A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【クラウド盤魔殿 第5弾(2020年8月)公開中!!】FREE ZINE『盤魔殿アマルガム』最新号公開!!!盤魔殿DJ今月の1枚!!!

2020年08月23日 00時11分08秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿DJ 今月の1枚  
盤魔殿DJ陣が毎月お気に入りの音源をご紹介。こだわりの選盤からどんな世界が広がるかお楽しみください。

●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
CABARET VOLTAIRE / Code (Parlopone) 1987


1987年といえばイビザやらそこらでエクスタシーが出回りセカンド・サマー・オブ・ラブ勃発の年として有名だが、世の中みんながエクスタシー食って「ハウス・ミュージック最高ー、やっぱ愛だよ愛」ってなってたかと言うともちろんそんなコトなくて、同じデジタル・ミュージックでも「ファック・エクスタシー!!俺たちコーク・イズ・イット」と鼻水&鼻血たらしながらガシガシ踊ってたのがエレクトロニック・ボディ・ミュージックEBMって印象(あくまでも個人の印象です)。まあハウスのラブいヒッピー感に抵抗あって、パンク/NWのダークな世界観をダンス・ミュージックに落とし込んだって感じ。現在EBMの定義は1988年Front242が「俺たちEBM」宣言したのが始まりとされているが、個人的記憶では1986年ミニストリーの”トウィッチ”が発火点。たぶんエイドリアン・シャーウッドの名前にひかれてここら辺聴き始めたんだと思う。なのでEBMもON-Uサウンドもあんまり区別してなかったな多分。で、そんなシャーウッドの87年の仕事といえばキャブスのコレ。心あるキャブス・ファンから完全シカトされがちなこの時期だが、デジタル・ファンクとインダストリアル、ダブ、サンプリング、NYディスコが絶妙なサジ加減でブチ混まれており、ミート・ビート・マニフェストあたりのEBM好きにこそ聴いて欲しいカッコ良さ。それにしても実験テープ音楽からインダストリアル、ファンク、EBM、ハウス、テクノへと時代の変化と共に自らをアップデートさせていくキャブスのしぶとさはマジで見習いたい。多くのポスト・パンク世代が結局は過去にしがみつくしかない現状をせせら笑いながらキャブスは未来をまなざす。もうすぐリリース予定の新アルバムも期待するしかない。未来へ!。


●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
Rupert & Bertrand Burgess meets Mixed Band Philanthropist / When Anti Meets Electronics It All Ends Up As Nothing (LP)


現在はTNBのRichard RupenusとStan Reed、Allan Zaneの3人で動いているMixed Band Philanthropistの2017年度リリースされた新録作品! 80年にカセットを一本だけ残している謎多きユニットDada DuoのRupert & Bertrand Burgessとのセッション1曲を含む全3曲からなり、厳つい感触のコンクレート、高速カットアップ、DJミックスの様な形まで妙に振り幅のあるコラージュワークスとなっています。このノーマルエディション(とは言え100部限定)の他に5部限定のCD-Rの付属したBOXセットや50部限定の片面7inch付属のスペシャルエディションなど、計5種類のヴァージョンがリリースされています。私が入手したノーマルエディションでさえもリリース時は定価(送料込み)で¥5,000弱だったので、購入に数分悩んでいたらソールドアウトとなってしまい自身の優柔不断さに恨みを感じていた時期もありましたが、今回目出度くたまたま立ち寄ったUnion某店にて超爆安価格で購入出来たのは、今のところ今年1番のラッキーかな?(笑)


●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
おとのわ - 光明 (2016) CD


「おとのわ」は出口はるひ(歌・祝詞・石笛・クリスタルフルート・鈴)と佐藤なーや(クリスタルボウル・ホーミー・シンギングボウル・オリンチャイム・勾玉シダーフルート)の二人による2013年結成の音楽ユニット。日本全国、そして国外でも精力的に音楽活動を行う「おとのわ」の特徴は、佐藤なーやの奏でるクリスタルボウルの静謐な倍音は勿論のこと、その音に共振するように紡がられる出口はるひの祝詞(のりと)の霊性にある。祝詞とは、一般的には神道の祭祀に奉仕する神職が神に対して唱える言葉であり、その言葉には霊力が宿り、口に出されて述べることにより、この霊力が発揮されると考えられている。また、正式な場で唱える祝詞には、こうした言霊に対する信仰が根底にあるため、一字一句に流麗で荘厳な言い回しを用いて、間違えることがないように慎重に奏上される。ただ、「おとのわ」のライブでの演奏や、今回紹介する録音作品『光明』に収められた祝詞は、古来の正式な祝詞と共に、それらを現代的に解釈した、ある意味でわかりやすく聴く事ができる歌として翻訳が為されている。これらの翻訳の根底にある安らぎとは、1898年(明治31年)に「出口なお」と女婿「出口王仁三郎」により創立された神道系新宗教「大本」が不敬罪として国家に弾圧までされた、神道本来の精神性に由来するのではないだろうか。
2016年出版のCD「光明」は出口王仁三郎の玄孫にあたる出口はるひの祝詞が、神と人が一体であることを前提に散りばめられ、その中に静かな狂気を孕ませているような、バランスに優れた不思議な作品。


●DJ Ipetam a.k.a. Rie fukuda
Odes / Vangelis,(vo)lrene Papas


ギリシア生まれのシンセサイザー奏者/音楽家のヴァンゲリスが日本で有名になったきっかけは、テレビ番組のBGMに使われた事であったと記憶している。
元々、彼は60年代にはポップスのバンドでオルガンを弾いていた様で、若く親しみやすい風貌の動画は現在でも簡単に見つける事ができる。 
ここにある収録曲を初めて聴いたのは、深夜のラジオ番組だった。
何よりも驚くのは、あの多数の印象的なメロディを生み出したにも関わらず、音楽は独学(個人教授は付いていた様)であり、楽譜が読めない事。所謂天賦の才の持ち主なのだろう。
1979年リリースのこのアルバムでは、女優/歌手のイレーネ・パパスがあたかも太古の女神の如き崇高な声を聴かせている。
ヴァンゲリスの楽曲の作成方法には、ギリシアの古典的な音階が活用されているそうであるが、それでも他の作品に比べてもはるかに壮大であり、尚且つ素朴な味わいがある。彼らのルーツを体感出来る貴重な盤でもある。
ヴァンゲリスのオリジナル曲二曲と古い民謡で構成されており、重厚ながら深く包み込む様な快さに溢れている。
日本国内では廃盤であるが、その他の様々な方法で入手可能。ヴァンゲリスに興味があるなら、必ず聴いていただきたい名盤。現世の憂いを忘れる事が出来るはず。

イレーネ・パパス/その男、ゾルバより


●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元
Yokoscum ”Last month's music"


kaniQkaiやdepthmen、necccのメンバーであり、DJ:YOKOSCUMとしても活動する
若き新鋭!YOKOSCUM(ヨコスカ)のカセットテープ作にして、録音は自身がハンディー
レコーダーを用いて行ったというDIY振りである。
聴こえてくるのは、氏自身の中心から現れる衝迫によって瞬間、瞬間に産まれる捻れた
インダストリアルビートであったり、魂より湧き上がるかのような音々の応酬や
幽体のように浮き上がるコラージュの狭間に揺れる波動…
そして、楽曲が次へと変わっても変わらずに"ありつづける"眩い音の輝度である…
あゝ聴くたびに意識を貫いては閃光するので
例えばつぎのように興奮を覚えてならないのである…

突如現れ、血管に流れ込むかのように脈動する得体の知れない熱量が胸を突いた…
熱量が収縮を続け、散光する中、堂からこだまする声が太陽へと放たれる…
強靭な刃がぶつかり合うかのようなインダストリアルビートは日常に咆哮し、
視界を真っ白に遷移させる白日夢コラージュの中、精神と結合する声と呪術的金属
ビートが絶大なインパクトを以って閃光し、魂を温め、陶酔へと向かう…

この度のクラウド盤魔殿でも一曲廻させていただいたので
聴いていただければ幸いです。


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
risaripa / Parallel


女性シンセ奏者、risaripa (a.k.a. Risa Reaper) の最新アルバム。数年前Soundcloudで「発見」し、80年代初期の宅録音源、例えば大竹伸郎の19 JUKEや、Vanity Recordsや第五列、DD.Recordsの諸作を思わせるサウンドに興味を覚えたが、特に深く調べることなく放置していたアーティストだが、先日DD.Redords関係者のツイートでこのアルバムのことを知り、Bandcampで聴いてみたところ余りに素晴らしかったので即購入。本人曰く「ボクがかんがえたさいきょうのストレンジポップをモジュラーシンセと声ノイズで」制作したという。最近のモジュラーシンセは面白いと思うが、多くの音を使い過ぎて複雑にしすぎたり、ノイズ・ミュージックにしてしまう傾向が多く不満を持っていたのだが、risaripaのリズム主体のシンプルな使い方こそまさに自分が聴きたかったモジュラーシンセ。言語不明の奇妙なヴォイスがテクノ感を増幅し、言葉通りの「最強の地下テクノポップ」になっている。彼女のBandcampでは多くの音源が¥300から「Pay what you want」(最低無料でも)で購入できる。“どんぐりオーチャック”名義で5年前に制作した音源をコンパイルした『2015-2016』も必聴。
https://risaripa.bandcamp.com/music
昨年から再発が始まったVanity Recordsの諸作と同じように、時代に関係なく存在する地下音楽の原点と言える作風は、聴き続け語り続けてていきたい。


●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
地下音楽探訪 宇田川岳夫~森羅万象‐津軽 (織茂静子遺作) 自主製作(月見堂)


演奏 織茂静子 ベース、ヴォイス
   織茂敏夫 ピアノ、神楽鈴
録音 2017年5月8日 音の家月見堂
2019年9月にこの世を去った織茂静子の遺作となるアルバム。織茂静子の夫である織茂敏夫の経営する自宅兼交流スペースである「音の家月見堂」において、織茂夫妻による即興演奏を録音したものである。通常彼らの音源はライブ録音されることが多いが、この音源は観客を交えず二人だけで即興演奏したものを収録している。ピアノとベースのデュオというとキース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンのエレン・デヴィッドを思い起こす。織茂夫妻の演奏はパンク、ノイズ、シャーマニックトランスと様々な要素が含まれているが、基本には彼らの年齢(70歳代)が最も直接に洗礼を受けたであろうフリー・ジャズやサイケデリック・ムーブメント、ヒッピー・カルチャーの要素が強い。遠い地平線から響く大地のうねり、草原に降り注ぐ穏やかな太陽の光、命を歌う鈴の音、祈りにも似た声、ピアノの響きは風になり、波になり、時と場所を変えて様々な情景の中に聞くものを旅立たせる。敏夫のピアノは自由奔放に舞い踊るかと思えば、静かに精神の内部に降り立つようでもある。静子のベースはやさしく敏夫の演奏をサポートしていく。エリック・ドルフィーの言葉に「音楽は終わると空中に消えてしまう。もう取り戻すことはできない」というものがあった。録音は残っているが、その時間は永遠に失われてしまい、我々は静子の姿を見ることはできない。しかしこの音楽を聴きながら想像力を鋭敏に研ぎ澄ますことで、失われた時間の残滓を永遠に求め続けることはできる。不可能に挑むとき人は永遠に触れることができるのだと思う。コロナ禍で毎年恒例の月見堂五月祭りも夏至祭も冬至祭も開催はできないが、Heidrun Hidefeind監督による月見堂の記録映画Time is Nowはウィーン、トロント、グラスゴー、モスクワで上映され、ラストアルバムIRO Anima Animusも発売中であることを付記しておく。本アルバムは月見堂で販売されているので興味のある方は私に問い合わせてほしい。

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ケロッピー前田 presents
狂気音楽 a.k.a. クレイジーミュージック探訪 ~ ダダとパンクとキャバレー・ヴォルテール 編

9月7日(月) 阿佐ヶ谷TABASA https://tabasaasagaya.tumblr.com/
19:30 - 22:00
チャージ1000円 ドリンク(キャッシュオン)
出演 ケロッピー前田 ゲスト 持田保

カウンターカルチャーの最先端・身体改造を日本に紹介してきたケロッピー前田が、『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!』の著者・持田保とともに、数々の音源を振り返りながら、クレイジーミュージックのカリスマたちの文化的な背景やカウンターカルチャーとのかかわりを読み解く!!
今回は、1910年代に起こった反芸術運動「ダダ」の活動拠点となった店の名をグループ名としたキャバレー・ヴォルテールに焦点を当てる。
1974年頃、のちにハフラー・トリオの創立メンバーにもなるクリス・ワトソンの自宅には、リチャード・H・カークとスティーブン・マリンダーが集まって、テープレコーダーを使って、実験的な音楽の制作を始めていた。1978年、彼らはキャバレー・ヴォルテール(以下キャブス)として、ラフ・トレードからデビュー。インダストリアル・ミュージックの騎手として名作「ボイス・オブ・アメリカ」(1980)などをリリースするが、翌年クリスは脱退する。その後、バンド形態で積極的にライブもこなし、82年には来日も果たしている。
 いち早くダンスビートを取り入れ、のちのボディミュージックやテクノの先駆者となってきたが、キャプスが特別な存在であり続けるのは、ダダ、ネオダダ、フルクサスなどの芸術運動のエッセンスをパンク/ポストパンクの音楽創作に活かしてきたことにある。
 いま改めて、キャバレー・ヴォルテールの数々の貴重音源を聴きながら、前衛的な芸術運動の系譜と音楽やカルチャーのかかわりを検証する!

FREE ZINE『盤魔殿アマルガム Vol.30』PDF版Download Link

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