
ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世と、マリインスキー・バレエ団の伝説のプリマ、
マチルダとの許されない恋を描く、実話を基にした作品。
1800年代末のサンクトペテルブルク。
皇位継承者であるニコライ2世(ラース・アイディンガー)は、
世界的に有名なバレリーナのマチルダ(ミハリーナ・オルシャンスカ)をひと目見て、恋に落ちる。
二人の恋は燃え上がるが、ニコライ2世には皇帝即位やドイツの王女アリックスとの政略結婚が予定されていた。
しかしマチルダもしたたかな女性で、簡単には引き下がらない。
婚約者アリックス、マチルダに恋慕する士官や貴族たちの思惑が、そこに複雑に絡み合う。

何しろ映像が美しい。
北の都サンクトペテルブルクの豪壮なエカテリーナ宮殿、ここは去年行きましたが
世界中からの観光客が中にも外にもひしめき合っていました。
それを贅沢に借り切って撮影したという、豪華絢爛なシーンの数々。
ボリショイ劇場やマリインスキー劇場、19世紀仕様に再現された特別列車。
イコン画に埋め尽くされたロシア正教会での、戴冠式のシーンも圧巻です。
王侯貴族のきらびやかな衣装に要した生地は、実に17トンに及んだといいます。

ところが、それだけの舞台が用意されているのに
肝心のストーリーは、エロチックな不倫物語。
婚約者がいる皇太子と身分違いのバレリーナとの恋、というシンプルな話に
枝葉をつけすぎて、人間関係がゴチャゴチャになっている。
怪し気なドイツの医者や水責めや占いのシーンは、本当に必要だったのか?
もう少し整理した方が、滅びゆく帝政ロシアの悲哀を出せたのではないか?
したたかな不倫相手に惑わされてオロオロするばかりのニコライ二世は、
現代の何処かの国の、年上の女性との不倫によって美しい妻を死に追いやった皇太子の姿を思い出させて
中々共感する気にもなれません。

という不満はありましたが、先週「ロマンティック・ロシア」展を観たばかりの私、
ロシア気分を十二分に味わうことができました。
マチルダを演じたポーランド人女優のオルシャンスカは、この撮影のために
バレエもロシア語も必死に学び、一年がかりで撮影したのだそうです。
そのプロ魂には脱帽です。
公式HP http://www.synca.jp/mathilde/
#welovegoo