A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

TALIBAM! (タリバム!)〜NY即興シーン発、人力ミニマルテクノイズデュオの全世界瞬時警報システム。

2017年09月22日 08時42分54秒 | 素晴らしき変態音楽


NY即興音楽シーンの人力ミニマルテクノイズデュオの非武装アラート万華鏡

タリバム(Talibam)!とは何たるバンド名であることか。イスラム原理主義国家タリバン(Taliban)とは一文字違い。区別する為に仮名表記を「ム」としたが、英語の発音は恐らくどちらも同じであろう。2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の際に、テロ首謀者と目論まれるアルカイダ関係者を庇ったためアメリカ軍の攻撃を受けた反米国家を連想させるこの名前を命名したのが二人のうちのどちらなのか、そんなことはどうでもいい。問題はCD盤に刻まれて(収納されて)いる音楽に他ならない。

今年7月13日に新宿ピットインで開催されたスガダイロー×灰野敬二のライヴで知り合った厳つい米国人がメンバーのマシュー・モッテルだった。四方山話が盛り上がり、その後連絡を取り合い、9月22日にリリースされる新作の情報を入手した。マシューのパートナーが、クリス・ピッツィオコスやメアリー・ハルヴァーソン等NY即興シーンで活躍するケヴィン・シェイであることを知り、俄然興味が沸いた。しかし公式サイトのSoundcloudで耳にしたサンプル楽曲を聴いて、頭に?????が浮かんだ。シェイの特徴のデストロイ&ビルドを繰り返す破綻したドラムプレイは影を潜め、愚直にビートパターンをリピートする正拍子ドラムが流れ出す。マシューのキーボードもただ同じフレーズをリピートするばかり。まさかこれは反米国家がNY即興シーンに混乱を与える為に投下された、疑似前衛音楽攪乱時限爆弾ではあるまいか。



TALIBAM! / HARD VIBE

Personnel:
Matthew Mottel: Fender Rhodes, synthesizer
Matt Nelson: tenor saxophone
Kevin Shea: drums
Ron Stabinsky: Hammond B3 organ
John Olson (Wolf Eyes): cover art

01. Infinite Hard Vibe Pt. 1 19:44
02. Infinite Hard Vibe Pt. 2 19:21

Mostly Other People Do The Killingでケヴィン・シェイと共演するロン・スタビンスキー(organ)とテナーサックスカルテットBattle Tranceのメンバーでもあるマット・ネルソン(ts)を加えたカルテット編成による『ハード・ヴァイブ』は、エレピとドラムのミニマルビートに乗せて延々とサックスが即興演奏を繰り広げる。フリー・インプロヴィゼーションである筈が、表面上の変化に乏しいワンパターンリズムが譬え様の無い焦燥感と田舎町への憧れを包み隠さず告白する用地に余念がない。約20分ごとのトラックは何処を切っても合点承知の倦怠感に包まれる。



TALIBAM! / Endgame of the Anthropocene

Personnel:
Matthew Mottel: Mini Moog, Midi Synths, Yamaha CS1x, Roland Juno 1, Roland Lucina, Arp Solus
Kevin Shea: drums, MIDI Marimba Lumina
Preston Spurlock: cover art

01. "Antarctica shall be used for peaceful purposes only" (Article 1) 11:56
02. Human Interference and the Failure to Ratify 4:08
03. Reign of Primordial Tenure on the Ice Shelf 3:01
04. The Telegenic Annexation of Territorial Expanse in the West 2:03
05. Obsequious Resources Duly Exploited De Novo 5:05
06. Breach of Ecology on the Seabed (Biodiversity in Shambles) 1:51
07. Cost-Effective Drilling Enabled by Pioneering Technologies and Warmer Climates in the Southern Ocean 6:10
08. RISE OF THE DEFENDERS OF ANTARCTICA 4:03

マシューとケヴィンのデュオによる『アントロパシーネの終焉/Endgame of the Anthropocene』はシンプルそうに見えても実は楽器編成に工夫を凝らし、一聴すると聞き逃してしまう周回ノイズ演奏の其処彼処に偏執音楽家の極意が表現されている。デジタル感ゼロのミニマリズムは50年代アメリカンドリームの人工的な多幸感を厭世的な2010年代にリ・クリエイトする脱構築ismの刃を隠し持っている。つまり汎アメリカ主義が瓦解したグローバリズムの多様性を箱庭化した世界地図に凝縮しようという試みが「タリバム!」の存在意義である。

Talibam! - 'All Your Money'


過度に思想性・政治性・民族主義を強調してしまったキライがあるレビューに恐れをなして、過去の夢に世界に逃げたいならば古き良きモダンジャズを聴いていればよかろう。即興音楽シーンに脈々と流れる社会状況・歴史認識の再構築の歩みは、最近のマタナ・ロバーツの『breath...』というライヴ・パフォーマンスにも明らかである。
⇒Sightsongブログ自縄自縛日記:マタナ・ロバーツ「breath...」@Roulette

時期を同じくして前衛自主レーベルの草分け「ESP-DISK」からリリースされた「タリバム!」の2枚の新作は、折しも北朝鮮情勢が緊迫する中、J-ALERT(全国瞬時警報システム)など足下にも及ばぬ本質的な危険信号の狼煙に燻されている。

継承者
警鐘鳴らせ
敬称略

Talibam! - It's a Tough Day, Hard Day

コメント
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