浜名史学

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「平成」を振り返る(3)

2024-12-09 09:10:12 | 近現代史

◎「企業に奉仕する公共」(政治)

  残念ながら、何度も書いてきたように、政府や自治体は、集められた税金を企業へばらまいている。本来、「公共」とは、provided by the government from taxes to be available to everyone: とされています。誰もが利用できるように、税金を政府が提供することなのであるが、実際は企業や自民党、公明党の「お友だち」に税金が拠出されている。

  消費税が10%となり、庶民は重税に「ゼイ、ゼイ」と苦しんでいるが、「法人税実効税率」は、  1988年には 51.55%であったものが、2019年には29.74%と減らされている。また「所得税最高税率」も、 1988年では60%であったものが、2019年には45%となっている。1988年、消費税は0%であったが、2019年からは10%である。つまり累進課税である所得税を減らし、大衆課税である消費税に徴税の軸足を移してきているのである。

 それに、消費税が導入されてから、2022年までの消費税総額が224兆円、法人税の減税額がそれとほぼ同じの208兆円、つまり、法人税の減税分を消費税が埋めているという現状なのだ。

 また自治体も、企業への補助金支出を行っている。浜松市の例を示す。

 浜松市は、自動車メーカーのSUZUKIへ約35億円の企業立地補助金(県を含めると52億円)を交付した。SUZUKIによる検査不正が行われた時期なのに、浜松市はSUZUKIに補助金を支出したのである。

 浜松市にはかつて「行財政改革推進審議会」があり、そこでは鈴木修が積極的に動いていた。そこでの彼の発言を紹介しよう。

 「補助金の件数を減らすことも重要ですけど、絶対金額を減らすことがもっと重要」 「(日赤浜松病院に対する市の補助金について)僕は他の病院は移転しても、もらってるかもらってないか知らないが、今後こういう5年にも10年にもわたって何十億円なんていう補助金の出し方、企業誘致だとか何とかという問題についても、40億円の補助金をもらって企業誘致を受けたなんて会社はないでしょう。あるいは、釣った魚にエサはやらないってことで、今市内にある企業が1千億円設備投資したって市は1銭も払ってないわけです。だから、47億円というのは重要な問題。そういうことが二度と起きない取り決めというか、ルールを作っておくことも私は必要ではないかと思います。」(第二次、第四回)

 補足しておくと、浜松市の基幹病院のひとつである日赤浜松病院はほぼ中心部にあり、拡張することはできないために、郊外へ移転することになり、浜松市が補助金をだしたのである。それに鈴木修は噛みついたわけである。

 鈴木修が中心となってまとめられた『第二次行革審答申』(2008年3月19日)には、「補助金は、過去のしがらみを断ち切り統一的な制度のもと、公益性、公平性の視点により、行政が税金で負担すべきものか徹底的に事業内容を検証することが重要である。さらに市民は補助金に頼るのではなく、何ができるか、何をすべきか自ら考え行動する必要がある。」と書かれていた。

 しかし、なんと、SUZUKIは補助金を受けとったのである、補助金削減を強硬に主張していた鈴木修、自分(自社)への補助金はいいのか。ちなみに、この答申により、浜松市が支出していた公益団体その他への補助金は廃止されたり減額されたりしたという。

 このように、この例のように、国も地方自治体も、企業(とりわけ大企業)に補助金を交付したり、税制上優遇したりして厚遇しているのである(研究開発減税、受取配当益金不算入制度、外国子会社配当益金不算入制度、連結納税制度・・・)。さらに「消費税還付制度(輸出免税制度)」がある。例えば、50万円の商品を下請けから仕入れたとき、メーカーは消費税率10%を上乗せし、55万円を下請けに支払う。下請けはこの売り上げから5万円を税務署に納める。メーカーはそれを加工し、税込み110万円の商品を作ったとする。国内では販売に際し、消費税10万円を消費者から受け取る。10万円から、仕入れの際下請けに払った5万円を引き、残る5万円をメーカーが税務署に納める。これを年間でまとめて計算して支払う。一方、海外に輸出する場合は輸出免税により価格は税抜きの100万円となるため、仕入れの際に支払った5万円が相殺できない。これを国庫から還付金として補填する制度。消費税還付金には、年率1.6%の利息に相当する「還付加算金」が上乗せされるから、2018年度分で3683億円の還付を受けるトヨタは、単純計算で約59億円が利息として入ってくる。
 輸出企業にとって、消費税は多額の「益税」なのである。

◎「平成」におきたこと

 〇まず日経連が「新時代の『日本的経営』-挑戦すべき方向とその具体策」(1995)を提出したことである。それには労働者を三つのグループに分けることが提案されている。
①「長期蓄積能力活用型グループ」( 期間の定めのない雇用契約/管理職・総合職・技能部門の基幹職/月給制か年俸制・職能給/昇給制度あり/賞与=定率+業績スライド/年金 あり/役職昇進 職能資格昇進
②「高度専門能力活用型グループ」(有期雇用契約/専門部門(企画、営業、研究開発等)/年俸制・業績給/昇給無し/賞与・成果配分/年金 なし/業績評価
③「雇用柔軟型グループ」(有期雇用契約/一般職 技能部門 販売部門/時間給制・職務給/昇給なし/賞与・定率/年金 なし
 これによると、正社員は①のみで、②③は非正規となる。目的は、人件費の抑制であり、その結果、低賃金の非正規労働者は増え続け、全労働者の約4割が非正規となっている。

 その効果は1997、8年から出始め、その頃から賃金の下降、全世帯の所得金額が減り始めた。

 〇されにそれを推進したのが、1997年の転換、「橋本行革」であった。
 1996年1月 第二次橋本龍太郎内閣が誕生し、「構造改革」を打ちだした。「財政構造改革」(歳出抑制見直し)、「教育改革」、「社会保障構造改革」(給付と負担の均衡)、「経済構造改革」(規制緩和)、「金融システム改革」(金融の自由化)、「行政改革」(中央省庁再編、公務員減らし)が実施され、①消費税増税(3%から5%へ)、所得税・住民税の特別減税廃止、②公共投資の抑制、③不良債権処理→金融機関の破綻、④アジア通貨危機→輸出の減により、賃金減少、消費の減退、景気悪化が進んでいった。

 その「構造改革」がどういったものであるかは、次回に綴る。

 

 

 

 

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