平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

クロサギ 第8話

2006年06月03日 | 職業ドラマ
 黒崎(山下智久)と吉川氷柱(堀北真希)の間がまた一歩進展。

 黒崎は白石(加藤浩次)に関わることで自分を見出した。
 欠陥住宅で家族を殺された復讐をするために詐欺を始めた白石。
 利益優先の建設会社。その腐った企業に家族を殺された。
 その企業から5億を騙し取り、叩くネタを手に入れた白石。
 そんな白石に黒崎は問う。
黒崎「て言うか、なんで白詐欺になろうと思ったの?」
白石「なんでとかどうしてとかそんな答えが出るようならここにいないよ。他人が納得できる答えなんてねぇよ。オマエも一緒だろう?」
 心に渦巻く憎悪。これが白石を復讐に駆り立てているのだ。
 それは黒崎も同じ。
 黒崎は白石に自分を見出した。

 氷柱は星谷澄子(大塚寧々)に出会って、黒崎をさらに理解した。
 澄子は白石の家族を殺した建物を設計した男の娘。
 そして仲のよかった同級生。理系・文系のノートを貸し合うような。
 下請けの設計とは言え、自分の父親の作った建物が白石の家族を殺したことは間違いない。
 澄子はそれを償うために手抜き工事を行ってきた建設会社の内部資料を集めて来た。
 そんな澄子の白石に対するスタンスはこうだ。
「出来ればあたしも彼を止めたいって思ったけど。復讐に人生をかけるってすごいパワーがいるんでしょうね。誰かと心がふれ合えば弱くなる。復讐なんて続けられなくなる。それほどの覚悟をもっている彼を止めるのはきっと無理。だからいつか彼が疲れ果てた時、私がそばに居てあげられたらいいなってそう思った」
 復讐を続けるパワー。
 誰かと心がふれあえば弱くなる。
 黒崎の中にある葛藤を理解する氷柱。
 澄子の白石に対する距離の取り方、愛し方にも共感する。
 澄子はシンデレラを例に出してさらに続ける。
「王子様とシンデレラ。2人の人生はむしろ物語が終わってから始まる。何か事件が起きた時、たとえば犯人が捕まったら世間は終わった気になる。でも、被害者と関係者は永遠に事件の中を生きるのよ。黒崎君もそうなんじゃない?」
 黒崎が詐欺師をやめること(=黒崎のけじめ)は黒崎本人にしか出来ないというのだ。

 そして物語はラスト。

 黒崎と氷柱はアパートの窓越しに話をする。
「おまえ、やっぱ引越さなくていいよ。俺に干渉しないならね」
 と引っ越し代を稼ぐために無理をしている氷柱をいたわる黒崎。
 だが、次に彼は自分の想いと変わらぬ決意を告げる。
「ねぇ、想像して。……家族が目の前で殺されてます。それを殺してるのも家族です。自分では何もできない。おまえには想像できっか?被害者が自分でケリつけるまで事件は終わらないんだよ。……もしおまえが俺のこと思ってるんなら、俺の事好きになるのはやめてくれ」
 氷柱も澄子との話でけじめをつけるのは黒崎自身であることを理解したからこう答える。
「わかった……」
 そして自分の想いを告げる。
「ただ、これだけは憶えておいて。あなたは一人じゃない。もしあなたがどこかで逮捕されても、もしあなたが遠いどこかで死ぬことがあっても、あなたは一人じゃないから」

 第3者(白石と澄子)を通して、自分の想いと生き方を確認し合ったふたり。
 さてラストはどうなる?

★研究ポイント
 物語の作り方:自分たちと同じ境遇の第3者を関わらせて物語を進行させる。相互理解をさせる。

★キャラクター研究:吉川氷柱
 正義感溢れる氷柱は幸せも信じている。
 彼女は黒崎に言う。
「法律は人を守るためにあるんじゃないよ。幸せに生きていく手助けをしてくれるだけ。あなたは逃げてるの。人は幸せになろうとしなきゃいけないの。戦おうとするんじゃなくて逃げてる。憎む方が簡単だから。どんなにつらくても幸せになろうとしなきゃいけないんだよ」
 氷柱は幸せになるために戦っている。
 シンデレラと同じように人は誰もが幸せになれると信じている。
 しかし、厳しい現実を知ってしまった黒崎には甘いとしか思えない。

 氷柱はまだまだ未熟で若い。
 純粋。
 しかし強い。
 彼女も父親のことで結構つらい人生を歩んできたはず。貧乏だし。
 しかしそんな現実に押し潰されることなく、幸せを信じて戦う心を持ち続けている。
 とても強い。

 一方、ゆかり(市川由衣)とのことはつらいだろう。
 氷柱は人は誰もが善良で、自分に対して親切だと思っている。
氷柱「ちゃんと話そうよ」
ゆかり「アタシって0か100なの。だから何言われても無理」
 拒絶。
 引っ越しをするという氷柱にゆかり。
「よかった。これで黒崎さんもホッとするね。正論ばっかり振りかざす人がいたら迷惑だもん」
 皮肉。
「氷柱が先にあたしを裏切ったんですよ」
 怒り。
 だが、こんな現実の強風を受けながらも負けないのが氷柱だろう。

★追記
 恋愛ドラマの「クロサギ」。詐欺の方はイマイチ。
 華麗な詐欺の駆け引きを見たい方には物足りないだろう。

コメント (2)
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医龍 カルテ8

2006年06月02日 | 職業ドラマ
 荒瀬門次(阿部サダヲ)のキャラクターから物語が作られているから、「医龍」は面白い。

 麻酔論文のためにたくさんの人を殺してきた荒瀬。
 そんな彼をあたたかく見つめてきた山口香(奥菜恵)。
 彼女のいるバアに来ると飲んだくれて寝てしまうだけだが、荒瀬は香に居場所を感じている。
 だが、彼は彼女を愛せないと思っているのだろう。
 なぜなら荒瀬は罪を背負った医者だから。
 香との軽口と彼女の作ってくれるだし巻きたまごが荒瀬の救いだ。

 こんな荒瀬のキャラクターを踏まえて、ドラマは展開する。
 香が強盗に打たれて瀕死の重傷を負うのだ。

 そんな状況での荒瀬のリアクションと行動。
1.止血
 小石をベルトで止めて応急の止血をする。

2.心停止
 しかし、救急車の中で香は瀕死の状態。
 荒瀬は言う。
「今年は海行こうな。今年こそつき合ってもらうからな。ビキニも買ってやる!ホテルはスィートだよな。金なら腐るほどあるからよ!たまにはつき合ってやるよ!
いつもつき合ってくれてるもんな!俺のくだらねぇ話、いつも笑って聞いてくれてるもんな」
 そして心停止寸前。
 荒瀬にメッセージを伝えようとする香。
 伊集院登(小池徹平)はそのメッセージを聞いてあげるように言うが、荒瀬は本音を洩らす。
「おまえなら俺みたいな人をいっぱい殺してきた医者に最期を見取ってほしいか?俺にその資格がないのはおまえが一番良く知ってるだろ!ここから先はおまえみたいな綺麗な医者しか歩けないんだよ!」
 そして心停止。

3.手術
 病院に着くと朝田(坂口憲二)。
 あきらめてはいない。
「勝手に諦めるな!脳がやられるまで4分30秒ある!」
 脚の銃創の処置には鬼頭笙子(夏木マリ)。 
 荒瀬はまだ香に素直になれない。
 彼が背負っている罪はそれほど重いのだ。
 しかし、伊集院に背中を押される。
「もし僕に腕があったらあなたみたいな人に頭をさげません。気持ちだけで患者が救えるなら頼むもんですか」
 手術室に入る荒瀬。

4,手術成功
 朝田と荒瀬の完璧な連携。
「おまえじゃ朝田に釣り合わねぇ。お立ち台~!」
「俺が全身管理をする以上万に一つも間違いはない!その代わり必ず助けろ!」
「久しぶりに全力でやらせてもらえるって事か!」
 荒瀬が的確な全身管理をしてくれるおかげで朝田は執刀だけに集中出来る。
 手術は成功する。

5.認め合う男たち。
 朝田と荒瀬はすれ違い様に話す。
「俺について来れた麻酔医はおまえが始めてだ」
「俺について来れた外科医もおまえが始めてだ。バチスタが決まったら知らせろ。
ギャラは今回の手術代だ」
 ふたりは決して握手はしない。
 しかし一流の技術と患者に対する想いを持っているお互いを認め合っている。
 朝田は荒瀬の隠していた気持ちも理解しているようだ。
 真っ白で正義感溢れる伊集院に言う。
「あいつは責められる為に今でも悪党をやってる。自分の犯した罪は一生許されない事をあいつは知ってる。だからあいつは他の道を選ばなかった。だけどおまえは真っ白なままでいろ。今のおまえに責められる事をあいつは望んでる」

 今回の話はドラマ作りのお手本。

 起……荒瀬のキャラクターとこれから事件に関わる人物(かおり)の関係を描く。
  ※これをドラマの1/3の時間を使ってじっくり描いた。
 承1…事件発生(コンビニ前)。止血。
 承2…荒瀬の葛藤(救急車)。自分は香にふさわしくない。
 承3…荒瀬の葛藤(手術室前)。  〃
  ※なかなか動かない荒瀬に視聴者もハラハラドキドキ!
 転……荒瀬の手術参加。
 結……認め合う朝田と荒瀬。

★研究ポイント
 構成の仕方:起承転結の実際。
 この起承転結のメインの流れに鬼頭、伊集院らを絡ませ、今後の伏線(教授戦の野口(岸部一徳)の思惑)を置いている。
 人の死が関わるドラマだからサスペンスもある。(小石を使った応急処置シーン、手術シーン)。
 山と谷もある。 
 応急処置~心停止~手術の流れは、山~谷~山の起伏だ。だからワクワクする。

★キャラクター研究:山口香
 荒瀬をあたたかく見つめている女性。
 母親のようにダメなところもひっくるめて。
 ただし、ベタベタした甘さはない。
 突き放すことが心に傷を負った彼への正しい接し方だとわかっている。
 香は決して荒瀬のことを「先生」と呼ばない。
 人を殺した荒瀬にとってそう言われることが一番嫌なことを知っているから。
 彼女と荒瀬を結びつけているのは、香の作るだし巻きたまご。
 荒瀬のからだを気遣って作っただし巻きたまご。
 香の想いの象徴。荒瀬はそれを「まずい」と言って受け入れた。
 この大人の距離感。
 「クロサギ」の氷柱と比べてみると面白い。

★名シーン
 鬼頭登場。
 脚の銃創手術を誰が行うか?
 朝田は言う。
「いるだろ、ひとり。ERの本場アメリカ帰りのスペシャリストが」
 スローモーションで廊下を歩いてくる鬼頭。
 いよっ!千両役者!
 かっこいい。
 そして手術。
 鬼頭は言う。
「あたしにつりあう執刀医かどうか拝見させてもらうわ」
 かっこよすぎ!
※朝田といい鬼頭といい、このドラマの医者はどうしてスローモーションで歩いてくるのだろう。それに、どうして一言多いんだろう。
コメント (4)
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プリマダム 第8回

2006年06月01日 | ホームドラマ
 今回はこのシーン。
 佳奈(黒木瞳)と嵐子(中森明菜)の会話。
 嵐子の前から理由もなくいなくなった本当の理由を佳奈は話す。
「ごめんね。あたし嵐子の事がうらやましかったの。あの時バレエをやめなかったら、あたしだって嵐子みたいになれたかもしれないと思ったら悔しくて」
 そして次がいい。
「あ~、やっと言えた!子供の頃からず~っとここに栓してたの。やっと言った~」
 誰もが自分の心のドロドロした部分は見せたくないもの。
 佳奈さんのようないい人なら尚更のこと。
 しかし、佳奈はこの本音を隠していたことにずっと悩んでいた。
 それは自分を偽っていたことから。
 嵐子に対してウソをつき、誠実でなかったことだから。

 佳奈と嵐子の友情の復活。
 この点が第8回で脚本家が一番描きたかったことだろう。

 しかし、それ以外はダメダメ。つまらない。
 
1.ドラマが進行していない。
 佳奈と嵐子の友情が深まったぐらいが今回の進行した点だが、他は全然変わっていない。
 バレエ仲間は相変わらず。
 夏芽(高岡早紀)と店長(加藤雅也)は少し近くなったぐらいか?
 遥生(中島裕翔)はロイヤルバレエに行くのをやめると言い出すが、結局元に戻り行く決心を。つまり何も変わっていない。
 だから嵐子が倒れる後半2分以外は面白くない。

 登場人物たちも変わっていない。
 佳奈は相変わらずやさしくていい人。
 そういう主人公だから仕方がないが、もっと感情に起伏があっても。
 万田高太郎(古田新太)の反応は同じ。畠山(内藤剛志)に対して直情的に怒るだけ。遥生を銭湯に連れて行くというワンパターンの行動。
 今回一番変わらなくてはならない嵐子も相変わらず。
 佳奈といっしょに畠山の所に乗り込む嵐子。
「遥生のためにジゼルを踊る」と言い出すも、簡単に言い負かされてしまう。
 そして粘ることなくすぐに帰ろうと言い出す。
 庶民の生活を知って何が変わったのか?
 あるいはここは嵐子最大の見せ場ではないかと思う。

2.エピソードが陳腐。
 ドラマが進行していなくても描かれる日常が面白ければいいのだが、それもない。
 レッスンビデオを上から消してしまった。
 もう一本のビデオは高太郎が持っていた。
 嵐子にレッスンを頼みに来るバレエ仲間(お土産付)だが、嵐子に何の葛藤もなくその場で断られる。
 嵐子を見つけてマスコミが殺到するが、嵐子が逃げて終わり。
 スーパーのタイムセール。やっと卵を取れて喜ぶ嵐子。
 強風で揺れる洗濯物をうまく取れない嵐子、そして佳奈に「助けて」という電話。
 あまりにも日常描写が面白くないので、嵐子の心臓の病気はどうなったのかがすごく気になってしまう。

3.解決方法に知恵がない。大事なシーンを省いている。
 今回の最大の見せ場は倉橋バレエ団に乗り込むシーン。
 遥生をロイヤルバレエ団に行かせるための交渉。
 乗り込むまでの描写が下手だから唐突な感じが否めないが、もっと悪いのは解決方法。
 「佳奈の土下座」
 もう少し知恵を出してほしい。
 作品ではその後の畠山のリアクションも省略されて、高太郎が「おまえのお母さんは最高だ」と遥生に告げに行くシーンに飛ぶが、ここは畠山がどう了承したのかを描くべき。
 遥生がロイヤルバレエ団に行かせるのを援助する代わりに何か条件を出すとか、畠山の隠された本音をにおわせるとか。
 また、省略ということでは遥生の気持ちの描写が少ない。
 もっと悩む遥生にスポットライトを当ててもよかった。
 一番大事なドラマの部分を省いている。
 極端な話、今回はバレエ仲間のシーンはなくて、佳奈、嵐子、遥生の3人だけでドラマを構成してもよかったのではないか?
 学校などのロケをする予算はないような感じだが。
コメント (2)
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