TRASH-UP!! RECORDS PRESENTS『たのしい生活』
10月26日(土)渋谷CYCLONE
11:00open 11:30start 入場料無料(+D代のみ)
出演:SAKA-SAMA ゲスト : XOXO EXTREME
筆者の推しメンのめるたんこと楠芽瑠が卒業して3人組になったキスエクことXOXO EXTREMEのライヴを初めて観た。40分のロングセットだったのに遅刻してしまい最後の3曲しか聴けなかったが、一色萌、小嶋りん、研修生の浅水るりの3人体制のパフォーマンスは、驚くほどタイトに纏まっており、渋谷サイクロンのロック仕様のPAの迫力ある音響と相俟って、以前よりも「歌と音楽」を強く体感することが出来た。ディズニー好きで可愛いアイドルを体現していためるたんが抜けたことで、キスエクのプレグレ曲の魅力がより強く発揮される結果になったのだろう。とはいえアイドルとしての魅力が減った訳ではなく、可愛さを売りにするキラキラ系とは異なる<The Dark Side of the IDOL>の魅力が溢れている。それは筆者の主現場の爆裂女子やネクロ魔にも通じる<音楽で武装した女子の輝き>である。
なお、いつのまにかふたり組になっていたLo-FiドリームポップアイドルSAKA-SAMAも太陽のように眩しく輝いていたことを付け加えておこう。
●キスエク XOXO EXTREME
推しメンの抜けたキスエクの終演後物販に参加しようかどうか迷ったが、ライヴの感動を直接伝えたくて、バイオリンも弾くりんりんこと小嶋りんとの初ツーチェキに臨んだ。3人のパフォーマンスに感動したこと、今まで以上に楽曲の魅力が伝わったことなどを話している最中に、突然オレの頭に浮かんだのは『プログレトリオ最強伝説』という妄想だった。「例えばELPとかトリオじゃん」と言うと「ELPも3人なんですか?」と聞くので「エマーソン、レイク、パーマーの3人の頭文字を取ってELPだよ」と教えるプログレおじさんになってしまった。短い接触時間ではとても伝え切れないので、彼女のためにこうしてブログに認(したた)めておくことにした。
The Last Seven Minutes (MAGMA COVER)/ XOXO EXTREME 2019.7.25 渋谷WWW
●ジェネシス Genesis
1975年のピーター・ガブリエル(vo)の脱退に続き77年にスティーヴ・ハケット(g)が脱退し、フィル・コリンズ(vo.ds)、マイク・ラザフォード(g,b)、トニー・バンクス(key)のトリオ編成になったジェネシスが78年に発表した9作目のスタジオ・アルバムが『そして3人が残った』(原題:...And Then There Were Three...)。英米でそれまでのチャート最高位を記録した。その後ジェネシスはポップ路線を突き進み、どんどんプログレ色を失って行くこととなる。
Genesis - Follow You Follow Me (Official Music Video)
●エマーソン・レイク・アンド・パーマー Emerson, Lake & Palmer
プログレ・トリオの代表格が70年に結成されたキース・エマーソン(key)、グレッグ・レイク(b/vo)、カール・パーマー(ds)からなるELP。彼らの大成功のあと世界中にプログレ・キーボード・トリオが多数生まれ、「○○(国名)のELP」が乱立する状況が生まれた。個人的にギターのいないバンドは好きではないが、キース・エマーソンがシンセにナイフを突き刺すパフォーマンスはサディスティックで嫌いではない。
Emerson, Lake & Palmer - Knife Edge - Live in Switzerland, 1970
●キング・クリムゾン King Crimson
ロバート・フリップが率いるプログレバンド、キング・クリムゾンはメンバーが次々変わりそれに伴い音楽性も変化することで知られている。かつて音楽誌では「第○期クリムゾン」と名付けることが多かったが、評論家や雑誌によって定義が異なっており、デビューから40年経った今は第何期か語れる者はいるのだろうか。73年の5thアルバム『太陽と戦慄』以来バンドの実質的な核はロバート・フリップ(g)、ジョン・ウェットン(b/vo)、ブル・ブラッフォード(ds)の3人になっていたが、74年の7thアルバム『レッド』でジャケット写真も三人のみにして高らかにトリオ宣言をしている。内容的にもメタリックな「レッド」から叙情的な「堕落天使」、後半フリーインプロヴィゼーションに突入する「スターレス」まで最高で『プログレトリオ最強伝説』を象徴する1枚である。
●ラッシュ Rush
74年にカナダからデビューしたスリーピース・ロックバンド。ギター/ベース/ドラムというロックの基本編成は、ELPのキーボード・トリオに馴染めない捻くれプログレファンの心の拠り所である。演奏はハードロック色が強く悪くないのだが、如何せんハイトーンのヴォーカルが筆者としては好きになれない(イエスのジョン・アンダーソンも同じ)。カナダの誇りとして74年から同じメンバーで活動を続けてきたが2018年にドラマーが引退を発表した。
Rush - Red Barchetta (Live (1980/Canada))
●フォルムラ・トレ Formula 3
イタリア出身のキーボード/ギター/ドラムというギターレス編成のキーボード・トリオ。68年結成だからELPの影響で誕生したバンドではない。初期はサイケデリックバンドだったが70年代半ばシンフォニックロックに転身しイタリアンプログレブームの中心バンドとして成功する。日本では70年代後半のキング・ユーロロック・コレクションの目玉として売り出されプログレファンの基本アイテムになった。
Formula 3 - Nessuno Nessuno (1971)
●エトロン・フー・ルルーブラン Etron Fou Leloublan
73年にフランスで結成されたアヴァンギャルド・ロックバンド。バンド名は「狂った糞、白い狼」の意味。79年まではサックス/ベース/ドラムのトリオ編成で活動。コメディ/シャンソン/パンク/ジャズ/大道芸をブレンドした前衛的作風で、英プログレバンド、ヘンリー・カウが提唱したROCK IN OPPOSITION(反対派ロック/RIO)に参加。当時筆者がRIOで一番好きだったバンドだが、未だにその素晴らしさを言葉で表現すことができない。
Etron Fou Leloublan - Le Fleuve Et Le Manteau
●スラップ・ハッピー Slapp Happy
72年ドイツで結成されたダグマー・クラウゼ、アンソニー・ムーア、ピーター・ブレグヴァドからなるアヴァンギャルド・ポップバンド。プログレと呼んでいいか分からないが、クラウトロックのファウストがバックを務めるなど、普通のポップバンドとは次元の異なる変態性と狂気を持っている。75年にヘンリー・カウと合体自然消滅するが何度か再結成している。日本では戸川純がカヴァーしている。
Slapp Happy - Casablanca Moon
●アート・ベアーズ Art Bears
スラップ・ハッピーと合体したヘンリー・カウは78年に解散。元メンバーのダグマー・クラウゼ(vo)、フレッド・フリス(g)、クリス・カトラー(ds)が結成したプロジェクトがアート・ベアーズ。ダグマーの歌をメインにした即興/現代音楽の要素の強い硬派なサウンドは、同時代のオルタナティヴロック/ポストパンクと共振したが、80年活動停止。
Art Bears - Freedom
●マサカー Massacre
80年にニューヨークに移住したフレッド・フリス(g)がビル・ラズウェル(b)、フレッド・マー(ds)と結成したインストロックトリオ。ノーウェイヴ、フリーミュージック、ハードコア、ファンクが合体したスリリングなギターロックは、プログレよりもフリージャズやポストパンク文脈で高く評価された。まさか37年後に日本の地下アイドル(ドッツ東京)がカヴァーするとはフリスも驚いただろう。同様にキスエクのマグマやアナクドテンのカヴァーも歴史的快挙に違いない。
Massacre - Legs
●是巨人 Korekyojin
95年に結成された日本のプログレッシブ・ロック・パワー・トリオ。現在のメンバーは吉田達也(ds)、鬼怒無月(g)、ナスノミツル(b)。バンド名は、ディス・ヒートの「This=是」とジェントル・ジャイアントの「Giant=巨人」を掛け合わせて付けられた。複雑なポリリズムの楽曲が多いが、テクニックの誇示に陥らずスリルとカッコ良さを追究する姿勢は『プログレトリオ最強伝説』の生きる見本といえるだろう。
Korekyojinn - Swan Dive
果たしてキスエクがこの先トリオ編成のまま活動を続けるのか、新メンバーを加えるのかはかは分からないが、参考のひとつにしていただければ幸いである。
トリオなら
じゃんけんしても
あいこでしょ
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