PCなりすましネコ男事件連続追及第11弾 元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発 裁判所が検察・警察のいいなりでどうすんの
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投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 5 月 30 日 08:59:59: igsppGRN/E9PQ
PCなりすましネコ男事件連続追及第11弾 元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発 裁判所が検察・警察のいいなりでどうすんの!
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2013年05月29日(水)週刊現代 :現代ビジネス
湾岸警察署での勾留生活は100日目に突入した。この長期勾留は、検察が申請して裁判所が認めたものである。裁判官にも責任がある。東電OL殺人事件で画期的な判断を下した元裁判官が憂える。
■裁判所は信用できない
4回の逮捕に2回の起訴が行われ、片山(祐輔)くん(31歳)は2月10日に逮捕されてから、すでに100日間も身柄を拘束されています。検察の言い分を鵜呑みにして、勾留を認めているのは裁判所です。その対応に、私は心底落胆しています。
しかも裁判所は、せめて母親や弟さんだけでも会わせてやってほしいという弁護人の申し出も棄却しました。「罪証隠滅のおそれがある」というのが、その理由です。検察官は「接見を許せば、被疑者が(家族などに)真犯人を装ったメールを送信させるおそれが高い」と主張しています。検察の言いなりになって、裁判所は家族との接見さえ認めていないのです。
しかし、母親や弟さんとわずかな時間、しかも看守立ち会いの上で接見させることで、証拠隠滅工作などできるのでしょうか。とくにパソコンにまったく詳しくない母親に、そんなことができるわけがないではありませんか。裁判所が本気で証拠隠滅のおそれがあると考えているのだとしたら、その常識を疑わざるを得ません。
木谷明弁護士(75歳)。東京大学法学部在学中に司法試験に合格し、'63年に判事補に任官された。最高裁判所調査官、浦和地裁判事部総括、東京高裁判事などを歴任して、'00年に退官。
'97年に発生した東電OL殺人事件では、一審で無罪判決を受けたにもかかわらず、ゴビンダさんの勾留を続けるべきだと主張する検察に対して、勾留不可の決定を下し、法曹界から高い評価を受けた(検察の再請求により最終的には別の裁判官によって勾留が認められた)。
現在は主に冤罪事件を中心に弁護活動を行い、片山祐輔さんの弁護団にも名を連ねている。
刑事訴訟では「疑わしいときは被告人の利益に」という原則があります。検察による犯罪の証明が十分でないときは無罪にすべきだということですが、この原則を守るのは容易でない。それは検察の力が強すぎるからです。
検察官は国家権力を背景にあらゆる証拠を入手します。検察が手にした証拠のなかには、被告人に有利なものも含まれています。しかし、検察はそれを被告人や弁護人に簡単には見せません。
逆に被告人は身柄を拘束されていて、自分で証拠を集めることすらできない。被告人に与えられた権利は、弁護士と接見することと、黙秘権の二つしかないのです。
そういう意味で検察と被告人では持っている武器がまるで違います。大袈裟に言えば、「大砲と空気銃」ほどの差がある。この両者を対等の当事者だと本気で言っているのだとしたら、世間の人には笑われてしまいますよね。ですが、実際の法廷では両者が対等のものとして裁判が進んでいく。その結果、検察の主張が通りやすくなるわけです。
裁判員制度を睨んで始まった公判前整理手続きによって、開示される証拠の幅はだいぶ広がりました。それでも検察官の手持ち全証拠の開示からは程遠い状況です。
片山さんは逮捕時から一貫して容疑を否認している。検察が主張する「犯行予告メール」を送ったとされる時間帯に、片山さんは派遣先で勤務しており、送信の痕跡があるはずがないなどと反論も具体的だ。
一方、検察と警察側は片山さんが真犯人であるかのような情報をメディアにリークするばかりで、何ら具体的な証拠を示していない。
また、取り調べも可視化がなされるならば、黙秘権を行使することなく応じるとも片山さん側は繰り返し主張している。
■検察は証拠を捏造する
検察は「被疑者が取り調べを拒否している」という点を勾留理由に挙げていますが、まったく事実無根です。しかも、勾留理由開示法廷で片山くんが具体的に供述をしているというのに、検察官はもちろん、裁判官も何の質問もしませんでした。
片山くんの言い分に疑問があるのであれば、なぜ質問しないのでしょうか。国民の貴重な税金を使って行われている法廷です。少しでも意義のあるものにするのは当然のことではないでしょうか。にもかかわらず、片山くんの言い分をまったく聞かずに、「罪証隠滅のおそれ」があるとして身柄拘束を続けるのは、裁判所の取るべき態度ではありません。
この事件は、これからでもいいので、可視化をして取り調べをするべきです。なぜ検察がそれに応じないのか。取り調べで検察官のITに関する無知が露呈するのを恐れているのではないでしょうか。
取り調べの可視化が必要だということは、今や社会の常識です。最高検も「可視化は犯罪の立証に有効」との提言を発表しました。ただし、検察が全面可視化に踏み切るかは未知数です。
一部可視化はすでに進められていますが、これはきわめて問題です。紳士的な取り調べをして、被告が署名している様子だけを見せる。ひょっとしたらその前に強引な取り調べが行われていたかもしれない。検察官と被疑者の間で何かしらの取り引きがあったのかもしれない。しかし、裁判員にその判断はつきません。一部分だけ見て、自白の任意性を認めてしまうことになりかねない。否認している被疑者がどの段階で、どういう経緯で自白に転じたかということを客観的に明らかにしなければ、意味がないどころか、有害ですらあります。
小沢一郎代議士の「陸山会事件」では、秘書だった石川知裕代議士の供述の捏造が問題となりました。この件は、取り調べの様子を石川代議士がICレコーダーで録音していたから明るみに出た。
また、厚生労働省の村木厚子さんの裁判では、検察官による証拠偽造が行われていました。この件について、私の知っている先輩の裁判官は、「検察官ともあろう者がそんなことをするのか。裏切られた」という反応をしていました。このことからも分かるように、裁判官の多くは、検察が違法行為に手を染めるなどと考えていないのです。
しかし、捜査機関は時として「違法な捜査」に手を染めることがあります。捏造は論外としても、これまで検察は被告人に有利な証拠を隠してきました。
実際、44年かけて被告の無罪が証明された「布川事件」でも、昨年無罪となった東電OL殺人事件でも被告人に有利な証拠が隠匿されていたと報道されています。被告人に有利な証拠を隠すことと、不利な証拠を作り出すことは行為としては異なることですが、その性質は同じなのです。
ただ、その問題に入り込むと、警察、検察という巨大な国家機関に対して、裁判所が真正面から大戦争をしなければならなくなる。それが厄介だということで、裁判官が「捜査の違法性」という根本的な問題を避けているのではないかと、私には思えます。
■警察官は平気でウソをつく
捜査機関の違法行為に関連して、片山くんに『恥さらし』という本を差し入れたんです。この本では、覚醒剤の使用や密売に手を染めていた北海道警察の元警部・稲葉圭昭氏が、赤裸々に罪を告白しています。道警が拳銃押収をでっち上げたり、違法なおとり捜査を行ったりと、組織的に違法捜査をしていたことも克明に記されてあります。片山くんはこの本を読んで、
「拳銃や覚醒剤は僕には遠い存在ですけど、警察官が平気でウソをつくこと、それについては恐ろしくなりました」
と率直な感想を述べていました。
今回の事件でも検察官は「違法な取り調べ」を片山くんに対して行っています。水庫一浩検事は録画なしには取り調べに応じないという意向を表明している片山くんに対し、弁解録取に名を借りて合計3時間半にわたって実質的な取り調べを行いました。これは明らかな違法行為です。
しかし、弁護人がその点を指摘して勾留請求の却下を求めたのに、裁判所は「相当性は疑問なしとはしない」としながらも、「違法ならしめるほどの手続き違反があるものとはいえない」などと訳のわからない理屈でごまかしました。裁判官は検察の行為を違法と断定するだけの勇気に欠けているとしか言いようがありません。これはまさに検察の主張を鵜呑みにする「検察官司法」の典型です。
現在、片山くんは度重なる逮捕で、保釈も認められず落ち込んでいます。当然ですよね。誰だって落ち込みますよ。私も「このまま、判決までずっと保釈されないことはあるんでしょうか」と聞かれました。
5月10日が誕生日だったので、それまでにはと考えていたようですが、そんなささやかな願いもかなわなかった。6月10日には免許の更新期限がやってくるし、7月は車検の時期なのだそうです。それまでには自由の身になりたいと、なんとか望みをつないでいる状況です。
私が裁判官だった当時から検察の力が強かったのは事実です。それでも昭和40年代前半には最高裁が無罪判決をいくつも出して、下級審も活気がありました。
私はかなり多くの無罪判決を出しましたが、1件だけしか控訴されませんでした。でも、無罪判決にはたいてい検察官が控訴します。控訴されると無罪判決が破棄されることが多いのも事実です。破棄されない無罪判決を書くには技術が要ります。いろいろな事件で苦労してはじめて一人前の刑事裁判官になると思うのですが、無罪判決を書く苦労をしていない裁判官が多いのは残念なことです。
その結果、検察に物申すような裁判官が私の現役時代と比べて減ってしまいました。皆さん天下の大秀才なのでしょうが、腹の据わった裁判官はどこにいってしまったのでしょうね。この国の刑事司法の先行きが本当に心配です。
「週刊現代」2013年6月1日号より