都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
山種美術館の「川端龍子展」の後期展示が始まりました
山種美術館
「特別展 没後50年記念 川端龍子ー超ド級の日本画」
6/24~8/20
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山種美術館の川端龍子展もいよいよ残すところ1ヶ月弱を切りました。7月25日より幾つかの作品を入れ替えての後期展示が始まりました。
新たに出展されたのは5点です。(加えて巻き替えあり。)全体の70点余からすれば多くありませんが、「金閣炎上」や「八ツ橋」などの大作も登場し、見応えのある内容となっています。
その「金閣炎上」は想像以上の力作でした。モチーフは、かの有名な昭和25年の放火事件です。7月2日の未明、あろうことか鹿苑寺の金閣が放火にあい、人的被害こそなかったものの、重要な文化財とともに焼失してしまいました。
翌日、新聞で灰燼に帰した現場写真を目にした龍子は、「これは絵になると画心が燃焼」(解説より)として、取材を敢行します。意欲的に取り組んだのか、早く2ヶ月後には同作を完成させ、青龍展で発表しました。
まるで眼前で炎上を目にしたかのような臨場感です。闇に沈む庭を背景に、赤々と燃え上がる炎が金閣を包み込んでいます。火炎は仏画を連想させる古典的な描法で着色していました。細かな金箔による火の粉も勢いよく吹き上がっています。金閣の建物自体はもはや炎に包まれて崩壊寸前なのか、震えるような墨線でシルエット状に描かれていました。これほど絶妙な墨のニュアンスを見せる作品も滅多にないのではないでしょうか。龍子の高い画力を伺わせるものがありました。
奇抜なのが「華曲」でした。右隻は牡丹で、龍子が好んだ花でした。対する左隻は花の王、牡丹に合わせ、百獣の王である獅子を描いています。黒い葉を従えた白い牡丹は何とも芳しい。香りが伝わってくるかのようです。
獅子の格好が独特です。蝶と遊ぶとありましたが、ぐるりと一周、さもとぐろを巻いてジャンプするように身をくねらせています。鳥獣戯画からの引用も指摘されているそうですが、なぜにこのように獅子を描いたのでしょうか。滑稽ですらありました。
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川端龍子「八ツ橋」 昭和20年 山種美術館
後期会期中は1点、「八ツ橋」の撮影が出来ます。左右へ花開くのがカキツバタで、中央を八ツ橋が貫いています。いうまでもなく伊勢物語の東下りに取材した作品です。かの光琳の「八橋図屏風」を参照したとされています。
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川端龍子「八ツ橋」(部分) 昭和20年 山種美術館
花群が整理されているからか、全体的には見通しの良い構図ですが、花一つ一つを見ればやや写実的で、光琳画とは異なる表現を志向しているように見受けられます。龍子自身、「痩せた歯切れを感じる。」と述べているそうですが、確かに花はいささか刺々しく、痩せているようにも思えなくはありません。終戦の年の爆撃の最中に描かれた一枚だそうです。そうした社会背景も反映されているのかもしれません。
ほかにも麦の穂に鳥の雛を表した「土」や、幹の木肌の質感表現に長けた「さくら」なども出展。例の超ド級の「香炉峰」なども前期から引き続き展示されています。あわせて見入りました。
「川端龍子ー超ド級の日本画」 山種美術館(はろるど)
会場内は混み合うほどではないものの、多くの方で賑わっていました。
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8月20日まで開催されています。
「特別展 没後50年記念 川端龍子ー超ド級の日本画」 山種美術館(@yamatanemuseum)
会期:6月24日(土)~8月20日(日)
休館:月曜日。但し7/17(月)は開館、7/18(火)は休館。
時間:10:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*きもの割引:きもので来館すると団体割引料金を適用。
*リピーター割:使用済み有料入場券を提示すると団体割引料金を適用。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。渋谷駅東口より都バス学03番「日赤医療センター前」行きに乗車、「東4丁目」下車、徒歩2分。
「特別展 没後50年記念 川端龍子ー超ド級の日本画」
6/24~8/20
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山種美術館の川端龍子展もいよいよ残すところ1ヶ月弱を切りました。7月25日より幾つかの作品を入れ替えての後期展示が始まりました。
新たに出展されたのは5点です。(加えて巻き替えあり。)全体の70点余からすれば多くありませんが、「金閣炎上」や「八ツ橋」などの大作も登場し、見応えのある内容となっています。
その「金閣炎上」は想像以上の力作でした。モチーフは、かの有名な昭和25年の放火事件です。7月2日の未明、あろうことか鹿苑寺の金閣が放火にあい、人的被害こそなかったものの、重要な文化財とともに焼失してしまいました。
翌日、新聞で灰燼に帰した現場写真を目にした龍子は、「これは絵になると画心が燃焼」(解説より)として、取材を敢行します。意欲的に取り組んだのか、早く2ヶ月後には同作を完成させ、青龍展で発表しました。
まるで眼前で炎上を目にしたかのような臨場感です。闇に沈む庭を背景に、赤々と燃え上がる炎が金閣を包み込んでいます。火炎は仏画を連想させる古典的な描法で着色していました。細かな金箔による火の粉も勢いよく吹き上がっています。金閣の建物自体はもはや炎に包まれて崩壊寸前なのか、震えるような墨線でシルエット状に描かれていました。これほど絶妙な墨のニュアンスを見せる作品も滅多にないのではないでしょうか。龍子の高い画力を伺わせるものがありました。
川端龍子 《華曲》 山種美術館。左隻に獣王・獅子と蝶、右隻に花王・牡丹という取り合わせの二曲屛風。蝶にじゃれる獅子の頭部の描かれ方は、実は《鳥獣人物戯画》(高山寺)乙巻の後半に登場する獅子と共通しているんですよ。(山崎) pic.twitter.com/rhiGhHSWyN
— 山種美術館 (@yamatanemuseum) 2017年7月26日
奇抜なのが「華曲」でした。右隻は牡丹で、龍子が好んだ花でした。対する左隻は花の王、牡丹に合わせ、百獣の王である獅子を描いています。黒い葉を従えた白い牡丹は何とも芳しい。香りが伝わってくるかのようです。
獅子の格好が独特です。蝶と遊ぶとありましたが、ぐるりと一周、さもとぐろを巻いてジャンプするように身をくねらせています。鳥獣戯画からの引用も指摘されているそうですが、なぜにこのように獅子を描いたのでしょうか。滑稽ですらありました。
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川端龍子「八ツ橋」 昭和20年 山種美術館
後期会期中は1点、「八ツ橋」の撮影が出来ます。左右へ花開くのがカキツバタで、中央を八ツ橋が貫いています。いうまでもなく伊勢物語の東下りに取材した作品です。かの光琳の「八橋図屏風」を参照したとされています。
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川端龍子「八ツ橋」(部分) 昭和20年 山種美術館
花群が整理されているからか、全体的には見通しの良い構図ですが、花一つ一つを見ればやや写実的で、光琳画とは異なる表現を志向しているように見受けられます。龍子自身、「痩せた歯切れを感じる。」と述べているそうですが、確かに花はいささか刺々しく、痩せているようにも思えなくはありません。終戦の年の爆撃の最中に描かれた一枚だそうです。そうした社会背景も反映されているのかもしれません。
ほかにも麦の穂に鳥の雛を表した「土」や、幹の木肌の質感表現に長けた「さくら」なども出展。例の超ド級の「香炉峰」なども前期から引き続き展示されています。あわせて見入りました。
「川端龍子ー超ド級の日本画」 山種美術館(はろるど)
会場内は混み合うほどではないものの、多くの方で賑わっていました。
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8月20日まで開催されています。
「特別展 没後50年記念 川端龍子ー超ド級の日本画」 山種美術館(@yamatanemuseum)
会期:6月24日(土)~8月20日(日)
休館:月曜日。但し7/17(月)は開館、7/18(火)は休館。
時間:10:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*きもの割引:きもので来館すると団体割引料金を適用。
*リピーター割:使用済み有料入場券を提示すると団体割引料金を適用。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。渋谷駅東口より都バス学03番「日赤医療センター前」行きに乗車、「東4丁目」下車、徒歩2分。
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