
めろん畑a go go at Shibuya DECEO mini Wednesday September 5, 2018
地下アイドルへの招待
第10回: 獲れたて新鮮!有機栽培果実系女子アイドル
第10回: 獲れたて新鮮!有機栽培果実系女子アイドル
text+live photos by DJ Necronomicon ネクロノミコン a.k.a. 剛田武
「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」という歌が流行ったのは今から34年前の1984年だった。ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』の舞台とされたこの年に、南国風の能天気なリズムで歌われるたわわに熟したトロピカル・フルーツさながらの豊満ボディのイケイケ女子は、奥手な男子にとっては別の意味で反ユートピアの象徴だった。それ以前から女子を果物に譬えることは世界共通の装飾法だったが、昭和末期/バブル前夜のプレ平成のポストモダンな女子たちの、熱を帯びた素肌の魅力が喧伝されたこの歌で、一番得をしたのはオカズにしたチェリーボーイズではなく果物業者だろう。キウイやマンゴーが一般家庭の食卓に並ぶようになったのはこの歌のおかげと言っていい。しかしながらバブル崩壊~オウム事件~9.11~3.11 を経験した世界と日本は、爛熟し噎せ返る芳香を放つ熱帯果実よりも、北国の冬を乗り越えて実がなるリンゴや、有機栽培農家で大切に育てられたイチゴやブドウといった、昔なじみの身近な果物に注目するようになった。同じことがアイドルシーンにも当てはまる。何万人に一人のコンテストを勝ち抜いて事務所の力で作り上げられた高嶺の花ではなく、近所のライヴハウスや CD ショップに会いに行けるアイドル、一緒に夢を追えるアイドルへと、身近な女子の魅力に気が付いた。最近ライヴハウスで出会った隣の果実系女子アイドルをじっくり舐め回してみたい。
LiLii Kaona (リリィ カオナ)

2017 年 10 月デビュー。オーガニック+エレクトロニカ=『オーガニカ』という新たなジャンルを掲げ独自の世界観を演出するヴォーカルユニット。略称「リリカオ」。メンバーは KOYUKI(中嶋こゆき)と YUKA(吉原ゆうか)。二人とも役者としても活動する。浮遊するエレクトロニクスとクラシカルでアヴァンギャルドなピアノやストリングスが配されたサウンドは、エンヤやケルティック・ウーマン、サラ・ブライトマンやエニグマと言った 90 年代ニューエイジミュージックを思わせる。役者としても活動する二人ならではの、幻想的なストーリーを描く振り付けは、HAMIDASYSTEM にも通じるが、たった二人の孤独な舞は、より儚げにヲタクの純情に忍び込む。何の予備知識もなく観たステージは、水が流れる音がどこかから聴こえる気がして、ケルトの民の土呉れた顔が頭蓋の中を覗き込む、幻聴と幻覚に溺れる夢の映像美だった。素顔の二人はきっと、森の妖精の微笑みを宿しているに違いない。
【MV】LiLii Kaona (リリイカオナ)「雨音」
⇒公式サイト
Lion net girl(ライオンネットガール)

2018 年 5 月 16 日デビュー。雛森りんごと夢咲とわが魅せるセンチメンタルロック系アイドルユニット。激しいメタル&スクリーモ系の曲調にもかかわらず醸し出されるゆるふわ感は、ラウドロック界のオアシスと言える。70 年代育ちの筆者にとって百獣の王ライオンは、風呂場で転んでタマを打って死んだという噂のタイガージョーの俳優や、ほぶらきんの『ゴースンの一生』で知られるカルトヒーロー『快傑ライオン丸』と、観光客を襲って喰う残酷映画『グレート・ハンティング』のアンビバレントな存在だが、今は『ライオンキング』で美化され、ドーナッツ(ポン・デ・ライオン)として逆に喰われる無害なゆるキャラに転じている。爪と牙と闘争本能を封印されたライオン(Lion)を、網(Net)で捕まえ野生に還す運動を、歌とダンスで志す女子(Girl)=LNG は、正直言って絶世の美少女ではないが、翼の折れた天使ならぬ、たてがみ三つ編みの獅子の憂いの気持ちを歌にして、罪の意識に安寧をもたらす禁断の林檎なのである。
Lion net girl / アイスクリーム(I scream)
⇒公式サイト
めろん畑a go go(メロンバタケアゴーゴー)

2016年に活動を開始。“IDOL from outerspace” はるか銀河の彼方、めろんの星からやってきたとってもキュートでいたずら好きな4人組。現在のメンバーは中村ソゼ、琉陀瓶ルン、ルカタマ、崎村ゆふぃ。当初は「クリプトン星」から来たクラーク・ケント/スーパーマンのようなアメコミヒーローを目指したようだが、結果的には「こりん星」から来た設定の小倉優子や「ゆめ星雲 おもいやり星」から来たキキ&ララのような、ゆるふわキャラへ向かっている。ロカビリーやサイコビリーに特化した楽曲はカッコ良く、かつてガールズガレージロック好きだった頃の血騒ぐ。Chocomates, SIX, The MILKEES, Thee 50's High Teens...みんなどうしているのだろう(遠い目)。そんな憂愁は初接触したルン(るたかめるん)の神対応に蕩け去った。病みを笑い飛ばすめろん畑のパワーにめろんめろんである。
めろん畑a go go『Horror Billy Nights』MV
⇒公式サイト
オーガニック
オルタナティヴな
オーガズム

LiLii Kaona at 中野坂上S.U.B.Tokyo Sunday, September 2, 2018

Lion net girl at Shibuya DECEO mini Wednesday September 5, 2018