自宅のリフォーム工事のために1ヶ月間自宅を空けてとある街に仮住まいをしている。1968年竣工、築53年木造2階建ての民家である。造りが昭和のままで子供の頃遊びに行った世田谷の祖母の家を思わせる。夜雨戸を閉めて静かな時を過ごしていると、いつも聴いている地下音楽やノイズやフリーインプロヴィゼーションやパンクやアイドルソングを聴く気分にならない。軽音楽と呼ばれる、ムード音楽やイージーリスニングのレコードを親父の形見の家具調ポータブルステレオで静かに流すのがよく似合う。ポール・モーリアやレーモン・ルフェーブルといった70年代の華美なラブ・サウンドではしっくりこない。50年代のジャズスタンダードやシャンソンに基づいたオーケストラがピッタリだ。古風な美女ジャケットが障子や土壁の色合いに映える。50年前にこの家を建てたご主人は、きっとこんなレコードを蒐集していたのかもしれない。家も喜んでいるに違いない。ちなみに紹介するレコードはマーティン・デニー以外は中古レコード屋の100円コーナーでジャケ買いしたものである。
●デニス・ファーノンと彼のオーケストラ/魅惑の森
Dennis Farnon and His Orchestra / The Enchanted Woods (RCA Victor – LSP-1897 / 1959)
デニス・ファーノン(1923年8月13日– 2019年5月21日)は、カナダの音楽アレンジャー、作曲家、オーケストラ指揮者。トロントの音楽一家に生まれ12歳からトランペットを学ぶ。カナダ陸軍の音楽隊に入りヨーロッパに演奏旅行もする。20代半ばにシカゴに移りジャズクラブで演奏しながら作曲・オーケストレーションを学ぶ。50年代にジョニー・アリディの音楽監督としてハリウッドに移り、RCAレコードとプロデューサー、アレンジャー、レコーディングアーティストとして契約し、数多くのレコードを発表した。アカデミー賞を主催するレコーディング・アカデミーの創立メンバーでもある。
59年の本作は映画やミュージカルのテーマ曲をストリング中心にアレンジしたアルバムで、ジャケットの深い森の中に佇む少女のように、神秘的なオーケストラ・サウンドの森で微睡むような体験ができる。
I Hear a Rhapsody
●ギィ・ルイパルツと彼のオーケストラ/喜びがある!
Guy Luypaerts and his orchestra / Ya D'la Joie! there is joy! the music of Charles Trenet (MGM Records – E3595 / 1957)
ギィ・ルイパルツGuy Luypaerts(1917-2015)はフランスの作曲家・指揮者。40年代からエディット・ピアフやシャルル・トレネといったシャンソン歌手の伴奏を務めるとともに、コール・ポーターやジョージ・ガーシュインなどアメリカの作曲家の作品をフランス流にアレンジしたレコードをリリース。自分のオーケストラを率いて57年にアメリカのMGMレコードからリリースした本作は、シャルル・トレネの楽曲のオーケストラ・アレンジのインストゥルメンタルを収録。アコーディオンを効果的に使ったサウンドはフランスのエスプリ満ちている。
Guy Luypaerts - Chatter Box (1955)
●ヴィルジニー・モルガンとそのリズム・バンド/パリの星空を流れるムード
Virginie Morgan – Sous Le Ciel De Paris (Ducretet Thomson – TOM 5017 / 1959)
ヴィルジニー・モルガン、別名ミゲル・ラモス Miguel Ramos(1910 - 1978)。スペイン生まれの鍵盤オルガン奏者。1936年のスペイン市民戦争勃発時にフランスに駐在しており、そのまま60年代までフランスで活動する。50年代からヴィルジニー・モルガン名義でオルガンのレコードをリリースし人気を博す。60年代にスペインへ戻りミゲル・ラモス名義でオルガン奏者、アレンジャー、作曲家として活躍する。本作はフランスのムード音楽を日本に紹介するシリーズの1枚として59年に日本独自の選曲でリリースされた。シャンソンだけでなく、アメリカやイタリアのポップスも披露し、エレガントかつグルーヴィ―なオルガン・サウンドを楽しめる。
Virginie Morgan, Son Orgue & Ses Rythmes - Coin de Rue
●マーティン・デニー/プリミティヴァ
Martin Denny – Primitiva (Liberty – LST 7023 / 1958)
マーティン・デニー(Martin Denny, 1911年4月10日 - 2005年3月2日)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州生まれのピアニスト、作曲家、ミュージシャン。エキゾチカ(エキゾチック・サウンド)、ラウンジ分野の代表的なアーティストである。若い頃からクラシック・ピアノを学び、第二次世界大戦中は空軍兵士としてフランスとドイツで兵役についた。終戦後、復員兵援助法のもとロサンゼルス音楽学校と南カリフォルニア大学で対位法とピアノを学ぶ。57年のデビュー・アルバム『エキゾチカ Exotica』はムード音楽、ラウンジミュージックの代表作であるだけでなく、スロッビング・グリッスルのジェネシス・P・オリッジにも影響を与えた。4thアルバムの本作では、ヴィヴラフォン、マリンバ、バードコール、日本の琴などエキゾチックな楽器を取り入れ、南国風味を増したサウンドを展開している。
Martin Denny - Primitva - Burma Train
軽音楽
重音楽より
気持ちいい
▼仮住まいの庭がプリミティヴァ!!!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます