれてきた意味がある。ゴミなどはない」
「一瞬一瞬を選んで必死に生きよ」
 というメッセージは真っ正面から語られると気恥ずかしいが、この作品のようなテイストで描かれると気持ちいい。

★研究ポイント
 ドラマの作り方:勘違いオチや騙されオチ

★キャラクター研究:大村利香子
 学校では生徒会長、渋谷ではギャル。
「全然イメージの違うことを難なくこなすってとこがなんてーの?いい感じ」な少女。サキと正反対の器用なキャラ。
 器用で何でもできてしまう分、真剣に悩んだり全力で物事にぶつかることもない。
 また、本当の自分が何であるかもわからずにいる。
 サキともこんな会話を。
「リカさんにはわかんないスよ。できない人間の気持ちなんて」
「うん、わかんない」
「リカさんにとってエンゼルハートって片手間だったんですね」
「やりたいこともやらないで。ちょちょっと楽な方選んでるだけじゃないですか?」
 また、シンノスケにはこう聞かれる。
「お前にはたくさんの時間がある。でも、もし今日しかなかったらお前は何を選ぶ?」

★名セリフ
  1
 シンノスケと教頭の会話
「アリゾナにはゴミがない。生まれてくるものはどんな小さなものにも役目があり、役目を果たすと土に帰っていく。ここにはなぜゴミが溢れている?」
「それはそういう生活だからよ。要らないものをどんどん捨てる。そうしないと生きていけないの」
「なぜ要らないものだと決められる」
  2
サキ「どうせあたしはゴミなんだよ!何やったって意味ねーんだよ!」
  3
「自分の人生に後悔はないか?」
「後悔だらけだよ。つーかあたしは16だよ。これからやりたいこと山ほどあるんだよ」
「じゃあ、それをやれ」
  4
 またブーメランかとシンノスケに言われてジェロ~ニモ~。
「じゃあお前考えてみろよ、たとえ話!!来週までに4つ。チクショウー!」

★ディティル
 サキたちの通っている学校は「南都下高校」。

 サキの名前は広瀬サキ子。
 リカの名前は大村利香子。
 ちなみにレミの名前は小野妹子のようだ。
コメント (3)
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