A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【地下ジャズDisc Review】ESPの眠れる猛虎が息を吹き返す~Tiger Hatchery タイガー・ハッチェリー/ Breathing in the Walls 壁の呼吸

2020年08月13日 02時01分27秒 | 素晴らしき変態音楽


Tiger Hatchery:
Mike Forbes, saxophones
Andrew Scott Young, basses
Ben Billington, drums

1. Exoskeletal
2. Not Chill
3. Drawing Down the Moon
4. Breathing in the Walls Pt. I
5. Pothole Pleasure
6. Scorch the Earth
7. Triple Penny
8. Don't Tell Your Doctor
9. Breathing in the Walls Pt. II

”養虎場”が継承するESPパワー・ジャズ。
60年代後半~70年初頭の激動の時代にESPディスクが世に送り出したアルバート・アイラー、マリオン・ブラウン、ファラオ・サンダース、ジュゼッピ・ローガン、ガトー・バルビエリ、チャールズ・タイラー、バイロン・アレン、フランク・ロウといったフリージャズのサックス/リード奏者のレコーディング作品を言い表すとすれば「パワー・ジャズ」または「ハードコア・ジャズ」という言葉が適切だと思う。ESP特有の荒々しいモノクロ・ポートレートやアクションペインティング風ドローイングを全面に配し、ゴシック体のタイプ打ちのレタリングが刻まれたレコード・ジャケットは、同時代、いや後世まで含めて他のレコード会社には太刀打ちできない”ナマの音楽”の感触を視覚化したドキュメントに他ならない。そして録音スタジオ(またはコンサート会場)のレベルオーヴァー気味の熱気をそのまま録音テープに写し録り、電気加工ほとんどなしで塩化ビニールディスクに刻み込まれた音楽は、度重なる再発に摩耗しながらも、半世紀以上経っても「現場」の空気を色濃く伝えている。

Breathing in the Walls, Pt. 1


「ESPディスクのフリージャズの伝統を誇りをもって受け継ぐシカゴのパワー・ジャズ・トリオ」と紹介されるタイガー・ハッチェリーは、正真正銘ESP特有の熱気に満ちた空気を内包したインプロヴァイズド・ミュージックを体現する演奏体である。マイク・フォーブスのテナーサックスが割れるほどの爆音を発し、ベン・ビリントンのアグレッシヴなドラムが雷鳴で攻撃する。アンドリュー・スコット・ヤングのディストーション・ベースは、重低音でトリオの土台を固める端から大地震で地割れをもたらす。ノイズ・ジャズという陣地があったなら、この「虎の孵化場=Tiger Hatchery」こそ最右翼に陣取るべきだろう。しかしそれは雑音としてのノイズではない。アルバート・アイラーが黒人聖歌隊の最高潮の歌声に我慢できなくなって精神解放の雄たけびを上げたように、自己表現の歓びを三者三様の魂が軋む音として重なり合う摩擦音を凝縮し結晶化した録音作品として残されたのである。

Exoskeletal


オハイオ州クリーヴランド出身のベン・ビリントンは2004年秋にシカゴのデポール大学に進学。シカゴでノイズ・ロックに目覚め、ドラム/ギター/エレクトロニクスのトリオDruids of Hugeを結成し、2006年から積極的にライヴ活動を行う。一方マイク・フォーブスとアンドリュー・スコット・ヤングはテキサス州デントンで出会う。バンド・メンバーを探していたフォーブスが、キャンパス内のジャズ・バーで演奏していたヤングを発見し、「アルバート・アイラーを知っているか?」と質問をしたのである。この一言が人生を変える魔法の言葉となり、2人は意気投合、共に音楽の道を歩き始める。難解なジャズやノイズへの情熱は、テキサスの田舎町では収まり切れず、2007年に二人は南部を脱出してシカゴへ向かうこととなった。シカゴではフリージャズやインプロよりも、ノイズ/パンク/ロック・シーンに可能性を見出した。必然的にDruids of Hugeで活動するベン・ビリントンと出会うこととなり、最初はジャム・セッションから始まり、すぐにビリントンの「フリー・ロック」とフォーブス&ヤングの「フリー・インプロヴィゼーション」が共感しあってタイガー・ハッチェリーとして活動を始めた。彼らが中心となってシカゴ近郊の巨大な倉庫を使ってアンダーグラウンド・ミュージックとアートのイベントを開催するようになった。その成果で地元のレーベルから作品をリリースし始めた。

2013年にESPディスクと契約、スタジオ録音作品『Sun Worship』をリリース。インディシーンで高い評価を得る。2015年には伝説的サックス・プレイヤーPaul Flahertyとコラボ・アルバムをリリース。そして2017年にリリースされた現時点での最新作が『Breathing In The Walls』。直訳すると「壁の中で呼吸をする」という意味。全9曲で30分強。短い曲が中心だが、その分込められたパワーをダイレクトに伝える意欲作である。勿論ただ我武者羅に走るのではなく、聴き手に考える余地を与えるストイックな寡黙さが漂うトリオの空気は、演奏の饒舌さとバランスを取るための黄金比率から導き出したかのような、表現行為の深層意識に満ちている。波乱の海の底の深海の静けさを湛える慎ましやかな美を強く感じる。

Tiger Hatchery with Paul Flaherty Live in New Haven, CT


本作以降あまり活動の記録がないが、解散することなくESP精神を伝えて行ってほしいと願っている。

自由人
自由生活
ご自由に

Tiger Hatchery @ ESP-Disk' 50th Anniversary Party - Part 1



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【地下音楽への招待】妄想コンピ『Tokyo Flashback 2020』収録音源#1~UH/分水嶺/脳BRAIN/Kito-Mizukumi Rouber/riparisa

2020年08月11日 01時17分44秒 | 素晴らしき変態音楽


当たり前だが音楽を紹介するのにコロナ禍を持ち出す必要はない。Covid-19があろうとなかろうと音楽は存在しているし、音楽表現の本質が変化するわけでもない。話をするのに前置きとして「コロナ禍」「Covid-19」を持ち出す世の中の風潮に音楽(および音楽語り)が同調する必要はない。とかいいつつすでに4回も禁止ワードを書き連ねる自分にイエローカードを出しつつ、もしモダーンミュージックの生悦住英夫氏が健在だったらリリースされたはずの『Tokyo Flashback 2020』に必ず収録されたであろう最新地下音楽音源を紹介することにしよう。

●UH / MORGANA


内田静男(b)、橋本孝之(sax)のデュオ「UH」の最新カセット・リリース。2020年2月8日国分寺モルガーナでのライヴ録音。この日はハードコア系のイベントで、静謐なベースとサックスのデュオにとってはかなりアウェーな環境だったという。それが影響してか、いつもは微弱音の静寂でスタートすることが多いが、この日は冒頭から絡み合う激音で始まる。すぐに静謐な演奏に変わるが、節目節目で爆発する過剰な音の放出は、カセット特有のダイナミクスの狭い団子状のサウンドも相まって、荒々しい気迫に満ちた音響を聴き手の脳内に送り込む。最初の方は観客の笑いや囁き声で騒めいていた会場が、ライヴが進むにつれ静まり返り、緊張感に満ちた空気に変化するのが分かる。2017年1月にユニットとして活動をスタートしてから3年、お互いの手の内も知り尽くしコラボレーションとして円熟味を増す彼らの動的な一面を明らかにする作品をカセットテープというニッチなメディアでリリースすることは、次のステップへの起爆剤となるだろう。UHがどんな世界を模索していくのか楽しみである。
購入⇒http://www.neconeco-rec.com/shop/html/products/detail/128


●分水嶺 / ファーストギグ 08112019at七針


宮岡永樹(Yonju Miyaoka)Gt.Vo.、桜井晴紀Vo.Pf.、田上杜夫Ba.からなるサイケデリック・フォークロック・バンド分水嶺が、ちょうど1年前の2019年8日11日八丁堀のライヴスペース七針で、Che-Shizuのフロントアクトとして出演した際のライヴ・アルバム。ドラムレスでピアノをメインにした不安定な演奏に輪郭がぼやけた儚いヴォーカルが乗るサウンドには、メインアクトのChe-Shizuや宮岡が以前参加していたマヘル・シャラル・ハシュ・バズの流れをくむ、逸脱サイケデリアの精神がある。時々聴ける千鳥足のギターソロは、真似しようとしてもできない工藤冬里のギターと同じイノセンスを感じる。後半に収録されたフィールドレコーディングとリミックス・ヴァージョンは、地下音楽のアンビエント化の好例として評価したい。個性的なアート作品も手掛ける宮岡のもうひとつのユニット終古のオミットのアルバムも年末にリリースされるというので楽しみだ。
購入⇒https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008129962


●脳BRAIN / SEX!


KAYO MAKINOとともにLos Kayosというユニットを組むtoplessdeath A.K.A 脳BRAINによるMIX CDR。昨年リリースしたDVDR『Surfin' L.S.D』が第1回【輝く、盤魔殿レコード大賞!!!】に選ばれたことで広く(?)存在が知られるようになった脳BRAINは、DJ ACID A MANNER名義の12インチ『XPERIENCE TRAXXX』や、自らのアパレルラインL.S.D L.T.DからTシャツを発売するなど、Los Apson?周辺の地下音楽界で精力的に活動する。 昭和歌謡からハードコア、アシッドハウス、レゲエ、ディスコ、民俗音楽など雑多なサウンドをミックスしたスカムなサウンド・コラージュは、クラブカルチャーの突然変異なのか、それともダンス・ミュージックの最進化形なのか。先日初めて脳BRAINのDJをナマで体験したが、レコード盤を次々投げ捨てながらスピンするスタイルは自分には真似できないと思考放棄するとともに、神髄にはダンス・ミュージックがあるように感じた。
購入⇒http://losapson.shop-pro.jp/?pid=151465960


●Kito-Mizukumi Rouber / Pudding Body Murder- Domdom Early Finish Burger GIG


ハードコアパンク・バンドあぶらだこの長谷川裕倫(vo,g)と大國正人(vo,g)を中心とするKito-Mizukumi Rouberのライヴ・アルバム。新大久保Earthdomへの支援も兼ねたリリース。公式サイトには「kito-mizukumi rouberが新大久保アースダムで73年前に行ったダンスショウの秘蔵音源が発掘された。メキシコのSAMURAI ROCKET RECORDSのオーナーの飼い猫によるMIXによって、ハイハイハイロウロウクオリティに磨き上げられた放屁ダンス曲集」と書かれているが、10年以上前の初期メンバーによるライヴ録音だろう。ハードコアのスタイルを破壊し逸脱しようとする意志を強く感じるローファイサウンドは、現在の箍が外れ切ったロックロールよりも、プリミティヴなカオスに満ちている。音だけでは何が起こっているかわからない謎の空気感こそ地下音楽の記録として純度が高い。
購入⇒http://bridge-inc.net/?pid=151931203


●risaripa / Parallel


女性シンセ奏者、risaripa (a.k.a. Risa Reaper) の最新アルバム。数年前Soundcloudで「発見」し、80年代初期の宅録音源、例えば大竹伸郎の19 JUKEや、Vanity Recordsや第五列の諸作を思わせるサウンドに興味を覚えたが、特に深く調べることなく放置していたアーティストだが、本日DD.Redords関係者のツイートでこのアルバムのことを知り、Bandcampで聴いてみたところ余りに素晴らしかったので即購入。本人曰く「ボクがかんがえたさいきょうのストレンジポップをモジュラーシンセと声ノイズで」制作したという。モジュラーシンセは面白いと思うが、多くの音を使い過ぎて複雑にしすぎたり、ノイズ・ミュージックにしてしまう傾向が多く不満を持っていたのだが、risaripaのリズム主体のシンプルな使い方こそまさに自分が聴きたかったモジュラーシンセ。言語不明の奇妙なヴォイスがテクノ感を増幅し、言葉通りの「最強の地下テクノポップ」になっている。昨年から再発が始まったVanity Recordsの諸作と同じように、時代に関係なく存在する地下音楽の原点と言える作風は、聴き続け語り続けてていきたい。
購入⇒https://risaripa.bandcamp.com/album/parallel

天国まで
伝えていくよ
地下音楽

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【私のB級サイケ完全コレクション#14】メジャーマイナー混然一体のC~Chicago/Chocolate Watch Band/Circus Maximus/The City

2020年08月08日 01時40分16秒 | 素晴らしき変態音楽


便宜上「B級サイケ」と呼んでいるが、基本的には60年代の社会状況の中から登場したムーヴメント映す鏡として、この時代のロック全般への興味は尽きることがない。路線を変更して大ヒットを飛ばしたバンドや、ソロに転向して成功を収めたアーティストもいれば、短期間で解散した後音楽シーンの第一線に戻らないまま消えていったミュージシャンもいる。そのすべてがこの時代にしかなしえない「輝き」を放った証拠としてのレコードには、時代を超えたパワーが漲っている。一枚一枚聴くことで、人間の表現力の無限の可能性に触れることが出来るのである。

●Chicago Transit Authority / Chicago Transit Authority

1969 / JP reissue 1977: CBS/Sony ‎– 25AP 614-5 / 1986.5.18 渋谷Disk Union 2 ¥1,200

1967年にシカゴで結成。はじめはThe Big Thingを名乗っていたが、68年にChicago Transit Authority(シカゴ交通局)に変えた。メンバーはTerry Kath (g,vo), Robert Lamm (key,vo), Peter Cetera (b,vo), Walter Parazaider (sax), Lee Loughnane (tp), James Pankow (tb), Danny Seraphine (ds)。ホーンを取り入れたブラス・ロックの代表格。70年代後半からAOR路線でヒットを連発するシカゴだが、デビュー当時は政治的な歌と変拍子を取り入れたシンフォニックなサウンドで、西海岸のプログレッシヴなロック・シーンを象徴する存在だった。スリリングなラテンロックC-3 I'm A Manや暴動事件のシュプレヒコールを取り入れたD-2 Someday (August 29,1968)もいいが、なんといってもC-1 Free Form Guitarはロックにおける世界最初のノイズギターソロと言えるかもしれない。

Listen (2002 Remaster)



●The Chocolate Watch Band ‎/ Forty Four

1984 / UK comp: Big Beat Records ‎– WIKA 25 / 1986.12.19 吉祥寺レコファン ¥1,150 

1965年カリフォルニア州サンホセで結成されたガレージ・バンド。ストーンズやヤードバーズなどブリティッシュ・ビートに影響を受けたR&B~サイケサウンドは文句なしにカッコよく、The Standels、The Seeds, 13th Floor Elevatorsなどと並ぶ、アメリカン・ガレージ・サイケの代表格である。初期メンバーは、David Aguilar (vo), Gary Andrijasevich (ds), Bill Flores (b), Mark Loomis (g), Sean Tolby (g)。彼ら名義の3枚のアルバムにはメンバーとは無関係のスタジオ・ミュージシャンによる楽曲が多数収録されている。それゆえ、メンバーによる演奏をまとめたベスト盤が重宝する。80年代以降様々なレーベルからベスト盤が出ているが、これはイギリス編集のベスト盤。見開きジャケットの内側に写真や詳細なバイオが掲載されていて嬉しい。

The Chocolate Watch Band "Don't Need Your Lovin'"



●The Chocolate Watch Band / The Inner Mystique

1968 / Australia reissue 1981: Raven Records ‎– RVLP-1001 / 1985.11.18 お茶の水Second Hands ¥1,000

彼らの2ndアルバム。『内面の神秘』というアルバム・タイトルに相応しく、シタール、フルート、コーラス、ホーン・セクションによる疑似インド音楽A-1 Voyage of the TriesteをはじめとするA面にはメンバーは全く参加していない。ガレージ・ロック・ナンバー中心のB面も2曲でヴォ―カルが差し替えられているという。厳密にはチョコレート・ウォッチ・バンドの本当の作品ではないかもしれないが、インド風味の濃い内容は、60年代サイケの目指した世界を描き出した傑作と言えるのではないだろうか。アシッド・トリップの先にあるはずの風景が垣間見える。

The Chocolate Watchband - 01 - Voyage of the trieste



●Circus Maximus / Circus Maximus

1967 / US: Vanguard ‎– VSD-79260 / 1986.1.24 下北沢 ¥1,800

1967年ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで結成されたフォークロックバンド。元はLost Sea Dreamersを名乗っていたが、イニシャルのL.S.D.がドラッグを想像させるとしてレコード会社から変更を求められサーカス・マクシマスに変えた。メンバーは、Jerry Jeff Walker (g,vo), Bob Bruno (g, key,vo), David Scherstrom (ds), Gary White (b), Peter Troutner (vo, tambourine)。67年の1stアルバムは、The Byrds『5th Dimension』に影響を受けたフォークロックだが、もっとワイルドなガレージ風味が魅力。狂ったように掻き毟りギターソロが暴走するA-1 Travelin' Aroundに度肝を抜かれる。B-4 Short-Haired Fatherもガレージフォーク。ジャズっぽいアシッドフォークB-5 Windがラジオ・ヒットした。

Circus Maximus - Travellin' Around



●Circus Maximus / Neverland Revisited

1968 / US: Vanguard ‎– VSD-79274 / 1991.6.21 下北沢Flash Disc Ranch ¥2,480

68年の2ndアルバムも同じ路線だが、ボブ・ブルーノのサイケ/ジャズ志向とジェリー・ジェフ・ウォーカーのフォーク志向が対立するようになった。A-1 Hello Baby、A-2 How's Your Sky, Straight Guy Spyといったガレージっぽいブルーノの曲のほうが筆者はお気に入り。両者の志向の違いが原因で68年夏に解散。ウォーカーはソロに転向しカントリー・シンガーとして成功を収める。ブルーノはジャズ・ミュージシャンとして活動し、フリージャズのサック奏者Noah Howard『Live At The Village Vanguard』(75)にピアニストとして参加した。ベースのゲイリー・ホワイトはリンダ・ロンシュタットのバックで活動。あまり高い評価をされていないが、1stアルバムは筆者のB級サイケ・ベスト10に入る名作だと思う。

Circus Maximus - Hello Baby



●The City ‎/ Now That Everything's Been Said

1968 / US: Ode Records – Z12 44 012 / 1991.6.21 下北沢Flash Disc Ranch ¥1,480

Carole King (vo,p) , Charles Larkey (b), Danny Kortchmar (g,vo)からなるフォーク・トリオ。ドラムにJim Gordonが参加。キャロル・キングのソロ・デビュー前のユニットとして高い人気を誇るが、個人的にはダニー・コーチマーとチャールズ・ラーキーがThe Fugsのバンド・メンバーだったことの方が嬉しい。「60年代フォーク・ムーヴメント」と次のフェーズである「シンガーソングライター」時代を繋ぐ作品であり、サイケではないが良質なアメリカン・ミュージックが聴ける好盤である。キャロル・キングのソロB-2 Ladyがいい。今回調べていて、このモノクロ・ジャケットは廃盤で入手が難しかったころに出回った海賊盤であることを知った。

The City - Snow Queen



●Clear Light / Black Roses

1967 / UK reissue 1987: Edsel Records ‎– ED 245 / 1988.3.26 渋谷Tower Records ¥1,590

1966年ロサンゼルスでThe Brain Tranとして結成。LSDに関連したClear Lightに名前を変えてエレクトラと契約し唯一のアルバムをリリース。メンバーはCliff De Young (vo), Bob Seal (g,vo), Douglas Lubahn (b), Ralph Schuckett (key), Dallas Taylor (ds), Michael Ney (ds)。ツイン・ドラムとファズギターとグルーヴ・オルガンが最高。特にA面は全曲捨て曲なし。Quicksilver Messenger ServiceやGrateful Dead、Country Joe & The FIshなどシスコ・サイケに負けない最強のウェストコースト・サイケだと思うが、個性的なリーダーがいなかったためアルバム一枚で消えたのが残念。解散間際にThe City結成前のDanny Kortchmarが参加したというのも何かの縁。
http://brunoceriotti.weebly.com/clear-light.html#

CLEAR LIGHT - BLACK ROSES



●The Clique / The Clique

1969 / US: White Whale ‎– WW7126 / 1991.6.5 新宿Disk Union ¥2,390

60年代半ばテキサス州ヒューストンで結成されたサンシャインポップ・バンド。バンド名はthe Roustabouts~the Sandpipersと変遷して67年にザ・クリークとなる。テキサスで何枚かのシングルをリリース後、西海岸へ移りWhite Whaleから唯一のアルバムをリリース。メンバーはRandy Shaw (vo), Tommy Pena (b), Sid Templeton (g,vo), Jerry Cope (ds), Oscar Houchins (key, vo). David Dunham (sax,vo)。 上品なソフトロックになっていて、テキサス時代のアシッド色は消えている。A-4 Hallelujahが印象的。B-3 Supermanは86年にR.E.M.がカヴァーした。

The Clique - Superman



●Cleanliness And Godliness Skiffle Band ‎/ Greatest Hits

1968 / US: Vanguard ‎– VSD 79285 / 1985.11.8 お茶の水Disk Union ¥1,900

1964,5年にサンフランシスコで活動していた大所帯のグループInstant Action Jug Bandのメンバーを中心に66年末に結成されたジャグ・バンド。メンバーは、Annie Johnston (g,mandolin,vo), Hank Bradley (fiddle,mandolin,hca,vo), Phil Marsh (v,g), Brian Voorhees (hca,g,vo), Richard Sauders (b)。アコースティックな楽器編成で歌い騒ぐ陽気なサウンド。爆竹を鳴らしてどんちゃん騒ぎのA-4 Chinese New Year Waltz、俺たちはサイケデリック・ヒッピーと宣言するA-6 Altitudinous Youthful Deviant Number 468 (Do It Up)といった能天気なナンバーに交じって、しっとりしたジャズ・バラードA-5 Lotus Blossom、フルートが美しいB-3 Carol's Songがあるので飽きが来ない。これ一作で終わってしまったかに見えたが。。。

Lotus Blossom



●The Masked Marauders / The Masked Marauders

1969 / US: Deity ‎– RS 6378 / 1993.11.10 Seattle $12.00

ボブ・ディラン、ミック・ジャガー、ジョージ・ハリスン、ジョン・レノン、ポール・マッカートニーなど大物ミュージシャンが匿名でレコーデングしたという噂で物議を醸した企画アルバム。確かにそれらしいヴォーカルや曲調だが、よく聴けば偽物だと分かる。レコーディングに参加したのはクリアリネス&ゴッドリネス・スキッフル・バンドだと言われている。自己の作品とはまったく異なる電気的なロック・サウンドだが、悪ノリしすぎの物真似ブリや、ふざけまくってやりすぎの演奏には、サイケデリック・ヒッピーの信念が宿っている。

I cant get no nookie -The Masked Marauders

【私のB級サイケ蒐集癖】第22夜:デマと愛情〜清潔で神々しい仮面の略奪者『クリーンリネス&ゴッドリネス・スキッフル・バンド』『マスクト・マローダーズ』

様々な
形があるよ
B級サイケ

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【私のB級サイケ完全コレクション#13】ドリームサイケのC~Ceyleib People/Chamaeleon Church/The Charlatans/The Children etc.

2020年08月06日 00時13分00秒 | 素晴らしき変態音楽


覚醒的なファズギターもいいが、甘くとろけるようなドリームポップの魅惑にはかなわない。Cのバンドには知名度は低いが陶酔感では他に負けないドリームサイケが多数ある。短命に終わったバンドが数多いが、彼らが奏でる天上のメロディは、半世紀すぎた現在でも筆者の心を夢の世界にいざなうのである。

●The Ceyleib People ‎/ Tanyet

1968 / US: Vault ‎– SLP 117 / 1994.8.15 New York Revolver $50.00

セッション・ギタリストMike Deasyを中心にロサンゼルスで制作されたコンセプト・アルバム。シタール、タブラ、タンブーラ等を多用した疑似インド音楽インストを聴かせる。ライ・クーダーがRy Cooterとして参加していることで有名。他にもJim Gordon (ds)やJim Horn (sax)といったセッション・ミュージシャンが参加している。インド神話に基づいたストーリーのあるコンセプト・アルバムだが、AB面併せて21分という短いアルバムなので、90年代にCD化された時は同じ内容が2回繰り返して収録されていた。B面最後Menyatt Dyl Comのシタール+トランペットの高揚感に満ちたフリークアウトで昇天する。

The Ceyleib People - Tanyet (1967) Part 3



●Chamaeleon Church ‎/ Chamaeleon Church

1968 / US: MGM Records ‎– SE-4574 / 1994.11.29 Boston Nuggets $10.00

1967年ボストンで元The Lostのメンバーが結成したサイケデリックバンド。メンバーはTed Myers (g, vo), Tony Scheuren (g, b, key, vo), Kyle Garrahan (b, g, p vo), Chevy Chase (ds, p, org, vo)。"Bosstown Sound"のひとつとして売り出された。当時ニューヨークで唯一8トラック・レコーディングが可能だった録音された。凝ったアレンジの室内楽ロックにドリーミーなコーラスが乗った極上のソフトサイケ。どの曲も素晴らしいが、シタール入りのB-6 Off With The Oldが特に好き。アルバム・リリース後解散し、MyersとScheurenは同じボストンのUltimate Spinachに参加。Chevy Chaseはコメディアン、俳優として現在も活躍中。

Chamaeleon Church - Blueberry Pie



●The Charlatans / The Charlatans

1968 / France reissue 1983 Eva ‎– 12004 / 1968.7.1 吉祥寺レコファン ¥950

1964年サンフランシスコ結成のサイケデリックフォークバンド。メンバーはMike Wilhelm (vo, go), Richard Olsen (vo, b, woodwind), Darrell DeVore (vo, key, b), Terry Wilson (ds, perc) 。最初期のシスコ・ロック・シーンを支えたバンドで、フィルモアやアヴァロン・ボールルームなどに定期的に出演した。68年にリリースしたこの1stアルバムはフォーク、カントリー、ブルースの要素が濃いルーツ的なサウンドで、モダーン・ミュージックの故生悦住英夫が、何度も聴かないと分からない本当のサイケデリックの例に挙げていた。しかしギターやホーンが複雑にオーバーダブされたアレンジや狂おしいヴィブラートギター、突き抜けたようなヴォーカルは、一回聴けば尋常じゃない妄念を感じる。特にギターとサックスが荒れ狂うA-5 The Blues Ain't Nothin’、常軌を逸した変拍子のB-2 Double Waltzは知覚の扉を開けた者にしか作れないに違いない。69年末に解散するが、90年代以降に何度か再結成ライヴをしている。

The Charlatans "High Coin"



●Cherry People / Cherry People

1968 / US: Heritage ‎– HTS-35,000 / 1991.7.6 下北沢Flash Disc Ranch ¥1,280

67年にワシントンD.C.で結成されたサイケデリックポップバンド。メンバーはChris Grimes (g,vo), Punky Meadows (g,vo), Rocky Isaac (ds), Doug Grimes (g,vo), Jan Zukowski (b,vo)。MGM傘下のHeritage Records第1弾となった唯一のアルバムは、スタジオ・ミュージシャンが演奏を担当したバブルガムポップ作品。ガレージっぽい音作りに好感が持てる。全米45位のヒット曲A-1 And Suddenly、マイナー調のメロディが印象的なB-3 I'm The One Who Loves Youがお気に入り。発売後、リズム・セクションはジミ・ヘンドリックスとセッションした。 70年代にハードロック化し、75年まで活動した。パンキー・メドウズは人気ハードロックバンドAngelのギタリストとして活躍。

The Cherry People - ( And Suddenly )



●The Children / Rebirth

1968 / US: Atco Records ‎– SD 33-271 / 1991.7.6 下北沢Flash Disc Ranch ¥1,880

テキサス州サン・アントニオで66年に結成されたThe StoicsがThe Mind's Eyeとなり、最終的にThe Chilrenとなった。メンバーはWilliam Ash (g),
Louis Cabaza (b,org,p,tuba,vib), Stephen Perron (vo), Andrew Szuch, Jr. (ds), Cassell Webb (vo)。同郷のテキサスのサイケバンド13th Floor ElevatorsやThe Golden Dawnなどの作品を手掛けたLelan Rogersのプロデュースで68年にリリースした唯一のアルバム。女性ヴォーカルをフィーチャーし、牧歌的なサイケフォークからバロック風室内楽ロック、狂おしいファズナンバーまで多彩な音楽性を持つ。泣けるフォークバラードB-1 I'll Be Your Sunshine、長尺スペースサイケB-4 Pictorial、弦楽サイケB-5 Dreaming Slaveなど名曲揃いの隠れた名盤。女性ヴォーカリスト、カッセル・ウェッブは80年代ニューウェイヴ時代にソロシンガーとして活躍した。

Children - Sitting On A Flower From Rebirth 1968 Music for a Mind and the Body



●Chrysalis / Definition

1968 / US: MGM Records ‎– SE-4547 / 1992.9.16 下北沢WIND ¥4,800

ニューヨーク州Finger Lakesで結成されたロックバンド。メンバーはJames "Spider" Barbour (vo. g), Jon Sabin (g), Ralph Kotkov (key), Paul Album (b), Dahoud Shaar (ds, perc), Nancy Nairn (vo)。マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジに移りライヴ活動するうちにフランク・ザッパと知り合う。アルバムのプロデュースをザッパに依頼したが、レーベルのMGMとの確執があったザッパは断ったという。このデビュー・アルバムではフルート、室内楽、チェンバロ、ピアノを駆使したクラシカルなアレンジが施され、男女ヴォーカルの美しいメロディがたっぷり。随所にザッパ風の狂った展開が聴ける。この1枚のみで70年に解散。全曲を作曲しているBarbourはSpider名義でザッパのアルバム2枚に参加。Shaarはヴァン・モリソンのドラマーとして活動した。
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Chrysalis - Lacewing


夢の中
サイケデリックな
恋をしたい

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【えいたそモダニズム】Episode 34『限りなく透明に近いでんぱ』~長谷川きよし/キャプテン・ビーフハート/ピンクレディー/乃木坂46/BiSH/でんぱ組 etc.

2020年08月05日 01時51分35秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


ウィズコロナ/アフターコロナ時代の音楽エンターテインメントの在り方としてオンライン・イベントや配信ライヴはもはや当たり前のものになっている。未だにリアル・ライヴの代替品と捉える向きも少なくはないが、生ライヴとは別の楽しみ方を提示する新たなエンタメ・メディアと考えるべきである。
一例としてアメリカ在住の友人が8月1日に配信されたサンヘドリン(灰野敬二・ナスノミツル・吉田達也)の無観客ストリーミング・ライヴを観た感想をみてみよう。
「正直、僕はあまりライブを観に行かない。 パンデミックが起きなくても、人混みは嫌いだし、客席で他の人が携帯電話で話したり弄ったりしていて音楽が邪魔されるのも嫌だから。 だから、自分の家の思い通りになる環境で配信ライブが観れるのは、本当に嬉しいことです。」
彼のようにナマのライヴ会場が苦手な人は少なくないだろう。リアルタイム(もしくはアーカイヴで)好きなアーティストのライヴを観られる環境を歓迎する人は世界中に多数存在する。それは会場のキャパシティが250人の秋葉原グッドマンの配信ライヴの視聴数が10倍以上に上っていることが証明している。

そういった環境的違い以上に、オンラインでしかできない仕掛け・企画・効果を盛り込んだオンライン・ライヴも登場してきた。その先駆者のひとつが秋葉原発、“萌えキュンソングを世界にお届け”でんぱ組.incである。SNSのみを使った楽曲制作「なんと!世界公認 引きこもり!」に続いて、5月16日にはテクノロジーと融合した次世代VJ オンラインライブ『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE』を配信。画面からはみ出すほどの色彩の乱舞や、メンバーの顔を塗りつぶしデフォルメする掟破りのVJ演出など、演奏するだけの味気ない配信ライブとは一線を画すエンタメ感溢れる内容となり、世界を驚愕させた。電脳深海に溢れる透明な泡の向こうでほほ笑むえいたそこと成瀬瑛美の姿は、生のステージを観るときには感じられない、夢の世界に舞い降りた天使の如き神秘性を帯びていた。



それから2か月半経ち、緊急事態宣言解除後の第2派感染が迫る日本で、でんぱ組が再びオンライン・ライヴを敢行した。

でんぱ組.inc「THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE 〜夏祭り編!!〜」
7/30(木曜)18:45 OPEN / 19:00 START

出演:
でんぱ組.inc
でんでんバンド(板垣祐介、山田裕之、松原"マツキチ"寛、村山☆潤)
オープニングアクト: meme tokyo.



メンバー6人が別々のブースでパフォーマンスした前回のオンライン・ライヴとは異なり、今回は生バンド(でんでんバンド)の生演奏で6人一緒にスタジオでパフォーマンスするリアルライヴ配信。オープニングアクトのmeme tokyoに続いて登場したでんぱ組の6人は、久々のライヴ・パフォーマンスの緊張感もそこそこに、MCではジョークやボケを連発してリラックスした姿を披露した。全員が一堂に会して、一つの目的に向かって歌い踊る歓びがパソコンの画面から溢れ出る血飛沫となってオレの前頭葉を刺激する。画面4隅に配されたでんでんバンドのメンバーのプレイの様子が常に見られるのもオンラインならでは。そしてラストスパートの「ORANGE RIUM(オレンジリウム)」では、自宅にいるファンが画面に登場してでんぱ組とコラボレーションする演出。くじ運がもっぱら悪くて懸賞や応募特典の類に当選した試しのない筆者だが、今回は初めて当選しでんぱ組&えいたそとコラボすることが出来た。



配信の音声と映像のタイムラグがあるため、本番の「ORANGE RIUM」が始まるZoomで別音声が流れるのだが、それがまるでローファイノイズバンドのような爆音で、リズムを聴きとり合わせるのに精いっぱいで何が起こっているか全くわけがわからなかったのだが、終わってからアーカイヴで観てみると、メンバーのパフォーマンスとヲタクの映像がオーヴァーラップして、どちらも透明になって滲み合いながら、画面の中に蕩けていく陶酔感があふれる異次元映像になっていた。えいたそと重なり合うオレの肉体・・・溶け合うふたりの魂・・・・嗚呼これが天国・・・。昇天寸前のオレの呆けた頭の中に突然、5月3日のインターネットサイン会でオレのリクエストに応えてえいたそが口にした「透明・クリア」というお題が浮かんだ。なんと瑛美は3か月も前に今回のコラボレーションを予言していたのだ。やはりえいたそは預言の天使であった。神は実在した!!!!



【えいたそモダニズム】Episode 34『限りなく透明に近いでんぱ』
えいたそから授かったお題を3か月も放置していた言い訳に聞こえるかもしれないが、「透明」という言葉のイメージが筆者のえいたそ観にいまひとつそぐわない気がしたことは確かである。俺にとってのえいたそのイメージはカラフル&多彩。もちろん心の中はクリアに澄み切っているはずだが、自ら輝くことで世界を照らす太陽のように、外に向かって色彩豊かなトキメキオーラを発して周りの人々をハッピーにするのがえいたそ。そんなカラフル瑛美が色を失って無色透明になるとは、想像するのが難しかった。そのため手付かずのままだった「透明」というお題の答えが、オンライン・ライヴを観て一気に解決したのである。「透明」とはすべての色を失って無色になってしまう事ではない。自分の色を抑えて限りなく透明に近くなることによって、他人の色と重なり合うことが可能になり、ひとりでは生み出せない新しい色を創造することが出来る。つまり今までにない新たなハピネスを生み出す手段が「透明・クリア」なのである。まさにウィズコロナ/アフターコロナの新時代を生きるための秘訣は、限りなく透明に近づいて、他の人と共に新しい精神を育むことに違いない。
救いの天使・えいたそ☆成瀬瑛美の深淵な啓示の本質を知るために、いつものようにさらに深い探求へと歩を進めていくことにしよう。


【お楽しみクイズ】筆者がどこにいるか正解した方には素敵なプレゼントあり。コメント欄またはDMで応募してください。(回答例:右から何列目の上から何番目、など)

●長谷川きよし『透明なひとときを』


盲目のシンガーソングライター長谷川きよしが、1970年にリリースしたセカンド・シングルとセカンド・アルバム。サンバの粋とその音楽が描き出す人間ドラマを完璧に日本語歌詞とサウンドで表現してみせたタイトル曲を筆頭に、素晴らしいオリジナル・ソング、そして素晴らしい解釈の洋楽カヴァーを収録。ギター・テクニックだけではなく、朗々と人生ドラマを歌い上げる歌唱力の飛躍的な深化ぶりも鮮烈な作品集。

コロナ禍の自粛期間にその特異な音世界を発見して俄かにファンになった長谷川きよし。透明度の高さで定評のあるきよしの歌声こそ、えいたその言う「透明・クリア」を兼ね備えている。加藤登紀子や椎名林檎とのデュエットも見事に決める長谷川きよしのサイケな世界は、えいたそのハピネスワールドと同じ次元に存在するパラレルワールドに違いない。

長谷川きよし - 透明なひとときを Kiyoshi Hasegawa / Toumei na hitotoki wo



●キャプテン・ビーフハート『クリア・スポット』


1960年代後半のアメリカ西海岸におけるサイケデリック・ミュージック・シーンの最重要バンドのひとつ、「キャプテン・ビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンド」のボーカル・リーダーであるとともに、詩人・画家・彫刻家でもあるキャプテン・ビーフハートの7枚目のスタジオ・アルバム(1972)。オリジナル盤はクリア・プラスチック・ジャケット。本人曰く女性向けの売れ線を目ざした作品だったが、商業的には全米チャート191位と失敗した。

えいたその「透明・クリア」というお題を聞いて真っ先にオレの頭に浮かんだのがこのアルバム。69年の3rdアルバム『トラウト・マスク・レプリカ』で魚のお面をかぶって世界の前衛ロックの頂点を極めた牛心隊長が、ヒットを狙って作り上げた骨太サウンドは、透明点(Clear Spot)=原点回帰のパワーロック。「透明・クリア」という言葉には、始まりに還りたいという瑛美の願いが込められている。

Captain Beefheart - Clear Spot



●坂本真綾『CLEAR』


2018年1月31日発売TVアニメシリーズ「カードキャプターさくら クリアカード編」オープニングテーマ。声優・女優・歌手の坂本真綾の27枚目のシングル。

坂本真綾(愛称マーヤ)は2015年にテレビアニメ「Go!プリンセスプリキュア」に声優で出演した。2019年「スター☆トゥインクルプリキュア」に出演した瑛美も、先輩でもあるマーヤを見習って限りなくクリアに近づけば、アニソンシンガーとしてデビューする夢がきっと適うに違いない。

坂本真綾「CLEAR」MV Short ver.



●ピンクレディー『透明人間』


76年にデビューしたミーとケイからなるダンス・アイドル・デュオ、ピンクレディーの9枚目のシングル(78年9月リリース)。オリコン週間1位、年間6位を記録するヒット曲。

透明と聞けば誰でも頭に浮かぶのが「透明人間」だろう。SF作家H.G.ウェルズやアメリカの作家ラルフ・エリソンが小説を書いているし、映画化も何度かされている。透明になって姿を消してしまえば、他人に気づかれないで好きなことが何でもできる。そんな夢を子供の頃描いた人は多いだろう。しかしながら透明人間になてたとしても、邪念を捨て去れなければ、せいぜい盗撮行為の役にしかたつまい。

invisible Person - Tomei Ningen (透明人間)- Lets Go Young DVD - Pink Lady



●ずうとるび『透明人間』


テレビバラエティ番組『笑点』から誕生した男性アイドルグループ、ずうとるびのデビュー・シングル(1974年2月)。

1974年小学高学年だった筆者は、『笑点』で山田隆夫が優勝した光景を覚えている。記念すべき日になったなあ、となんだか誇らしい気持ちになった。中学生になったころからお笑いに興味を失ってしまったが、ずうとるびという名前をきっかけにザ・ビートルズを知ることが出来たことには感謝している。苦手ジャンルからも学ぶことがある。えいたそも苦手なダンスを克服して、アイドル界の新星になったのだから。

ずうとるびデビュー曲「透明人間」1974年2月



●MUTANT MONSTER『無色透明カメレオン』


2008年に結成されたガールズロックンロール・バンド、ミュータント・モンスターの2ndアルバム『突然変異』(2018/9/5)に収録されたナンバー。矛盾と疑問に屈折した感情。彼女たちの無防備なほどの不敵さが、ストレートでポップなメロディーと融合し、光影のあるサウンドを作り上げる!

周りの色に合わせて自らの色を変えられるが、合わせすぎたため逆に存在意義を失って無色透明になってしまったカメレオンの悲劇を歌うロッケンロー。「限りなく透明になるためには、そんな危険も乗り越えなければならないわ。覚悟はできてるの?」と尋ねる瑛美に見つめられてドギマギしてしまう自分を想像して心が潤った。なんでもいいからみつめてほしい。

無色透明カメレオン/ MUTANT MONSTER



●乃木坂46『透明な色』


1stシングル『ぐるぐるカーテン』から10thシングル『何度目の青空か?』まですべてのシングルを収録した、乃木坂46初のアルバム。(2015/1/7)

ABKグループや坂道シリーズにはほとんど興味を惹かれたことはないが、現代アイドルの最大手としてネタ的には宝庫と言える。えいたそ論にも何度も登場してきた。「透明」というお題も見事にクリア。秋元康の言語感覚は、じつはえいたそや筆者に近いのかもしれない。ということは、俺と瑛美が組んで歌詞を作れば、アイドル界の頂点を奪取できる可能性があるということでは?ただし筆者もえいたそも、てっぺんとったんで!なんて気負いは全くなしに自然体で限りなく透明に近い未来を描こうとしていることは言うまでもない。

乃木坂46 『1st Album「透明な色」YouTubeCM』



●BiSH『透明なままでゆけ。』


2018年BiSH×キリンレモン「透明なままでゆけ。」。CMに使用されている楽曲「透明なままでゆけ。」は、1961年からキリンレモンのCMソングとして使用されてきた「キリンレモンのうた」を現代版にアレンジしたもの。

かつてでんぱ組の盟友として武道館を目ざしたアイドルグループBiSの後継妹グループとして2015年に結成された「楽器を持たないパンクバンド」BiSHは、あっという間にBiSを超えて、今やアリーナクラスをSold Outにする人気アイドルグループになった。国民的ソフトドリンク・キリンレモンのCMに抜擢されるまでになったことは、アイドル・ドリームが夢や幻ではないことの証明である。

BiSH、ワンピ姿で爽やかに “キリンレモンのうた”フルバージョンMVが公開


先輩格のでんぱ組とえいたそは、さらにその先を目ざして世界のオンライン・ライヴ&ライヴストリーミング・シーンをリードしていってほしい。

限りなく
ハッピーマキシマム
えいたそチャンネル

マキシマムえいたそのライブストリーミング
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【JazzTokyo#268更新】JOBS『endless birthday 終わりのない誕生日 』~新時代アートロックはポストロックを凌駕する。

2020年08月02日 00時23分52秒 | 素晴らしき変態音楽

音楽情報サイト『JazzTokyo - Jazz and Far Beyond』最新号が更新された。特集はキース・ジャレット、追悼特集エンニオ・モリコーネ。剛田武は下記の記事を寄稿した。

●JOBS / endless birthday

Disc Review #2005 『JOBS / endless birthday』

ミクストメディア時代のアートロックの新鋭
電子音楽、プログレッシヴ・ロック、テクノ、ノイズ、インダストリアル、ミニマル・ミュージックなど、様々な要素がミックスされたスタイルは、まさにミクストメディア時代の<アートロック>と呼べるだろう。MEDIA=コミュニケーション・メディアと解釈すれば、JOBSの音楽はアート(芸術)であると同時にエンターテインメントでもある。

JOBS - "Opulent Fields" (Official Video)


JOBS / Pink + Fear May Be A Builder | Historian Session


アートから
ロック経由の
ミクストメディア

NEWS!!!
本日!!!8月2日(日) 10:30am(日本時間)、JOBSがストリーミング・ライヴに出演


SHINKOYO / Artist Pool Presents: (US Central Time)
19:00 Island Queen Satans Flower (MN)
19:30 Kethro (MN)
20:00 Marcia Bassett & Ted Gordon w/ Camilla Padgitt-Coles (NYC)
20:30 JOBS (NYC) ⇒日本時間8月2日(日) 10:30am
21:00 DJ Sniff (TOKYO)
21:30 IE (MN)

配信リンク
https://ess.org/the-quarantine-concerts
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【灰野敬二8月のライヴ予定】8/1【配信ライヴ】サンヘドリン / 8/8【配信ライヴ】ポリゴノーラ・ソロ / 8/18【有観客&配信ライヴ】東京・成城学園前 第Q藝術

2020年08月01日 01時26分14秒 | 灰野敬二さんのこと


●8月1日(土)東京・秋葉原グッドマン


【無観客ライブ配信】CLUB GOODMAN 24th Anniversary <サンヘドリン・ワンマンライブ>
開演日時 17:00 

灰野敬二+吉田達也+ナスノミツルの尖鋭性の塊の様な3人のミュージシャンがバトルのごとく交じり合うアヴァンロック・トリオ<サンヘドリン>今回、初の配信でその全貌を世界へ。
※本公演のご視聴は無料となります。投げ銭でのご支援、ご協力何卒よろしくお願い致します。
※感染拡大防止対策についてはこちらをお読み下さい。

【出演】サンヘドリン(灰野敬二+吉田達也+ナスノミツル)

スマートフォンのお客様はYouTubeアプリをあらかじめダウンロード下さい。
お客様同士のコメントを見ることができ、より楽しめます!

▼ライブ配信日時 8/1(土)17:00~
CLUB GOODMANのステージより無観客投げ銭ライブ配信を行います。

▼お客様からのご支援(投げ銭)を一口500円から受け付けております。
お一人様何回でもご購入可能です。
詳細はコチラ




8月8日(土)東京・千駄木Bar Isshee

【無観客配信】灰野敬二ソロ~ポリゴノーラをお聴かせしよう
配信 start 20:00

出演:
灰野敬二 Keiji Haino (Polygonola)

撮影配信:大野要介
Shooting and Broadcasting : Yosuke Ohno

配信URLはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=2k_O8YVXN84

投げ銭はこちらから / Please make a donation for musicians thru PayPal !
https://www.paypal.com/paypalme/barisshee




8月18日(火)東京・成城学園前 アトリエ第Q藝術


bugs cry what × Keiji Haino
有観客&インターネット配信ライヴ

開演・配信スタート 7:30pm

bugs cry what:
吉本裕美子 Yumiko Yoshimoto (guitar, daxophone)
狩俣道夫 Michio Karimata (flute, sax, voice, etc.)

special guest 灰野敬二 Keiji Haino

7:00pm 開場 7:30pm 開演
入場料 2,500円 (定員20名)
予約:アトリエ第Q藝術 q.art.seijo@gmail.com
※COVID-19感染拡大状況により無観客になる可能性があります

※インターネット配信あり

アトリエ第Q藝術YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCTLVwQs-NWWVOP2e0zGbECw

無料でご視聴いただけますが投げ銭によるご支援をいただければ幸いです
https://qartseijo.stores.jp/

照明:早川誠司
配信:アトリエ第Q藝術

アトリエ第Q藝術 1Fホール
https://www.seijoatelierq.com/
小田急線 成城学園前駅 南口・北口より徒歩3分
世田谷区成城2-38-16
Tel. 03-6874-7739
E-mail: q.art.seijo@gmail.com



配信で
観れるライヴの
気配哉

【参考動画】
サンヘドリン(灰野敬二+ナスノミツル+吉田達也) - LIVE @ SCUM BIRTHDAY2016〜EARTHDOM 10th Anniversary〜


灰野敬二 ポリゴノーラ パフォーマンス


bugs cry what CD発売記念ライヴ special guest 坂本弘道
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