A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私のB級サイケ蒐集癖】第28夜:執拗なアコギと緊縛のアンタイ〜春日井直樹『SPACE MAGIC』『Vinyl Masochisim 2』

2020年03月24日 02時13分05秒 | 素晴らしき変態音楽


以前から何度か紹介して来た地下音楽家、春日井直樹と今年1月30日に名古屋で濃厚接触する事に成功した。ロコドル(地方アイドル)ならときどき東京へ遠征してくるので観る事が出来るが、地方在住の地下音楽家の、特に宅録ミュージシャンの多くは東京でライヴをする可能性はゼロに近い。向こうが来ないならこっちから行こう、という切羽詰まった決心をした訳ではなく、某大物洋楽バンドの名古屋公演を観るついでにコンタクトしたというのが真相だが、筆者にとっては女王合唱団のドーム公演以上に充実した会談だったこともまた真実である。接触時の対話で明らかになったこの異端音楽家の私生活や来歴の一部は、3月28日阿佐ヶ谷TABASAで開催される『盤魔殿vol.34』に於けるトークで詳らかにする予定なので、興味のある向きには万難を排してぜひともお越しいただきたい。ひとつだけ、春日井が自覚する自分自身の本質は<サイケデリック>であることだけは強調しておきたい。そのことを雄弁に物語る2020年2月21日リリース作品2点を紹介しよう。
【イベント告知】3月28日(日)開催。ディスクジョッキースタイルのトーク&DJ:盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.34〜異端音楽クラスター感染

DAYTRIP RECORDS公式サイト

●Naoki Kasugai(春日井直樹) / SPACE MAGIC


番号<DTR-LP011> 200枚限定LP盤 
全6曲 定価¥2800 [税込)  
詳細・注文はコチラ 

究極のサイケデリック・ノイズ・アシッドフォークアルバム。200枚全てのジャケットがハンドメイドで作られ1枚1枚違うコラージュ・アートがほどこされております。全てが1点モノで同じジャケットは1枚もありません。
- DAYTRIP RECORDS 作品コメントより


2018年12月10日にリリースされた春日井の7作目のLP『呪歌』は”破滅的アシッド・ノイズ・フォーク・アルバム”と呼ばれ、変則チューニングフォークギターが鳴り止まぬ中、春日井の20年分の呪いをすべて吐き出した、タイトル通りの呪いの歌が凝縮された作品だった。そして春日井が再びフォーク(アコースティック)ギターを手にして作り上げたアルバムがこの『SPACE MAGIC(宇宙の魔術)』である。『呪歌』のように憎しみが溢れ出ることを恐れて怖々レコード針を下ろしたところ、耳に飛び込んで来たのは決して”希望の光”ではないが、呪いの牢獄から薄明の世界へ旅立とうとするトルバドールの歌声であった。壮大な魂の旅が始まる。それはまさに宇宙の祭典(SPACE RITUAL)へと誘う宇宙の魔術の導き。
【感情解放ノ為ノ音楽〜アシッド・フォークの極北】春日井直樹『呪歌』

春日井は、デレク・ベイリー言うところの非因習的即興(Non Idiomatic Improvisation)へのロック/フォーク・サイドからの回答として、作曲された楽曲を、チューニングが狂ったギターを奏でることにより、常に異なる歌に変化させる、いわば”非調律ギター奏法”により非日常的音楽世界を産み出す。春日井の愛聴するシド・バレット、ジャンディック、セント・ミカエルのようなアウトサイダーシンガーソングライターに通じる狂気の創造である。とりわけ各面ラストに収録された長尺ナンバー「Freakout Blues」と「Space Magic」の執拗に繰り返されるアコギの上に具体音/環境音/電子音が浮き沈みする異界音響は、アモン・デュールIIの『Phallus Dei』『Yeti(地獄!)』を彷彿させる魔境巡りのサウンドトラックに聴こえる。この旅を終えた先に何があるのか、恐らく当の春日井本人は思い描いていないに違いない。なぜなら彼にとって”サイケデリック・ジャーニー”は”日常”なのだから。




●Naoki Kasugai(春日井直樹) / Vinyl Masochism 2


番号<DTR-LP012> 30枚限定LP盤 
定価¥1000 [税込)  
詳細・注文はコチラ 

既製の中古LP盤(歌謡曲)にヤスリをかけオリジナルのレコードレーベルを貼り付け更にそのレコードジャケにコラージュを施した作品。付属の紙ヤスリを使用すれば自分の好みの箇所にノイズを加える事が可能。
注意!!=このアルバムを再生するためには損傷しても問題が無いレコード針を使用することをオススメします。
- DAYTRIP RECORDS 作品コメントより


同時リリースの本作は、2019年9月14日にリリースされたカセットテープ作品『Vinyl Masochism』の続編である。Trío los Panchosや英会話のレコードなどをナイフで徹底的に傷つけバーナーで燃やしムチ打ち最後に小便をぶっかけたレコード盤を再生して編集した変態的コラージュ・ノイズ・サウンドを収録したカセットテープに、7インチ・シングル盤に異物を貼付け彩色し麻紐で磔にしたSMレコードオブジェが付いた作品だった。LPレコード作品となった第2弾『Vinyl Masochism 2』は、前作では”音源”であった陵辱されたレコード盤それ自体を”作品”として提示したものである。松山千春のLP盤をヤスリで傷つけたゴミ同様のレコード盤を、同じくコラージュで隠蔽したジャケットに入れ、更に麻紐で緊縛したSMレコードオブジェ。中を見ようと思って麻紐を解こうとしたのだが、結び目が堅すぎて、紐を切るしか方法がない。それを春日井に伝えたところ、即座に「縛るの手加減したらSMにならないじゃないすか」という単純明快な返答が届いた。
【地下音楽アクショニズム】春日井直樹『walk:2019/8/16』『HELL』『CRAZY COLOR IN MY HEAD』『Vinyl Masochism』

世の中には再生できないレコード、通称「アンタイレコード」なるものが存在する。ルーツはマルセル・デュシャンのレディメイドにあり、特に現代アートやノイズ/アヴァンギャルド界で制作される、音楽用レコードを溶かしたり、穴を開けたり、塗りつぶしたり処理して、結果的に再生不可能なノイズ作品が一般的である。音楽を再生できない音楽用レコードという矛盾した作品を提示する事により、音楽を”聴く”という概念を破壊し、聴き手の意識を変革する意図があるのだろう。しかし春日井にとっては他人の概念や意識など関係ない。自分が愛するレコードを陵辱しサドマゾの欲望を満足させる行為そのものが目的なのではないだろうか?性欲を処理した残滓を作品として残すのは、それもまた彼の”日常”に他ならないからに違いない。

▼これもまた彼の日常。
NAOKI KASUGAI コラージュ・アート制作のススメ


春日井直樹にとって音楽/アート作品とは自分自身の日常生活の営みから否応無しに産み出される”記憶”の具現化なのである。それが21世紀の精神サイケデリアの生きる道なのだから。

サイケ旅
排泄物が
道になる

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