異端とは正統又は多数派があるからこそ成り立つ概念だ。それぞれの人間がすべて異なる主義・思想・表現を持っていたら異端という言葉は生まれないだろう。当然ながらあなたと私は違う存在である。ひとりひとり他の誰とも違うはずだ。ところが人間は群れを作りたがる生き物だ。群れるためにはみんなと同じでなければならない。その必要性から正統とか多数とかいう概念が生まれ、群れに収まり切れない存在を異端と規定したのである。しかしながら異端の反対は正統(多数)ではない。異端は他の何とも違うのだから、異端それぞれは別の異端であるはずだ。つまり異端の異端は正統(多数)ではなく異端はいつまでたっても異端なのだ(ただし異端=少数でないことは自明の理であろう)。永遠に異端でいることを運命づけられた者たち、自ら望んで異端でいるのではなく、他と違うことをやりたがるから異端にならざるを得ない異端が筆者の愛する異端なのである。時代が大きく変わらざるを得なかった異端の年2020年末に、我が愛しの異端音楽家二組が揃って新作を発表した。方や不定形即興ロックの大ベテラン、方や大阪アートの震源地から生まれたコンテンポラリーミュージックユニット。彼らの新しい作品を聴きこめば、自粛の果てにこれまで経験したことのない密度の高さに達した音楽欲求の奔出と、それをいかに表現し形(作品)にすることが出来るのか、という課題に関する重要なカギが隠されていることが分かるに違いない。
なお、以下に掲載したのはそれぞれの商品発売情報の写しである。各作品の評伝(レビュー)は2021年1月3日更新の「JazzToyo - Jazz and Far Beyond」に掲載予定なので、ご参照いただきたい。
ヒカシュー/なりやまず
HIKASHU/Eternal Echoes
レーベル:MAKIGAMI RECORDS
品番:mkr-0016 JAN:JAN4571266200160
フォーマット:CD
発売日:2020年12月23日
収録時間 55分
エストニアを旅したヒカシューは コロナ禍を越えた世界遺産クラスの
斬新な歌と繊細な即興演奏によって紡がれる
ことさらに面妖な その音楽は いつまでもどこまでも 鳴り止まない
曲目
1 なりやまず 作詩作曲 巻上公一
Eternal Echoes 7:34
2 千羽鶴のダンス 作詩 巻上公一 作曲 巻上公一,坂出雅海
1000 Kurge Dance 5:59
3 モールメイラ(苦い) 作詩作曲 巻上公一
Maul Meira (Bitter) 6:51
4 あらゆる知恵から 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
All the Wisdom 9:43
5 黒いパンの甘さたるや 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
How Sweet It Is, Muhu Pagarid 7:42
6 もいちど会いたい 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
Wish Meeting You Again 9:38
7 どこまでも途中 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
Perpetually on the Way 7:31
ヒカシュー
巻上公一 ヴォーカル,テルミン,コルネット、尺八、口琴
三田超人 ギター,エスニックフルート
坂出雅海 ベース
清水一登 ピアノ、シンセサイザー
佐藤正治 ドラムス
橋本孝之 / チャット・ミー
Takayuki Hashimoto / CHAT ME
レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-117
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)
【Member】
橋本孝之
【Tracks】Total 47:46
01 CHAT ME (Flamenco guitar solo) 21:33
02 CLOUDY BLUE (Alto saxophone solo) 26:13
東京の自宅マンションで独り密かに録音された完全即興演奏の記録。
コロナ時代のホームメイド・ディスカバリー。
2009年コンテンポラリー・ミュージック・ユニット.es(ドットエス:橋本孝之&sara)結成後、2015年元あぶらだこのメンバーからなるkito-mizukumi rouber(キトミズクミロウバー)加入、2016年「グンジョーガクレヨン」新譜への参加、2017年より内田静男とのユニット「UH(ユー)」活動開始、阿部薫へのライナー寄稿等、日本のアバンギャルド音楽界を代表する演奏家となった橋本孝之。
5枚目のソロアルバムとなる本作は、2曲とも、彼の自宅マンションにて録音された完全即興演奏のノーカット音源。前作ソロリリースから3年を経てさらにその活動に注目が高まる中、コロナ時代を象徴するホームメイド・アルバムとして、ますますハードコアな内容となった本作は、大いなる期待を持って受け入れられることが予想される。
【Credits】
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 山田千尋 Chihiro Yamada
Liner notes: ミシェル・アンリッツィ Michel Henritzi
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu
ドットエス(橋本孝之&サラ)+林聡 / アトラス
.es (Takayuki Hashimoto & sara) + Satoshi Hayashi / Atlas
レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-118
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)
【Member】
.es(ドットエス)
橋本孝之 Takayuki Hashimoto - Alto Saxophone, Shakuhachi(With Reed), Harmonica
sara- Piano, Percussion
+
林聡 Satoshi Hayashi - Laptop
【Tracks】Total 40:26
01 Atlas #1 17:13
02 Atlas #2 23:13
アバンギャルドなサウンド・トリップへようこそ!
生楽器による過激でスピリチュアルな即興演奏と脳内妄想風景の融解音楽。
2009年の結成以来、音楽とアートで革命を企てるコンテンポラリー・ミュージック・ユニットとして独自の存在感を放ってきた.es(ドットエス)。
本作は.es結成時からのコンセプトメーカーにして現代アートのディレクター、またオーディオ専門家としての顔をもつ林聡と初めて3名で演奏したライブ音源をベースに、音響作品として構築されたコンセプト・アルバムです。
*ライナーノーツ(茨木千尋)より引用
.es は、しかし、一連のライブ演奏の各回ごとに不可思議な差異化を遂げる稀有なユニットだ。その時周囲に展示されている現代美術作品との「共演」という理念の深まりをも含め、このAltasでは、十年を超える持続の成果をさらに踏み越え、sara と橋本孝之と、二人して、自身の歴史の新たな局面を開示したと言ってよい程に、より鋭く深い即興演奏を展開しているので、その音響は、2020年という、歴史の後退局面の極みにあって混迷も極まる、まさにこの、焦点の定まらない現在時の、地表下に隠された深層の切迫した騒めきを鮮やかに映し取ると同時にそれ自身の内からひとりでに響き返している様にさえ聴き取れるではないか。
【Credits】
Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.7.18
The solo exhibition “Atlas” by Motonori Inagaki
稲垣元則個展 “Atlas” 会場にて
Remixed by Satoshi Hayashi
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 稲垣元則 Motonori Inagaki
Liner notes: 田中ゑれ奈 Erena Tanaka / 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu
ドットエス(橋本孝之&サラ)/ カタストロフの器
.es (Takayuki Hashimoto & sara) / Vessel of Catastrophe
レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-119
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)
【Member】
.es(ドットエス)
Takayuki Hashimoto 橋本孝之 - Alto Saxophone, Harmonica, Guitar
sara - Piano, Percussion
【Tracks】Total 46 : 50
01 Catastrophe #1 21 : 25
02 Catastrophe #2 25 : 25
即興音楽?ノイズ?フリージャズ? サックス、ピアノ、
ハーモニカ、エレキギター…自由な精神で描かれた美しき即興抽象絵画的音像。
2009年の結成以来、音楽とアートで革命を企てるコンテンポラリー・ミュージック・ユニットとして独自の存在感を放ってきた.es(ドットエス)。
本作は2020年9月のライブを臨場感そのままに収録した、最も新しくスリリングな.esの完全ライブ収録盤(ノーカット・無編集)。
*ライナーテキストより引用
世界の不穏が否応なしに日常へと流れ込む今、 ただそれを悲劇や災禍と耐え忍ぶのか?
直視する、受け入れる、そして契機とする態度でありたいー
カタストロフ(突然の大変動, 大きな破綻)は崩壊だけではなく、希望を含んでいる。
2020年9月12日(土)、ギャラリーノマルでの黒宮菜菜個展「カタストロフの器」最終日、
ギャラリーの空間へ.es(ドットエス)が描いた、次なる時代への絵画的音像。
【Credits】
Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.9.12
The solo exhibition “Vessel of Catastrophe” by Nana Kuromiya
黒宮菜菜個展 “カタストロフの器” 会場にて
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 黒宮菜菜 Nana Kuromiya
Text: sara
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu
年の瀬に
類稀なる
異端音楽
HIKASHU/Kajad ei peatu ヒカシュー/なりやまず
.es(ドットエス) 結成10周年記念ライブ “Miracle” 2019/10/13 Gallery Nomart