都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」 ギャラリーエークワッド
ギャラリーエークワッド
「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」
6/1~8/9
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ギャラリーエークワッドで開催中の「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」を見てきました。
アメリカの絵本作家、ヴァージニア・リー・バートン(1909~1968)の「ちいさいおうち」は、1954年に日本に紹介され、以来、多くの人に読み継がれてきました。
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「ちいさいおうち」 1942年 ケープアン・ミュージアム
そのヴァージニア・リー・バートンの業績を辿る展覧会です。原画や資料が多数。国内の図書館のほか、バートンのゆかりの地で、「ちいさなおうち」の舞台ともなった、ボストン北東のケープアンのミュージアムからも作品がやって来ています。
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「スケッチブック」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム ほか
1909年、マサチューセッツのニュートンセンターに生まれたヴァージニア・リー・バートンは、カルフォルニアの美術学校で絵画とデザインを学び、当初は新聞のイラストレーターとして活動しました。1931年に夫のジョージ・デメトリアスと結婚。その後、ジョージが開校した絵画彫刻学校の夏のコースの開催地だったケープアンに移住しました。
風光明媚なケープアンには芸術家が集まり、既に1870年頃にはアーティストコロニーが形成されていました。バートンもその一人でした。夫妻は自宅の庭に羊を飼い、野菜や花を育てては、自然の中での生活を大切にしました。
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「クリスマスカード」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム
バートンはマルチなアーティストです。絵本作家以外にも、ダンサー、デザイナー、ライター、イラストレーターとして活動します。また教育者でもありました。元々、デザインを学んでいた作家は、納屋を改造したスタジオで、近隣の人々を集めてデザイン教室を開きました。
それがのちにフォリーコーブ・デザイナーズとして展開し、国際的に知られるまでに成長します。バートンはメンバーに手仕事の重要性を説きます。デザインから制作までを各々の手で行わせ、作品を売る仕組みも作り上げました。アメリカ国内にて多くの展覧会も開催されたそうです。
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「時のダンス」 1956年 ケープアン・ミュージアム ほか
その活動の一端を伝えるテキスタイルも興味深いのではないでしょうか。さらにバートンはデザインを世に伝えるべく、著作「DESIGN AND HOW!」の執筆にも乗り出します。結果的には絵本の仕事などで多忙を極め、未完に終わりますが、熱心に推敲を重ね、デザインの基本的な考えを明らかにしました。
バートンは絵本作家ではありますが、確かに展示を追っていくと、幅広い領域で創造的な活動をしていることが分かります。絵本における見返しや文字の入れ方に工夫を凝らしたのも、元来のデザイナーとしての才能があってからこそかもしれません。
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「ロビンフッドの歌」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム
傑作として名高いのが「ロビンフッドの歌」でした。イギリスに伝わる民謡を現代風にアレンジし、曲と詩と絵による123ページもの大作を制作します。興味深いのはモノクロームであることです。花や草を文字に絡ませるようにデザインしています。バートンは韻文を昔のままの姿で描きたいと考え、古文書や12世紀も写本なども研究しました。さらに草花は植物図鑑を参照して緻密に表現しています。妥協を許さない作家だったのかもしれません。仕事に対する姿勢は常に厳格だったようです。
「ちいさいおうち/バージニア・リー・バートン/岩波書店」
絵本の最初のページにバートンはほぼ必ず献辞が添えました。「いたずら機関車ちゅうちゅう」は長男、「マイク・マリガンとスチーム・ショべル」は次男に、そして「ちいさいおうち」は夫へ捧げられています。そこに彼女の家族への愛情も見て取れるのではないでしょうか。バートンは夫や子を愛した家庭人でもありました。
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「ちいさいおうち 原画」 1942年 ミネソタ大学図書館カーランコレクション
ハイライトは「ちいさいおうち」の原画かもしれません。1942年の制作です。主人公はまさにおうちです。ここでバートンは20世紀の工業化のプロセスを踏まえつつ、時間の流れや四季の移ろいを見据えながら、自然や生命の大切さを表現しました。そしてアメリカの優れた絵本に向けて授与されるコールデコット賞を受賞しました。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
会場内には実際に絵本を手に取って読むことの出来るコーナーもあります。もちろん「ちいさいおうち」もありました。この名作を原画を踏まえながら、改めてじっくり味わうのも良いかもしれません。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
さらに最奥部には「ちいさいおうち」の模型も登場しています。家自体はケープアンに多い「ケープコッド様式」と呼ばれる伝統的な家屋をモチーフにしているそうです。なお全面的に撮影が可能です。「ちいさなおうち」を背に記念撮影している方も見受けられました。
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「ヴァージニア・リー・バートン センス・オブ・プレイス」 映像56分54秒
映像、「ヴァージニア・リー・バートン センス・オブ・プレイス」が全部で1時間弱ほどありました。観覧をご希望の方は時間に余裕を持ってお出かけ下さい。
ギャラリーエークワッドは、東陽町駅近くの竹中工務店東京本社ビル内の1階です。月曜から土曜がオープン、日曜、祝日はお休みです。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
手狭なスペースではありますが、資料ほか考証も綿密で、無料とは思えないほどに充実していました。
8月9日まで開催されています。おすすめします。
「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」 ギャラリーエークワッド
会期:6月1日(木)~8月9日(水)
休廊:日曜・祝日。
時間:10:00~18:00。*最終日は17時まで。
料金:無料。
住所:江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1階。
交通:東京メトロ東西線東陽町駅3番出口徒歩3分。
「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」
6/1~8/9
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ギャラリーエークワッドで開催中の「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」を見てきました。
アメリカの絵本作家、ヴァージニア・リー・バートン(1909~1968)の「ちいさいおうち」は、1954年に日本に紹介され、以来、多くの人に読み継がれてきました。
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「ちいさいおうち」 1942年 ケープアン・ミュージアム
そのヴァージニア・リー・バートンの業績を辿る展覧会です。原画や資料が多数。国内の図書館のほか、バートンのゆかりの地で、「ちいさなおうち」の舞台ともなった、ボストン北東のケープアンのミュージアムからも作品がやって来ています。
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「スケッチブック」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム ほか
1909年、マサチューセッツのニュートンセンターに生まれたヴァージニア・リー・バートンは、カルフォルニアの美術学校で絵画とデザインを学び、当初は新聞のイラストレーターとして活動しました。1931年に夫のジョージ・デメトリアスと結婚。その後、ジョージが開校した絵画彫刻学校の夏のコースの開催地だったケープアンに移住しました。
風光明媚なケープアンには芸術家が集まり、既に1870年頃にはアーティストコロニーが形成されていました。バートンもその一人でした。夫妻は自宅の庭に羊を飼い、野菜や花を育てては、自然の中での生活を大切にしました。
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「クリスマスカード」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム
バートンはマルチなアーティストです。絵本作家以外にも、ダンサー、デザイナー、ライター、イラストレーターとして活動します。また教育者でもありました。元々、デザインを学んでいた作家は、納屋を改造したスタジオで、近隣の人々を集めてデザイン教室を開きました。
それがのちにフォリーコーブ・デザイナーズとして展開し、国際的に知られるまでに成長します。バートンはメンバーに手仕事の重要性を説きます。デザインから制作までを各々の手で行わせ、作品を売る仕組みも作り上げました。アメリカ国内にて多くの展覧会も開催されたそうです。
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「時のダンス」 1956年 ケープアン・ミュージアム ほか
その活動の一端を伝えるテキスタイルも興味深いのではないでしょうか。さらにバートンはデザインを世に伝えるべく、著作「DESIGN AND HOW!」の執筆にも乗り出します。結果的には絵本の仕事などで多忙を極め、未完に終わりますが、熱心に推敲を重ね、デザインの基本的な考えを明らかにしました。
バートンは絵本作家ではありますが、確かに展示を追っていくと、幅広い領域で創造的な活動をしていることが分かります。絵本における見返しや文字の入れ方に工夫を凝らしたのも、元来のデザイナーとしての才能があってからこそかもしれません。
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「ロビンフッドの歌」 制作年不明 ケープアン・ミュージアム
傑作として名高いのが「ロビンフッドの歌」でした。イギリスに伝わる民謡を現代風にアレンジし、曲と詩と絵による123ページもの大作を制作します。興味深いのはモノクロームであることです。花や草を文字に絡ませるようにデザインしています。バートンは韻文を昔のままの姿で描きたいと考え、古文書や12世紀も写本なども研究しました。さらに草花は植物図鑑を参照して緻密に表現しています。妥協を許さない作家だったのかもしれません。仕事に対する姿勢は常に厳格だったようです。
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絵本の最初のページにバートンはほぼ必ず献辞が添えました。「いたずら機関車ちゅうちゅう」は長男、「マイク・マリガンとスチーム・ショべル」は次男に、そして「ちいさいおうち」は夫へ捧げられています。そこに彼女の家族への愛情も見て取れるのではないでしょうか。バートンは夫や子を愛した家庭人でもありました。
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「ちいさいおうち 原画」 1942年 ミネソタ大学図書館カーランコレクション
ハイライトは「ちいさいおうち」の原画かもしれません。1942年の制作です。主人公はまさにおうちです。ここでバートンは20世紀の工業化のプロセスを踏まえつつ、時間の流れや四季の移ろいを見据えながら、自然や生命の大切さを表現しました。そしてアメリカの優れた絵本に向けて授与されるコールデコット賞を受賞しました。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
会場内には実際に絵本を手に取って読むことの出来るコーナーもあります。もちろん「ちいさいおうち」もありました。この名作を原画を踏まえながら、改めてじっくり味わうのも良いかもしれません。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
さらに最奥部には「ちいさいおうち」の模型も登場しています。家自体はケープアンに多い「ケープコッド様式」と呼ばれる伝統的な家屋をモチーフにしているそうです。なお全面的に撮影が可能です。「ちいさなおうち」を背に記念撮影している方も見受けられました。
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「ヴァージニア・リー・バートン センス・オブ・プレイス」 映像56分54秒
映像、「ヴァージニア・リー・バートン センス・オブ・プレイス」が全部で1時間弱ほどありました。観覧をご希望の方は時間に余裕を持ってお出かけ下さい。
ギャラリーエークワッドは、東陽町駅近くの竹中工務店東京本社ビル内の1階です。月曜から土曜がオープン、日曜、祝日はお休みです。
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「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』」会場風景
手狭なスペースではありますが、資料ほか考証も綿密で、無料とは思えないほどに充実していました。
とても貴重な展覧会「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』-時代を超えて生き続けるメッセージ」が開催されますよ。~8/9(水)です。ぜひチェックしてみてくださいね。https://t.co/8aT9VwUPoC#ちいさいおうち #絵本 #展覧会
— 絵本ナビ (@EhonNavi) 2017年6月2日
8月9日まで開催されています。おすすめします。
「ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』ー時代を超えて生き続けるメッセージ」 ギャラリーエークワッド
会期:6月1日(木)~8月9日(水)
休廊:日曜・祝日。
時間:10:00~18:00。*最終日は17時まで。
料金:無料。
住所:江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1階。
交通:東京メトロ東西線東陽町駅3番出口徒歩3分。
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