2021年も残すところあと10日となった師走に聴く音楽は何だろう。ロックやパンクやフリージャズやミュージック・コンクレートでも何でもいいのだが、筆者の心の半分はタンゴ熱に浮されているようだ。毎年必ず通っていた中古レコード店の年末セールには目もくれず、Hard-Offのジャンク・コーナーで埃塗れになりながら、自分の生まれる前に発売されたタンゴのレコードを掘り起こす師走の週末は、思いのほか暖かい気候と相まって、例年になく心が落ち着く思いがする。さて一昨日のハドフ巡りでゲットした麗しのタンゴ10インチ盤を聴きながら、ミニアコーディオンで即興演奏と洒落込もう。
●フランシスコ・カナロとオルケスタ・ティピカ&オスヴァルド・プグリエーセとオルケスタ・ティピカ
『カナロ対プグリエーセ名演ヒット集 Grandes Exitos de F.Canaro y O.Pigliese』(Angel Records 東京芝浦電気 OW-1059 / 発売年表記ナシ)
1888年生まれで「タンゴの王」と呼ばれたフランシスコ・カナロ(Francisco Canaro)と、1905年生まれで“ジュンバ”と呼ばれる激しいスタッカートを活かした演奏で知られるオスヴァルド・プグリエーセ(Osvaldo Pugliese)というアルゼンチン・タンゴの2大巨匠のカップリング10インチ。発売元は東京芝浦電気株式会社となっているから、1960年にレコード会社 東芝音楽工業が創業する以前に発売されたものと思われる。1930~40年代のカナロの音源はSP盤用の録音と思われ、低域が弱い鄙びた蓄音機サウンドはたまらなく大正浪漫を感じる。それに比べて50年代の録音のプグリエーセはサウンドも演奏もモダンで「The New Shape of Tango to Come(タンゴ来るべきもの )」と呼びたくなる。「Nuevo Tango=新しいタンゴ」を生んだアストル・ピアソラがプグリエーセを高く評価しているという話も頷ける。
ORQUESTA FRANCISCO CANARO poema
Osvaldo Pugliese Buen amigo
●藤原嵐子、菅原 洋一、国井 敏成/早川真平とオルケスタ・ティピカ東京
『ARGENTINA TANGO ラ・クンパルシータ』(日本エンゼルレコード C-19 / 1962.9.25)
1960年1月に発足したソノシート・レーベル、日本エンゼルレコード株式会社がリリースしたエンゼル・ブックスはソノシートとレコードの中間くらいの厚さの“フィルム・レコード”が特徴。特に10インチ(25センチ)のシリーズは高級感のあるコーティング・ブックレットで解説も充実している。そのシリーズのこのアルゼンチン・タンゴ10インチは、戦後まもない1947年に結成された日本のタンゴ楽団の草分けの早川真平とオルケストラ・ティピカ東京、1953年のアルゼンチン公演が大評判になったという「タンゴの女王」藤原嵐子、オルケストラ・ティピカ東京専属歌手として1958年にデビューしたばかりの菅原洋一、さらにアストル・ピアソラと並び称されるアルゼンチンのバンドネオンの名手フェルナンド・テルがゲスト参加した、超豪華なタンゴ・アルバム。収録曲は「ラ・クンパルシータ」をはじめアルゼンチン・タンゴの名曲ばかり。入門編であるとともに当時の日本のタンゴの水準の高さを証明する1枚でもある。
情熱(パシオナル)
タンゴとは
いのち湧き出る
こころの歌
解説の「~であります」口調が美しい日本語って感じ。
参考⇒【魅惑の軽音楽 その2】哀愁のタンゴ10インチLP~原孝太郎と東京六重奏団/ダイアモンド・エコーズ
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