サイケやプログレや地下音楽マニアじゃなくてもレコード好きが一度はハマるのがカラーレコードやピクチャーレコードといったギミック盤の世界だろう。そもそも幼児の頃に家にあったTV漫画のEP盤はキャラクターが描かれたピクチャーレコードだった。子供心に普通の黒盤よりもカラフルなピクチャー盤を好んで聴いていた記憶がある。
80年代、アルバイトで貯めたお金である程度レコードを買えるようになり、レコード屋に通ううちにギミック塩化ビニール盤への憧れが再燃した。特にパンク/ニューウェイヴ系の派手な色のカラーレコードに惹かれたが、十九の秋の晴れた日の午後の微睡みの中でジャケットもレコード盤も透明なレコードに出会い、目から鱗/眉に唾/壁に耳有り障子に目有り/百聞は一見にしかずクリアヴァイナルに開眼した。たまたま筆者の手元にあるクリアヴァイナルはプログレ/アヴァンギャルド/ノイズ系だということもあるが、透明塩ビ盤に刻まれた音は悉くマインドブローイングなサイケデリックスピリットを宿している気がしてならない。
●FAUST『FAUST』
Recommended Records – RR one (1979)
ドイツ北部のヴュンメで70年に結成されたクラウトロック・バンド、ファウストの71年の1stアルバムにして全世界の前衛音楽を代表する1枚。冒頭のノイズの砂嵐の中からローリング・ストーンズ「サティスファクション」とビートルズ「愛こそはすべて」が浮き出る展開は、筆者が目指すDJプレイの理想型である。電車の通過音、男女の会話、邪教の青年合唱団、ピアノの雨だれ、砂塵の吹き荒びetcの旅を経て浮き世に戻ると世界が反転していることに気付く。聴覚のアシッドトリップは黒盤でもCDでも変わらないはずだが、透明盤の方が大脳皮質への浸透度が早いような気がする。
Faust - Faust (1971)
●C.C.C.C.『Amplified Crystal』
Endorphine Factory – EDP-004 (1993)
日野繭子、長谷川洋、コサカイフミオ、長久保隆一によるノイズバンド。89年結成、98年活動停止。正式名称はCosmic Coincidence Control Center(宇宙暗号制御センター)。集団即興ノイズ演奏だが、宇宙的なサウンドを特長としており、大音量で威嚇するのではなく、聴き手の精神を拡張させる宇宙の旅に誘う音響伝道師である。メンバーは現在も地下音楽シーンで活動を続けている。透明ヴァイナル/透明ジャケット/トレーシングペーパーインナー付属の本作は92年のスタジオ/ライヴ音源をAUBE(中嶋昭文)がリミックスしたアルバム。
C.C.C.C. - Amplified Crystal Part II
●Toukaseibunshi『Stratosphere Sound』
Art Into Life – AIL012 (2014)
フォトグラファーでもあった岩田裕成のソロ・プロジェクト。透明ヴァイナルがこれほど相応しいユニット名は無いだろう。『成層圏の音』と題された本作には、テーブルギターを音源として繊細なエフェクト操作で拡散するドローンノイズが収められている。演奏者の魂が透明な音の微粒子となって上昇(Alive To The Sky)〜蒸発(Dawn)〜水没(Water Erotic Machine)し、最後は宇宙塵(Star Dust)となって銀河の果てに消えて逝くサイケデリック・ライフのサウンドトラックである。
Toukaseibunshi - water erotic machine
クリスタル
トランスペアレント
クリアリネス
透過性分子 Special Live /映像:VJ Qliphoth
2018年3月24日(sat)18:00 Open/Start Shibuya DJ BAR EdgeEnd
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.11 Le Sacre de l’Équinoxe