最近Hard-Offのジャンク沼から救い上げたタンゴの10インチLPを愛聴している。どちらも1960年代初頭に発売されたものだが、方や『追憶のタンゴ』方や『夢のタンゴ~想い出はタンゴとともに』というタイトルで、タンゴを懐メロとして扱っている。日本の第一次タンゴ・ブームは昭和初期にさかのぼる。ラジオ放送の開始により海外のタンゴが人気となり、昭和4年には東京・赤坂にタンゴのダンスホールが開店、やがてダンスホールブームが到来。戦前には全国の主要都市に50を超えるダンスホールがあったという。ダンス文化は第二次世界大戦で中断するが、戦後統制が解かれると国内のタンゴ楽団が次々生まれ、その人気は1950年代半ばにピークに達した。しかし60年代に入りエルヴィス・プレスリーやビートルズなどロックンロールの台頭によりタンゴ低迷期が訪れる。その頃にはタンゴは「昔懐かしい過去の音楽」の烙印を押されてしまったようである。そんなタンゴ不遇時代の哀愁が滲み出るこの2枚の素晴らしさを堪能している。
●原孝太郎と東京六重奏団『追憶のタンゴ』(キングレコード LKF-1293 / 1962)
1944年に結成され50年代に銀巴里で活動、日本一のコンチネンタル・タンゴ楽団と称された名門バンド。ヴァイオリンやヴィオラといったストリングスを中心とした演奏は華やかで艶やか。青春の夢路にかかる追憶の虹に似た美しいタンゴを聴かせる。
水色のワルツ 原孝太郎と東京六重奏団
●ダイアモンド・エコーズ『夢のタンゴ~想い出はタンゴとともに』(日本コロムビア ZL-1147 / 1960.12)
スチール・ギター:ポス宮崎、ハモンド・オルガン:道志郎を中心にギター、ベース、ウクレレからなる特別編成のバンド。ハワイアン・タンゴとでも呼べそうな南国風味たっぷりのラテンメロディがスウィートでエキゾチック。懐かしい海の潮の香のように、想い出はあとからあとから湧き出てくる。
ダイアモンド・エコーズの音源はYouTubeに見つからないので、同じくスチール・ギターを取り入れたタンゴ楽団ワイラナ・シャック・グラス・ボーイズの演奏を。邦題は「ジプシーの嘆き」。
WAILANA GRASS SHACK BOYS - LAMENTO GITANO (Grever)
タンゴとは
想い出湧き出る
泉の音
これらのレコードを聴きながら、筆者のこれまでの音楽体験に「タンゴ」が重要な役割を果たしてきたことに気が付いた。そんな個人的なタンゴ体験については別の機会に記してみたい。
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