財政危機で西側資本の食い物になっているギリシャが露国と天然ガス取引で合
意、米 は新たな攻撃
2015.04.24 櫻井ジャーナル
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ギリシャの財政危機が浮上したのは2009年のことだが、その下地は2001年に通貨
がドラクマからユーロへ切り替えられたときにできあがってい た。こ の切り替
えを実現するため、ギリシャ政府は債務を小さく見せる必要が生じ、デリバティ
ブ取引の世界へのめり込み、債務を膨らませることに なったのだ。
2002 年頃、さまざまな投資銀行が債務を先送りさせ、表面的に数値を小さく見
せる複雑な金融商品を売り込み始める。 その代表的な手法がCDS(クレジット・
デフォルト・スワップ)。債権者が債務不履行のリスクを回避するため、幾ばく
かのカネ(保険料)を支 払ってリスク を引き受けてもらうという取り引きで、
中でも重要な役割を果たしたとされている投資銀行がゴールドマン・サックス。
その結果、ギリシャの状況 は水面下で急 速に悪化する。
ギリシャの場合、2007年から08年における債務はGDPの100%で、驚くような数値
ではなかったのだが、10年4月にスタンダード・ アンド・プ アーズやムー
ディーズといった格付け会社がギリシャ国債のランクを一気に3段階下げたこと
で返済を困難にするほど利率が上昇してしまう。破綻を仕掛けたと 言われても
仕方がない。
こうした会社の格付けが恣意的で信頼できないものであることは知られている
が、それでも債権の取り引きに大きな影響を及ぼしている。 2014年における 債
務はGDPの175%になった。弱った国を餌食にして肥え太ってきたのがジョージ・
ソロスが率いているようなヘッジ・ファンド。ヘッジが目 的ではなく、 単なる
投機集団だが、こう呼ばれている。
巨大金融機関や投機集団を儲けさせ、その後を引き継いで庶民の富を奪うのが
IMFのような機関。ギリシャのケースではIMFのほか、欧州中 央銀行と欧州 委員
会が庶民からカネを巻き上げる仕事をしている。この3組織はまとめて「トロイ
カ」と呼ばれるが、ギリシャやEUの利益でなく、アメリカ巨 大資本の利益 を考
えて行動している。
トロイカが推進している政策は「緊縮財政」の強要。福祉予算を削り、公共部門
を破壊して国民の資産を巨大資本へ二束三文で叩き売り、失業者 を増やし、賃
金を低下させ、増税して庶民を貧困化させ、巨大資本や富裕層へは椀飯振る舞
い。富を外国の銀行口座に貯め込んでいる裕福なエリート達はが負担 を強いら
れる ことはない。
こうした政策はIMFやIBRD(世界銀行)の定番だが、1929年に組閣された浜口雄
幸内閣が実行した政策も似たものだった。その結果、 娘の身売りが 横行し、欠
食児童が増え、小作争議も激化している。この政策を命令してきたのはアメリカ
の巨大金融資本、JPモルガンだ。
日本の場合、1930年に浜口が殺され、32年には浜口内閣で蔵相だった井上準之助
と三井財閥の大番頭だった団琢磨が暗殺された。1932 年には海軍の 将校らが首
相官邸や日銀を襲撃して犬養毅首相を殺害(五・一五事件)、そして1936年には
陸軍の将校が首相官邸や警視庁などを襲撃して高橋 是清蔵相らを 殺害(二・二
六事件)するという事件につながる。
ギリシャでは火焔瓶が飛び交う激しいデモを経て、トロイカが強要する政策を拒
否する政権が誕生した。西側の巨大資本の食い物になるのを避け るため、現政
権はロシアと交渉し、年間470億立方メートルの天然ガスをトルコ経由で送るこ
とで合意した。
ロシアから黒海を横断、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニアを経由
してイタリアへ至る「サウス・ストリーム」というパイプライン を建設する計
画はアメリカの圧力でブルガリアが建設の許可を出さず、ロシアは見切りをつけ
てトルコへ輸送、さらに中国との関係を強めている。
そのトルコからギリシャへ輸送、そこからEUへ運ぶということになるのだろう
が、早くもアメリカは妨害工作を始めているようだ。ギリシャか らマケドニア
へパイプラインはつながると見られているが、そのマケドニアへアルバニアの武
装勢力が攻め込んだのである。
アメリカ/NATOはコソボを制圧する際にもアルバニアの武装勢力を使った。この
国には1994年からアル・カイダ系の戦闘員が活動を開 始、ボスニアや コソボへ
入り込んでいる。1996年にコソボではKLA(コソボ解放軍)がコソボ北部にいた
セルビア人難民を襲撃、その後、西側に支援されな がら勢力を拡 大していった。
KLAは西側からの支援だけでなく、麻薬取引を資金源にしている。1970年代の終
盤、アメリカがアフガニスタンで秘密工作を始めてからア フガニスタン の周辺
はケシの生産量が急増、東南アジアの「黄金の三角地帯」に替わる非合法ヘロイ
ンの生産地になった。そこからバルカン半島を経由してヨー ロッパへ流れ るの
だが、この取り引きで大儲けしているKLAはアルバニアの麻薬組織ともつながっ
ている。
旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で検察官を務めたカーラ・デル・ポンテによる
と、コソボ紛争中にKLAの指導者らは約300名のセルビア人捕 虜から「新 鮮」な
状態で、つまり生きた人間から臓器を摘出し、売っていたという。そうした残虐
行為をする勢力でも支持するのがアメリカ流。(Carla Del Ponte, Madame
Prosecutor,” Other Press, 2009)
アメリカの支配層はギリシャにも軍事的な仕組みを作り上げている。ギリシャは
1952年にNATOは加盟したのだが、その際に署名が義務づ けられている反共議定
書は「右翼過激派」を守り、秘密部隊を編成することを定めている。
ギリシャの場合、LOK(山岳奇襲隊)が組み込まれ、イタリアのグラディオと同
じ役割を果たすことになる。1967年にギリシャではアメリ カを後ろ盾と する軍
事クーデターがあったが、それにもLOKは参加している。予定されていた選挙で
アメリカ支配層にとって好ましくない結果が予想されてい たからだとい う。軍
事政権は1974年まで続いた。ギリシャで再びクーデターが実行されることを懸念
する人もいる。それほどアメリカはロシアとEUの接近 を警戒してい るわけだ。
ギリシャ経由で天然ガスがEUへ流れるようなことがあると、ウクライナをクーデ
ターで乗っ取った目的のひとつが駄目になる。