Tiger Hatchery:
Mike Forbes, saxophones
Andrew Scott Young, basses
Ben Billington, drums
1. Exoskeletal
2. Not Chill
3. Drawing Down the Moon
4. Breathing in the Walls Pt. I
5. Pothole Pleasure
6. Scorch the Earth
7. Triple Penny
8. Don't Tell Your Doctor
9. Breathing in the Walls Pt. II
オハイオ州クリーヴランド出身のベン・ビリントンは2004年秋にシカゴのデポール大学に進学。シカゴでノイズ・ロックに目覚め、ドラム/ギター/エレクトロニクスのトリオDruids of Hugeを結成し、2006年から積極的にライヴ活動を行う。一方マイク・フォーブスとアンドリュー・スコット・ヤングはテキサス州デントンで出会う。バンド・メンバーを探していたフォーブスが、キャンパス内のジャズ・バーで演奏していたヤングを発見し、「アルバート・アイラーを知っているか?」と質問をしたのである。この一言が人生を変える魔法の言葉となり、2人は意気投合、共に音楽の道を歩き始める。難解なジャズやノイズへの情熱は、テキサスの田舎町では収まり切れず、2007年に二人は南部を脱出してシカゴへ向かうこととなった。シカゴではフリージャズやインプロよりも、ノイズ/パンク/ロック・シーンに可能性を見出した。必然的にDruids of Hugeで活動するベン・ビリントンと出会うこととなり、最初はジャム・セッションから始まり、すぐにビリントンの「フリー・ロック」とフォーブス&ヤングの「フリー・インプロヴィゼーション」が共感しあってタイガー・ハッチェリーとして活動を始めた。彼らが中心となってシカゴ近郊の巨大な倉庫を使ってアンダーグラウンド・ミュージックとアートのイベントを開催するようになった。その成果で地元のレーベルから作品をリリースし始めた。
2013年にESPディスクと契約、スタジオ録音作品『Sun Worship』をリリース。インディシーンで高い評価を得る。2015年には伝説的サックス・プレイヤーPaul Flahertyとコラボ・アルバムをリリース。そして2017年にリリースされた現時点での最新作が『Breathing In The Walls』。直訳すると「壁の中で呼吸をする」という意味。全9曲で30分強。短い曲が中心だが、その分込められたパワーをダイレクトに伝える意欲作である。勿論ただ我武者羅に走るのではなく、聴き手に考える余地を与えるストイックな寡黙さが漂うトリオの空気は、演奏の饒舌さとバランスを取るための黄金比率から導き出したかのような、表現行為の深層意識に満ちている。波乱の海の底の深海の静けさを湛える慎ましやかな美を強く感じる。
Tiger Hatchery with Paul Flaherty Live in New Haven, CT
本作以降あまり活動の記録がないが、解散することなくESP精神を伝えて行ってほしいと願っている。
自由人
自由生活
ご自由に
Tiger Hatchery @ ESP-Disk' 50th Anniversary Party - Part 1
1967年にシカゴで結成。はじめはThe Big Thingを名乗っていたが、68年にChicago Transit Authority(シカゴ交通局)に変えた。メンバーはTerry Kath (g,vo), Robert Lamm (key,vo), Peter Cetera (b,vo), Walter Parazaider (sax), Lee Loughnane (tp), James Pankow (tb), Danny Seraphine (ds)。ホーンを取り入れたブラス・ロックの代表格。70年代後半からAOR路線でヒットを連発するシカゴだが、デビュー当時は政治的な歌と変拍子を取り入れたシンフォニックなサウンドで、西海岸のプログレッシヴなロック・シーンを象徴する存在だった。スリリングなラテンロックC-3 I'm A Manや暴動事件のシュプレヒコールを取り入れたD-2 Someday (August 29,1968)もいいが、なんといってもC-1 Free Form Guitarはロックにおける世界最初のノイズギターソロと言えるかもしれない。
Listen (2002 Remaster)
●The Chocolate Watch Band / Forty Four
1984 / UK comp: Big Beat Records – WIKA 25 / 1986.12.19 吉祥寺レコファン ¥1,150
1965年カリフォルニア州サンホセで結成されたガレージ・バンド。ストーンズやヤードバーズなどブリティッシュ・ビートに影響を受けたR&B~サイケサウンドは文句なしにカッコよく、The Standels、The Seeds, 13th Floor Elevatorsなどと並ぶ、アメリカン・ガレージ・サイケの代表格である。初期メンバーは、David Aguilar (vo), Gary Andrijasevich (ds), Bill Flores (b), Mark Loomis (g), Sean Tolby (g)。彼ら名義の3枚のアルバムにはメンバーとは無関係のスタジオ・ミュージシャンによる楽曲が多数収録されている。それゆえ、メンバーによる演奏をまとめたベスト盤が重宝する。80年代以降様々なレーベルからベスト盤が出ているが、これはイギリス編集のベスト盤。見開きジャケットの内側に写真や詳細なバイオが掲載されていて嬉しい。
The Chocolate Watch Band "Don't Need Your Lovin'"
●The Chocolate Watch Band / The Inner Mystique
1968 / Australia reissue 1981: Raven Records – RVLP-1001 / 1985.11.18 お茶の水Second Hands ¥1,000
彼らの2ndアルバム。『内面の神秘』というアルバム・タイトルに相応しく、シタール、フルート、コーラス、ホーン・セクションによる疑似インド音楽A-1 Voyage of the TriesteをはじめとするA面にはメンバーは全く参加していない。ガレージ・ロック・ナンバー中心のB面も2曲でヴォ―カルが差し替えられているという。厳密にはチョコレート・ウォッチ・バンドの本当の作品ではないかもしれないが、インド風味の濃い内容は、60年代サイケの目指した世界を描き出した傑作と言えるのではないだろうか。アシッド・トリップの先にあるはずの風景が垣間見える。
The Chocolate Watchband - 01 - Voyage of the trieste
1967年ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで結成されたフォークロックバンド。元はLost Sea Dreamersを名乗っていたが、イニシャルのL.S.D.がドラッグを想像させるとしてレコード会社から変更を求められサーカス・マクシマスに変えた。メンバーは、Jerry Jeff Walker (g,vo), Bob Bruno (g, key,vo), David Scherstrom (ds), Gary White (b), Peter Troutner (vo, tambourine)。67年の1stアルバムは、The Byrds『5th Dimension』に影響を受けたフォークロックだが、もっとワイルドなガレージ風味が魅力。狂ったように掻き毟りギターソロが暴走するA-1 Travelin' Aroundに度肝を抜かれる。B-4 Short-Haired Fatherもガレージフォーク。ジャズっぽいアシッドフォークB-5 Windがラジオ・ヒットした。
68年の2ndアルバムも同じ路線だが、ボブ・ブルーノのサイケ/ジャズ志向とジェリー・ジェフ・ウォーカーのフォーク志向が対立するようになった。A-1 Hello Baby、A-2 How's Your Sky, Straight Guy Spyといったガレージっぽいブルーノの曲のほうが筆者はお気に入り。両者の志向の違いが原因で68年夏に解散。ウォーカーはソロに転向しカントリー・シンガーとして成功を収める。ブルーノはジャズ・ミュージシャンとして活動し、フリージャズのサック奏者Noah Howard『Live At The Village Vanguard』(75)にピアニストとして参加した。ベースのゲイリー・ホワイトはリンダ・ロンシュタットのバックで活動。あまり高い評価をされていないが、1stアルバムは筆者のB級サイケ・ベスト10に入る名作だと思う。
Carole King (vo,p) , Charles Larkey (b), Danny Kortchmar (g,vo)からなるフォーク・トリオ。ドラムにJim Gordonが参加。キャロル・キングのソロ・デビュー前のユニットとして高い人気を誇るが、個人的にはダニー・コーチマーとチャールズ・ラーキーがThe Fugsのバンド・メンバーだったことの方が嬉しい。「60年代フォーク・ムーヴメント」と次のフェーズである「シンガーソングライター」時代を繋ぐ作品であり、サイケではないが良質なアメリカン・ミュージックが聴ける好盤である。キャロル・キングのソロB-2 Ladyがいい。今回調べていて、このモノクロ・ジャケットは廃盤で入手が難しかったころに出回った海賊盤であることを知った。
The City - Snow Queen
●Clear Light / Black Roses
1967 / UK reissue 1987: Edsel Records – ED 245 / 1988.3.26 渋谷Tower Records ¥1,590
1966年ロサンゼルスでThe Brain Tranとして結成。LSDに関連したClear Lightに名前を変えてエレクトラと契約し唯一のアルバムをリリース。メンバーはCliff De Young (vo), Bob Seal (g,vo), Douglas Lubahn (b), Ralph Schuckett (key), Dallas Taylor (ds), Michael Ney (ds)。ツイン・ドラムとファズギターとグルーヴ・オルガンが最高。特にA面は全曲捨て曲なし。Quicksilver Messenger ServiceやGrateful Dead、Country Joe & The FIshなどシスコ・サイケに負けない最強のウェストコースト・サイケだと思うが、個性的なリーダーがいなかったためアルバム一枚で消えたのが残念。解散間際にThe City結成前のDanny Kortchmarが参加したというのも何かの縁。 http://brunoceriotti.weebly.com/clear-light.html#
CLEAR LIGHT - BLACK ROSES
●The Clique / The Clique
1969 / US: White Whale – WW7126 / 1991.6.5 新宿Disk Union ¥2,390
60年代半ばテキサス州ヒューストンで結成されたサンシャインポップ・バンド。バンド名はthe Roustabouts~the Sandpipersと変遷して67年にザ・クリークとなる。テキサスで何枚かのシングルをリリース後、西海岸へ移りWhite Whaleから唯一のアルバムをリリース。メンバーはRandy Shaw (vo), Tommy Pena (b), Sid Templeton (g,vo), Jerry Cope (ds), Oscar Houchins (key, vo). David Dunham (sax,vo)。 上品なソフトロックになっていて、テキサス時代のアシッド色は消えている。A-4 Hallelujahが印象的。B-3 Supermanは86年にR.E.M.がカヴァーした。
The Clique - Superman
●Cleanliness And Godliness Skiffle Band / Greatest Hits
1964,5年にサンフランシスコで活動していた大所帯のグループInstant Action Jug Bandのメンバーを中心に66年末に結成されたジャグ・バンド。メンバーは、Annie Johnston (g,mandolin,vo), Hank Bradley (fiddle,mandolin,hca,vo), Phil Marsh (v,g), Brian Voorhees (hca,g,vo), Richard Sauders (b)。アコースティックな楽器編成で歌い騒ぐ陽気なサウンド。爆竹を鳴らしてどんちゃん騒ぎのA-4 Chinese New Year Waltz、俺たちはサイケデリック・ヒッピーと宣言するA-6 Altitudinous Youthful Deviant Number 468 (Do It Up)といった能天気なナンバーに交じって、しっとりしたジャズ・バラードA-5 Lotus Blossom、フルートが美しいB-3 Carol's Songがあるので飽きが来ない。これ一作で終わってしまったかに見えたが。。。
1968 / US: Vault – SLP 117 / 1994.8.15 New York Revolver $50.00
セッション・ギタリストMike Deasyを中心にロサンゼルスで制作されたコンセプト・アルバム。シタール、タブラ、タンブーラ等を多用した疑似インド音楽インストを聴かせる。ライ・クーダーがRy Cooterとして参加していることで有名。他にもJim Gordon (ds)やJim Horn (sax)といったセッション・ミュージシャンが参加している。インド神話に基づいたストーリーのあるコンセプト・アルバムだが、AB面併せて21分という短いアルバムなので、90年代にCD化された時は同じ内容が2回繰り返して収録されていた。B面最後Menyatt Dyl Comのシタール+トランペットの高揚感に満ちたフリークアウトで昇天する。
The Ceyleib People - Tanyet (1967) Part 3
●Chamaeleon Church / Chamaeleon Church
1968 / US: MGM Records – SE-4574 / 1994.11.29 Boston Nuggets $10.00
1967年ボストンで元The Lostのメンバーが結成したサイケデリックバンド。メンバーはTed Myers (g, vo), Tony Scheuren (g, b, key, vo), Kyle Garrahan (b, g, p vo), Chevy Chase (ds, p, org, vo)。"Bosstown Sound"のひとつとして売り出された。当時ニューヨークで唯一8トラック・レコーディングが可能だった録音された。凝ったアレンジの室内楽ロックにドリーミーなコーラスが乗った極上のソフトサイケ。どの曲も素晴らしいが、シタール入りのB-6 Off With The Oldが特に好き。アルバム・リリース後解散し、MyersとScheurenは同じボストンのUltimate Spinachに参加。Chevy Chaseはコメディアン、俳優として現在も活躍中。
Chamaeleon Church - Blueberry Pie
●The Charlatans / The Charlatans
1968 / France reissue 1983 Eva – 12004 / 1968.7.1 吉祥寺レコファン ¥950
1964年サンフランシスコ結成のサイケデリックフォークバンド。メンバーはMike Wilhelm (vo, go), Richard Olsen (vo, b, woodwind), Darrell DeVore (vo, key, b), Terry Wilson (ds, perc) 。最初期のシスコ・ロック・シーンを支えたバンドで、フィルモアやアヴァロン・ボールルームなどに定期的に出演した。68年にリリースしたこの1stアルバムはフォーク、カントリー、ブルースの要素が濃いルーツ的なサウンドで、モダーン・ミュージックの故生悦住英夫が、何度も聴かないと分からない本当のサイケデリックの例に挙げていた。しかしギターやホーンが複雑にオーバーダブされたアレンジや狂おしいヴィブラートギター、突き抜けたようなヴォーカルは、一回聴けば尋常じゃない妄念を感じる。特にギターとサックスが荒れ狂うA-5 The Blues Ain't Nothin’、常軌を逸した変拍子のB-2 Double Waltzは知覚の扉を開けた者にしか作れないに違いない。69年末に解散するが、90年代以降に何度か再結成ライヴをしている。
67年にワシントンD.C.で結成されたサイケデリックポップバンド。メンバーはChris Grimes (g,vo), Punky Meadows (g,vo), Rocky Isaac (ds), Doug Grimes (g,vo), Jan Zukowski (b,vo)。MGM傘下のHeritage Records第1弾となった唯一のアルバムは、スタジオ・ミュージシャンが演奏を担当したバブルガムポップ作品。ガレージっぽい音作りに好感が持てる。全米45位のヒット曲A-1 And Suddenly、マイナー調のメロディが印象的なB-3 I'm The One Who Loves Youがお気に入り。発売後、リズム・セクションはジミ・ヘンドリックスとセッションした。 70年代にハードロック化し、75年まで活動した。パンキー・メドウズは人気ハードロックバンドAngelのギタリストとして活躍。
テキサス州サン・アントニオで66年に結成されたThe StoicsがThe Mind's Eyeとなり、最終的にThe Chilrenとなった。メンバーはWilliam Ash (g),
Louis Cabaza (b,org,p,tuba,vib), Stephen Perron (vo), Andrew Szuch, Jr. (ds), Cassell Webb (vo)。同郷のテキサスのサイケバンド13th Floor ElevatorsやThe Golden Dawnなどの作品を手掛けたLelan Rogersのプロデュースで68年にリリースした唯一のアルバム。女性ヴォーカルをフィーチャーし、牧歌的なサイケフォークからバロック風室内楽ロック、狂おしいファズナンバーまで多彩な音楽性を持つ。泣けるフォークバラードB-1 I'll Be Your Sunshine、長尺スペースサイケB-4 Pictorial、弦楽サイケB-5 Dreaming Slaveなど名曲揃いの隠れた名盤。女性ヴォーカリスト、カッセル・ウェッブは80年代ニューウェイヴ時代にソロシンガーとして活躍した。
Children - Sitting On A Flower From Rebirth 1968 Music for a Mind and the Body
そういった環境的違い以上に、オンラインでしかできない仕掛け・企画・効果を盛り込んだオンライン・ライヴも登場してきた。その先駆者のひとつが秋葉原発、“萌えキュンソングを世界にお届け”でんぱ組.incである。SNSのみを使った楽曲制作「なんと!世界公認 引きこもり!」に続いて、5月16日にはテクノロジーと融合した次世代VJ オンラインライブ『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE』を配信。画面からはみ出すほどの色彩の乱舞や、メンバーの顔を塗りつぶしデフォルメする掟破りのVJ演出など、演奏するだけの味気ない配信ライブとは一線を画すエンタメ感溢れる内容となり、世界を驚愕させた。電脳深海に溢れる透明な泡の向こうでほほ笑むえいたそこと成瀬瑛美の姿は、生のステージを観るときには感じられない、夢の世界に舞い降りた天使の如き神秘性を帯びていた。