AからCまでサイケレコード・コレクションを聴いてきたが、1968年発売のレコードが圧倒的に多いことに気が付いた。1967年6月に開催されたモンタレー・ポップ・フェスティバルにより「サマー・オブ・ラヴ」というヒッピー・ムーヴメントが全米に広がり、時代が最もサイケデリックに傾倒した結果が翌年68年に花開いたのだろう。雨後の竹の子のように次々登場した時代の徒花のようなバンドこそ、筆者が愛するB級サイケなのである。その一方で次の時代「70年代」を予感させる音にも触れていきたい。
●Count Five / Psychotic Reaction (And More)
1966 / Germany reissue 1986: Impact – IMLP 4.00132 J / 1986.10.3 下北沢Flash Disc Ranch ¥1,680
1964年にカリフォルニア州サンホセで結成。メンバーはKenn Ellner (vo,hca), John "Sean" Byrne (vo,g), John "Mouse" Michalski (g), Roy Chaney (b), Craig "Butch" Atkinson (ds)。1966年に全米Top5ヒットさせたPsychotic Reactionはチャートインした初のアシッド・ロック・ナンバーといわれ、テレヴィジョンをはじめ多くのバンドがカヴァーしている。唯一のアルバムにはザ・フーのMy GenerationとOut In The Streetsのカヴァーも収録。ハーモニカとワイルドなビートの典型的ガレージロックだが、ザ・フーのような切迫感ではなく、中産階級のガキの余裕を感じる。この再発盤はシングル曲7曲を追加したコンプリート盤。
THE COUNT FIVE-'PSYCHOTIC REACTION',(1966).wmv
●Crazy Horse / Crazy Horse
1971 / UK reissue 1986 Edsel Records – ED 175 / 1987.6.23 渋谷ディスクポート西武 ¥1,480
ニール・ヤングのバックバンドとして知られる。元々はロサンゼルスのドゥーワップバンドDanny & The Memoriesのメンバーを中心に結成されたサイケデリック・ロックバンドThe Rockets。69年にNeil Young with Crazy Horseとして『Everybody Knows This Is Nowhere』をリリースし、一躍有名になる。メンバーはBilly Talbot (b,vo), Ralph Molina (ds,vo), Danny Whitten (g,vo), Jack Nitzsche key,vo)。本作は71年の単独1stアルバム。ゲストにNils Lofgren (g), Ry Cooder (g)などが参加。カントリーやサザンロックの色濃いアメリカンロックだが、A-3 Looking At All The ThingsのワンコードインプロやA-4 Beggars Dayのコーラスにサイケな香りが漂う。70年代アメリカンロックの幕開けを告げるアルバムである。
Downtown
●Creedence Clearwater Revival / Green River
1969 / Japan: Liberty – LP-8816
1959年にカリフォルニアで結成されたBlue Velvetsを母体に結成、64年Fantasy Recordsと契約、the Golliwogsとしてデビュー。68年クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(CCR)に改名し、ヒットを連発、人気バンドとなる。メンバーはJohn Fogerty (vo,g), Tom Fogerty (g), Stu Cook (b), Doug "Cosmo" Clifford (ds)。3rdアルバムの本作ではアメリカ南部風のシンプルなロックを聴かせる。葉っぱの香り漂うレイドバック感はサイケを継承している時代の音。しかしながらTV出演時のシュールなマネキンは意味不明。72年に解散、ジョン・フォガティはソロで活躍。
Creedence Clearwater Revival "Green River" in Andy Williams Show (1969)
●The Crome Syrcus / Love Cycle
1968 / US: Command – RS 925 SD / 1991.6.14 明大前モダーンミュージック ¥3,800
1966年シアトルにて結成。メンバーはJohn Gaborit (g), Lee Graham (vo,b,fl), Dick Powell (hca,key), Ted Shreffler (key), Rod Pilloud (ds)。サンフランシスコへ移りロック・シーンで活動するとともに演出家Robert Joffreyのバレエ音楽を担当したりもした。何枚かのシングルと1枚のアルバムをリリース。アシッドロック色の強いA面もいいが、B面すべてを使ったThe Love Cyleが画期的。讃美歌、ジャズセッション、サウンドエフェクト 、フリークアウト・ジャムで展開する一大サイケ組曲である。69年以降レコードはリリースはしていないが73年まで活動していたらしい。
https://www.cromesyrcus.com/main
The Crome Syrcus - Crystals (1968)
●Crosby, Stills & Nash / Crosby, Stills & Nash
1969 / Japan reissue 1971: Atlantic – P-8035A
David Crosby (ex-The Byrds), Stephen Stills (ex-Buffalo Springfield), Graham Nash (ex-The Hollies)からなるフォークロックのスーパーバンド。69年のデビュー・アルバム。美しいコーラスのフォークロックが基本だが、テープ逆回転を取り入れたA-5 Pre-Road Downs、ジェファーソン・エアプレインがカヴァーしたB-1 Wooden Shipなどサイケ要素たっぷり。Neil Youngが参加して大ヒットするが、メンバー間のトラブルで何度も解散・再結成を繰り返している。70年のCrosby, Stills, Nash & Young『Déjà Vu』も持っていたはずだが見つからない。売ってしまったのかも。
Crosby, Stills & Nash (Live) - Suite: Judy Blue Eyes
●The Cryan' Shames / A Scratch In The Sky
1967 / US: Columbia – CS 2786 / 1992.1.25 吉祥寺PARCO WAVE ¥1,500
イリノイ州ハインズデールのガレージロックバンドThe Travelersが66年にThe Cryan' Shamesに改名。Columbiaレコードと契約しThe SearchersのSugar & Spiceをカヴァーして全米50ヒットさせた。オリジナル・メンバーはTom "Toad" Doody (vo), Lenny Kerlay (g,b), Denny Conroy (ds), Jim Fairs (g,b,fl), J.C. Hooke (vo,perc), Issac Guillory (g,b,key)。67年の2ndアルバムにはガレージ感覚のソフトロックが満載。ビートルズ風のA-2 The Sailing Ship、バグパイプやサウンドエフェクトを取り入れたA-4 Mr.Unreliable、ガレージサイケB-3 Sunshine Psalmなどが聴きどころ。買ってからモノラル盤だと気づいたが、今聴くとモノならではの厚い音が嬉しい。
http://www.cryanshames.com/
The Cryan Shames THE SAILING SHIP from 1967 Psychedelic Rock
●Cryan Shames / Synthesis
1968 / US: Columbia – CS 9719 / 1988.6.9 神保町TONY ¥1,500
68年の3rdにしてラスト・アルバム。いきなりハードなロックで始まり、バロック風室内楽ポップや凝ったオーケストレーションが施されたストーリー性のあるソフトロックが聴ける。The Shadows Of KnightやH.P.Lovecraftを擁するシカゴのDunwich Productionが制作に関わっているためか、ゴシックな風格を感じさせる曲やプログレッシヴ路線の実験的な曲もあり、バラエティ豊かな作品。それゆえ焦点がぼけてしまった感も無きにしも非ず。バンドは69年に解散するが、90年代に再結成された。
the cryan shames - the painter
●The Cyrkle / Neon
1967 / US: Columbia – CS 9432 / 1996.3.3.New York Green Flea Market $7.00
1961年にペンシルバニア州イーストンの学生バンドとして結成。The Rhondellsというバンド名で活動していたが、65年にビートルズのマネージャーBrian Epsteinに見いだされ、ビートルズの全米ツアーのサポートに抜擢される。The Cyrkleというスペルはジョン・レノンの命名。メンバーはTom Dawes (vo,g,b), Don Dannemann (vo.g), Marty Fried (ds,vo), Michael Losekamp (key,vo)。67年の2ndアルバムはビートルズ、モンキーズ、ミレニアム等に通じる良質なソフトロック。バンド演奏を中心としたシンプルなアレンジがいい。シタール入りのA-1 Don't Cry, No Fears, No Tears Comin' Your Way、Taxman風のA-3 Weight Of Your Wordsなど全曲が聴きどころ。本作の後映画『Minx』のサントラを担当したが、Brian Epsteinの死去の影響で68年に解散。2016年に再結成し現在も活動を続けている。
The Cyrkle - 01 - Don't Cry, No Fears, No Tears Comin' Your Way (by EarpJohn)
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