
2019年10月22日は天皇が即位を宣言する「即位礼正殿の儀」が行われ国民の祝日となった。カレンダーによっては明記されていない場合もあり、本当に休みでいいのかな?という疑問がうっすらと靄のように頭に浮かんだが、冷たい雨の皇居で装束姿の天皇皇后が即位を宣言したと翌朝の新聞で読んだ。アナーキーの『東京イズ・バーニング』で歌われたうめぼし殿下が立派にご成長なされた御姿は国内外に日本の象徴の在り方を知らしめたに違いなかろう。
激レア!アナーキーライブ「東京イズバーニング」
それは素晴らしいことだが、筆者にとってはこの良き日に狙いを定めたかのように届けられた地下音楽の秘宝に胸はドキドキ、心はゾクゾク、異常なほどの多幸感に震えている。質量共にとても二・三日では聴き切れないので、昂奮状態は少なくとも一・二週間は続くに違いない。お楽しみの手始めにお迎えした魔盤たちを簡単に紹介しよう。
●V.A. / VANITY BOX 11CD : kyou records remodel 05

●V.A. / Musik 2CD : kyou records remodel 03

●V.A. / VANITY TAPES 6CD : kyou records remodel 04

2018 年に死去した『Rock Magazine』誌編集長、阿木譲が1978年に立ち上げたヴァニティレコードから1978年から1981年にかけてリリースされた全シングル、アルバム、コンピレーション、カセットテープを集大成したボックスセット3種類。それぞれ500セット、400セット、300セットの限定盤のため予約ですべてソールドアウトしたと思われる。あがた森魚とアーント・サリーという人気アーティストから、シンパシー・ナーヴスやトレランス、BGMといった実験エレクトロアーティスト、さらにヴァニティに送られた無数のカセットテープから選ばれた正体不明の宅録アーティストまで、有名無名のサウンドの寄せ集めは、阿木譲の感性と思想が深く反映された先鋭的なコレクションである。
Tolerance - Anonym
⇒きょうRECORDS公式サイト
⇒【レーベル特集】ヴァニティ・レコードは自惚れ地下音楽家の避難住宅だったのだろうか?
●共三党 / COM-MU-NIST LP : Bitter Lake Recordings – BLR-007

83年に広島にて結成、GUDONやHALF YEARSでも活動のドラマーAkito氏らによるハードコアパンクバンドが、自主レーベル"Communist rebel"から84年にリリースした超貴重な2本のTAPEをまとめたディスコグラフィーLPが初再発。電動マリオネットやJUMAをはじめ、日本カルトウェーブの発掘リリースで知られるNYのBITTER LAKE RECORDINGSより600枚限定リリース。こちらも予約開始と同時にソールドアウト。入手を諦めかけていたが、某サイトで見つけて即座に注文し、即位礼正殿の儀の翌朝に届いた。ドラム・ベース・ギターのトリオ編成で繰り出すシンプルなハードコアサウンドは、ローカルらしい畸形味も加味され、憎み切れないろくでなしの魔力を持つ。LPは完全ソールドアウトだが、BandcampでデジタルアルバムがDL購入できる。
共三党 - Fuck Off / We Are Punx No Die
⇒BITTER LAKE RECORDINGS Bandcamp
●春日井直樹 / NO,DANCE! SWITCH Cassette : Daytrip Records DTR-CA007

名古屋出身の地下音楽家・春日井直樹が1985年に立ち上げた自主レーベルPlant Music Collectionsの第1作目。SWITCH名義でリリースされた宅録ヴォーカル作品集。2曲にヴォーカルとピアノが参加している以外はすべて春日井自身による多重録音。宅録ならではのアイデアを駆使したサウンドの妙が楽しめる。DD.Records時代よりロック/ポップ色を強調したバンドスタイルの演奏は、4年後の1989年にサイケデリックバンドMarginal Loveを結成し、90年代名古屋ロックシーンの中核として活動することになる春日井のロックサイドの原点ともいえる。15ページに亘る解説書には各曲の解説と裏話が綴られ、当時の地下音楽を巡る空気感がヴィヴィドに描かれている。80年代のカセットブックを再現したハンドメイドパッケージも嬉しい。限定35本だが、今ならまだ公式サイトで予約可能。
Switch(Naoki Kasugai)Dance Cafe(1985年)
⇒Daytrip Records公式サイト
地下音楽
汲めども尽きぬ
歴史有り
偶然にもCD/LP/カセットの3形態が揃ったのも目出度い。
