「浦上玉堂展」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「浦上玉堂展」
11/3-12-3



詩や音楽、それに書や水墨画などに才能を発揮した、江戸時代後期の文人画家、浦上玉堂(1745-1820)の大回顧展です。主に彼の書画、約230点にて画業を振り返ります。関東では35年ぶりとなる本格的な展覧会です。充実していました。



玉堂の山水画は非常に独創的です。岩が地面からまるで筍のように伸び、また泡の如く膨らんで、断崖絶壁の荒々しい光景を支えています。岩はまさに奇岩怪石という言葉がピッタリです。何ら迷いのない即興的なタッチにて、まるで命が宿っているかのような岩が描かれています。そして米点を思わせる筆遣いが、風に揺れる林を表していました。荒涼とした大地です。ただならぬ気配が漂っています。



特に縦長の構図に描かれた岩の連なる光景は威圧的でした。玉堂の作品はどれも基本的に上方向へのベクトル(それこそ下から盛り上がる岩のように。)を感じさせますが、時折横線を交えて、まるで霞のかかったような表現が加わると、実に情緒的な光景へと変化します。そして画面にただ一人だけ登場する旅人(?)の趣きです。やや背中を曲げて、トボトボと歩く光景が描かれています。背景の巨大な天険要害と、殆ど無力なほどに小さい人の立ち姿。ここには、諸国を遊歴したという玉堂の、ある種の寂しさが表現されているようにも思えました。どこか儚い雰囲気です。



マルチな才能を発揮した玉堂は音楽家でもあります。展示では、彼の制作した「七絃琴」や、「玉堂琴譜」と呼ばれる楽譜が紹介されていました。音楽家としての玉堂を絵に見出すのは難しくありません。それこそ岩がミシミシときしむ音や、森のざわめき、そして急流のせせらぎや風の音までが、颯爽たる筆のタッチの一つ一つから奏でられているのです。サッと描かれた軽やかな墨線が、あたかも篠笛となったかのように音を紡ぎます。玉堂の水墨画は、耳でも楽しめる作品です。

細かく分かれた展示構成にやや戸惑う部分もありましたが、江戸絵画に強い千葉市美術館ならではの良い展覧会でした。会期が短いのが残念ですが、おすすめしたいと思います。12月3日までの開催です。(11/5鑑賞)
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新国立劇場が「愛称」を募集

来年で誕生10周年を迎える新国立劇場が、オペラ劇場の愛称を募集しています。一人5点まで、インターネットでも応募出来るようです。

新国立劇場が愛称募集 オペラ・バレエの拠点、認知を(asahi.com)

「新国立劇場オペラ劇場」愛称募集(応募フォームあり)


新国立劇場では、2007年10月に迎える開場10周年を記念し、わが国で唯一の国立オペラ・バレエ専用劇場である「新国立劇場オペラ劇場」について、皆様から親しみやすくわかりやすい愛称を2006年11月20日より募集いたします(締切:2007年1月31日)。今回この当劇場の愛称募集は、国民の皆様からよりいっそう愛され、親しまれ、また世界への発信力の更なる向上を目指し、今年度より「新国立劇場の活性化計画」を策定し、取り組んでいる活動の一環として展開するものです。(公式サイトより。)



私など、新国立劇場には既に立派な「新国」(しんこく)という愛称があるのではないかと思ってしまいますが、もちろんそれは劇場公認の愛称ではありません。一例として挙げられているMETに倣って「NNT」(?)、ロイヤルオペラハウスより「初台」(ただし実際の所在地は本町でしたが…。)などというのも出てくるかもしれませんが、やはり平凡過ぎる(?)のでしょう。そもそも「新国立劇場」という正式名自体が、何やら正体不明で、とても親しみにくいのですが、そのイメージを覆すような愛称が求められるのかと思います。

まだ何も浮かんで来ませんが、締め切りは来年の1月末日とのことです。気長に考えてみたいと思います。皆さんもどうでしょうか。
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