『NYの尖鋭・吉田ののこ / 色彩の舞踏・航×Praha』
~ニューヨークの尖鋭をゆくサックスプレーヤー吉田ののこSoloの世界。透き通る風に彩を感じさせるベリーダンサーPrahaとピアニスト航の世界。土曜の昼に開催です、是非お越しください~
<出演>
1st 吉田ののこ(Sax)Solo
2nd 航(pf)×Praha(bellydance)
(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
NYで活動するサックス奏者吉田野乃子の短期来日ツアーの東京公演が学芸大学APIA40で開催された。APIAは2000年代半ばまで渋谷にあったライヴハウスで、灰野敬二を観に何度か行ったことがある。エキゾチックな内装が渋谷と云うより中央線っぽく、落ち着いた雰囲気の椅子席で気に入っていたのだが、いつしか足が遠のき、都市開発で移転したと噂に聞いた。学芸大学駅から徒歩10分の住宅街にあるAPIA40は、かつての秘境的な雰囲気は薄れ、学生街のお洒落な小劇場といった趣き。入場時に配布されたフライヤーには遠藤ミチロウ、三上寛、友川カズキの名がある。今公演は出演者が全員女子であるためか、客席には女性客が多い。
●吉田ののこ
昨年の「Jazz Artせんがわ」でペットボトル人間を初めて観て以来、吉田の演奏を観るのは2回目。せんがわではステージを後列から遠目に観るだけだったが、被り付きで観る吉田の姿は、小柄で真面目そうで、ジョン・ゾーン直伝の変態プレイとのギャップがある。1年前から取り組んでいるソロ演奏は、ループマシンを使って、ステージ上で自らの音を幾重にも重ねて、重厚なアンサンブルを創出する。フランク・ザッパ言うところのロウ・バジェット・オーケストラ(低予算管弦楽団)の中で突然キュリキュリギョギョギョというフラジオが炸裂するのだから気持ちいい。NYの地下鉄線に因んだ「Take The F Train」、生まれ故郷の北海道弁から名付けた「Urukasu」、妹の結婚式(今回の来日の目的)を祝う「TAKA 14」など、日々の生活をテーマにした楽曲を解説するMCも楽しい。極端音楽でありながら、人懐っこい作風は、吉田のほんわかした人間性の現れに違いない。
⇒JazzTokyo連載『よしだののこのNY日誌』
●航×Praha
航 KOHこと大寺航の名前は知っていたが、演奏を聴くのは初めて。名前のイメージで端正なジャズ・ピアノを想像していたら、ポエティックな弾語りが始まったので軽く驚く。包容力のあるやわらかいタッチのピアノと、ユーモラスな歌詞の表情豊かなヴォーカル。”まぜこぜ・チャンプルー音楽 ピアノ弾き語り”と称する航 KOHは最新アルバムをニューヨークで録音し、その時に吉田野乃子と知り合ったという。ダンサーのPrahaの名に聞き覚えがあるな、と思っていたが、セクシーな衣装で大胆に踊る姿を見て思い出した。2013年のJazz Artせんがわで、KILLER-OMA(鈴木勲×KILLER-BONG)のステージに飛入りして踊っていたのが彼女だった。調べてみると渋さ知らズやヒカシューなどとも共演している。世の中は狭いものだ、と感慨にふける暇も無く、躍動的なピアノに乗せた奔放なベリーダンスに圧倒される。音楽による聴覚の快感が、魅惑的なダンスの視覚刺激で別次元へ拡張される。色彩に溢れたステージだった。
⇒航 KOH公式サイト
⇒Praha公式サイト
本編最後とアンコールは三者の共演。「音楽vs舞踏」が、「音楽vs音楽vs舞踏」の三極化することで、刺激の組み合わせが九倍に増大し、どの角度・どの次元から観ても歓びしかない至福空間が創出された。音だけ聴けば吉田と航はキレキレのアヴァンプレイを繰り広げるが、Prahaが艶やかな舞で客席に降臨した時には、情熱的なロマンティシズムを醸し出す効果を発揮した。終演後の笑顔に真昼の交歓の満足感が溢れていた。
前衛と
諧謔と妖艶の
カーニバル
▼このユルさが魅力のひとつ~吉田野乃子サックスソロ~デモCD
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