「始皇帝と大兵馬俑」 東京国立博物館

東京国立博物館
「始皇帝と大兵馬俑」 
2015/10/27~2016/2/21



東京国立博物館で開催中の「始皇帝と大兵馬俑」を見てきました。

秦の始皇帝の陵墓近くに埋められた兵馬俑。現在、8000体もの数が確認されているそうです。その兵馬俑を中心に、秦と始皇帝、ないし周辺の国々に所縁のある文物を紹介しています。

はじまりは天下統一。春秋戦国時代における秦の歴史です。「秦公鐘」は秦初期の数少ない文字資料。先祖の加護や版図の拡大を祈念しているそうです。状態が良いのに驚きました。紀元前8~5世紀のものとは思えません。青緑色の鈍い光を放っています。

「玉胸飾り」が目を引きました。オレンジ、ないし黄色や赤の石のつながるアクセサリー。玉は動物の形に彫られています。石は全部で297個、玉は59個あるそうです。元々は西周のもの。秦は彼の国の玉や青銅器に「憧れ」(キャプションより)、このように玉を取り入れました。

斬新な意匠に魅せられました。「金銀象嵌提梁壺」です。高さ20センチほどの小さな壺。青銅製でした。文字通り表面は象嵌です。金や銀、それに貴石が散りばめられています。ともかく紋様が美しい。龍や花を象っているそうですが、もはや抽象と呼んで差し支えないほどに自由でかつ流麗です。一つのデザインとして捉えても遜色ありません。

秦の都、咸陽での出土品もやって来ています。中でも大きいのが「取水口」と「水道管」です。いわゆる都市のインフラでもある水道。取水口の口径は50センチを超えていたかもしれません。同じく太い管とL字型に繋がっています。こうした導水施設は宮殿以外でも見つかっているそうです。また重量の単位を統一するための「両詔権」なる重りも展示。始皇帝の統治のあり方を垣間見ることが出来ます。

「鹿文瓦当」や「狩猟文瓦当」などの瓦も見どころの一つです。いずれも円い形をした瓦。当時、流行したそうです。モチーフは動物です。鹿が随分と写実的でした。前脚を伸ばし、後脚を蹴り上げては駆けています。躍動感がありました。

これで展示の半分です。後半がいよいよ兵馬俑です。まずは同じく埋められていた銅車馬。始皇帝が実際に乗ったと言われる車を再現した模型です。計2両。大きさは実際の半分ほどでした。展示品はともに複製のため、実物の様子を確かめることは叶いませんが、それでも造形しかり、彩色や紋様も目を見張るものがあります。部品は全部で6000個もあるそうです。実にリアルに出来ていました。


「始皇帝と大兵馬俑展」記念撮影コーナー

兵馬俑の大半は露出での展示です。軍団を形成すべく、将軍俑や軍吏俑、それに歩兵俑などの階級別に分かれています。いずれも先の銅車馬と同じように写実的です。各々の兵士の顔には異なった特徴があり、髪型も一つ一つ違っています。まさしく生き写しと言うべきなのでしょうか。モデルの息づかいとまではいきませんが、じっと見つめていると、さも動き出すような気配すら感じられます。

片足で跪いているのが「跪射俑」です。いわゆる待てのポーズ。頭を前に向け、遠くを見据えているようにも見えます。体を覆うのは甲冑。かなり立派です。彼の役割は射手でした。既に失われていますが、おそらくは左手で弓を支え、右手に乗せながら構えていたことでしょう。眉を吊り上げては険しい表情をしています。戦を前にしての緊張感も漂っていました。

レアな兵馬俑と言っても良いかもしれません。「将軍俑」です。何が珍しいのかと言えば数です。全8000体のうち僅か10体しか確認されていません。役割は司令官といったところでしょうか。胸から腹の辺りに防具をつけ、冠をかぶっています。表情はほかの兵馬俑と比べて穏やか。両手を前にやり、右手で左腕を掴むような仕草をしています。何か意味があるのかもしれません。



等身大の兵馬俑は約10体ほど。「大兵馬俑展」と名乗るにはいささか点数が少ないかもしれませんが、そもそも大変に貴重な品々です。展示に際して諸々と制約があるのかもしれません。ただそれでも背後に多数のレプリカを並べたり、兵馬俑坑を写した特大の写真パネルを掲示するなど、現地のスケールを伝える工夫は随所に垣間見えました。臨場感はあります。



年内の最終開館日に出かけてきましたが、なかなかの盛況でした。2016年2月21日まで開催されています。*年末年始休館日:12/24~1/1

「始皇帝と大兵馬俑」 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR
会期:2015年10月27日(火) ~2016年2月21日(日)
時間:9:30~17:00。
 *但し12月18日までの金曜日、10月31日、11月1日、2日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し11月2日、11月23日、1月11日は開館。11月4日、11月24日、1月12日は休館。年末年始(12月24日~1月1日)。
料金:一般1600(1300)円、大学生1200(900)円、高校生700(700)円。中学生以下無料
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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