都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「トム・サックス ティーセレモニー」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「トム・サックス ティーセレモニー」
2019/4/20~6/23
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「トム・サックス ティーセレモニー」を見て来ました。
1966年にニューヨーク州で生まれたトム・サックスは、2012年から茶道を学ぶと、日本の伝統的な茶の湯を、独自の解釈で再構築した作品を制作してきました。
それにしても「独自の解釈」とは一体、どのような内容なのでしょうか。率直なところ、会場へ足を踏み入れると、目の前の光景に驚かされました。
と言うのも、サックスは、茶器や茶道具だけでなく、茶室から庭、さらには鯉の泳ぐ池などの茶の湯にまつわる全ての空間を、まるでDIYのように工業の素材や日用品にて作り上げていたからです。
冒頭で姿を現したのが、イサム・ノグチの彫刻にオマージュを寄せた「Narrow Gate」なるオブジェで、石で作られているかと思いきや、ダンボールで出来ていました。サックスは、イサム・ノグチの「古い伝統の真の発展を目指す」(解説より)の思想に共感し、一連の茶の湯の世界を築いていて、「ティーセレモニー」の展示も、2016年にニューヨークのノグチ美術館にて開かれました。その後、サンフランシスコやダラスの芸術や彫刻センターへと巡回しました。
その先にはトタン屋根をのせた門があり、進むと茶庭に当たる露地のうち、待合から中門へ至る外露地が築かれていました。ここで目立つのは、石を模した池で、水が循環する中、赤と黒の鯉が泳いでいました。
また飛行機のユニットトイレを雪隠、すなわち便所に見立てていた上、椅子の脚やトタン板で築いた石灯籠なども置かれていました。何とも奇想天外ではないでしょうか。
さらに合板の壁の間にある中門を潜ると、内露地が広がっていて、赤い斜めストライプの柵や断熱材、それにトタンで作られた茶室がありました。なおこの赤いストライプの柵は、工事現場や立ち入り禁止の場所に置かれる柵で、サックスが良く用いる素材の1つでした。
このほかにも茶庭に設置される手水鉢ことつくばいや、盆栽、石塔、飛び石なども置かれていましたが、全てが日用品や工業用の素材で作られていました。たくさんの歯ブラシで出来た松の盆栽も面白いかもしれません。
また随所にアメリカのカルチャーが盛り込まれているのも興味深いところで、中にはスタートレックのザレクを掛け軸に仕立てた作品もありました。なお素材には不織布や荷造りテープとともに、軍用テントなども用いられていました。
そして茶の湯とともに、サックスが従来より関わってきたNASAのモチーフも重要で、自ら作ったというNASAのロゴ入りの茶碗もありました。なおこの展示も、かつてニューヨークで行われ、火星探査に赴いた宇宙飛行士が茶の湯をするという「スペース・プログラム : MARS展」を基にしているそうです。
入口すぐのシアターも見逃せません。ここではNASAのパイプ椅子が並ぶ中、サックスが実際に客を招き、自作の中で茶の湯、すなわち「ティーセレモニー」を行う光景が映像で紹介されていました。なお映像は約15分弱で、途中に入場することは出来ません。
先に映像を見るか、先に展示を一通り回るのかは、鑑賞者の判断に任せられていますが、映像は種明かし的な内容もあるので、どちらかと言えば、最後に見た方がより楽しめるのかもしれません。
チープとも受け止められる素材を用いながらも、個々の作品には彫刻としての強度があり、茶室はもとより、外露地、内露地へと続く空間全体からして、サックスの茶の湯に対しての強いリスペクトがひしひしと感じられました。まさに利休の見立ての世界が、サックスの手を介して現代に再生されたとして捉えても良いかもしれません。また本来の茶の湯とサックスの「ティーセレモニー」の間に見え隠れする絶妙なズレも、引き付けられるものがありました。
撮影が可能です。6月23日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。
「トム・サックス ティーセレモニー」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:2019年4月20日(土)~6月23日(日)
休館:月曜日 *祝日の場合は翌火曜日、但し4月30日は開館。
時間:11:00~19:00
*金・土は20時まで開館。
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
*同時開催中の「収蔵品展066 コレクター頌 寺田小太郎氏を偲んで」、「project N 75 衣真一郎」の入場料を含む。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「トム・サックス ティーセレモニー」
2019/4/20~6/23
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「トム・サックス ティーセレモニー」を見て来ました。
1966年にニューヨーク州で生まれたトム・サックスは、2012年から茶道を学ぶと、日本の伝統的な茶の湯を、独自の解釈で再構築した作品を制作してきました。
それにしても「独自の解釈」とは一体、どのような内容なのでしょうか。率直なところ、会場へ足を踏み入れると、目の前の光景に驚かされました。
と言うのも、サックスは、茶器や茶道具だけでなく、茶室から庭、さらには鯉の泳ぐ池などの茶の湯にまつわる全ての空間を、まるでDIYのように工業の素材や日用品にて作り上げていたからです。
冒頭で姿を現したのが、イサム・ノグチの彫刻にオマージュを寄せた「Narrow Gate」なるオブジェで、石で作られているかと思いきや、ダンボールで出来ていました。サックスは、イサム・ノグチの「古い伝統の真の発展を目指す」(解説より)の思想に共感し、一連の茶の湯の世界を築いていて、「ティーセレモニー」の展示も、2016年にニューヨークのノグチ美術館にて開かれました。その後、サンフランシスコやダラスの芸術や彫刻センターへと巡回しました。
その先にはトタン屋根をのせた門があり、進むと茶庭に当たる露地のうち、待合から中門へ至る外露地が築かれていました。ここで目立つのは、石を模した池で、水が循環する中、赤と黒の鯉が泳いでいました。
また飛行機のユニットトイレを雪隠、すなわち便所に見立てていた上、椅子の脚やトタン板で築いた石灯籠なども置かれていました。何とも奇想天外ではないでしょうか。
さらに合板の壁の間にある中門を潜ると、内露地が広がっていて、赤い斜めストライプの柵や断熱材、それにトタンで作られた茶室がありました。なおこの赤いストライプの柵は、工事現場や立ち入り禁止の場所に置かれる柵で、サックスが良く用いる素材の1つでした。
このほかにも茶庭に設置される手水鉢ことつくばいや、盆栽、石塔、飛び石なども置かれていましたが、全てが日用品や工業用の素材で作られていました。たくさんの歯ブラシで出来た松の盆栽も面白いかもしれません。
また随所にアメリカのカルチャーが盛り込まれているのも興味深いところで、中にはスタートレックのザレクを掛け軸に仕立てた作品もありました。なお素材には不織布や荷造りテープとともに、軍用テントなども用いられていました。
そして茶の湯とともに、サックスが従来より関わってきたNASAのモチーフも重要で、自ら作ったというNASAのロゴ入りの茶碗もありました。なおこの展示も、かつてニューヨークで行われ、火星探査に赴いた宇宙飛行士が茶の湯をするという「スペース・プログラム : MARS展」を基にしているそうです。
入口すぐのシアターも見逃せません。ここではNASAのパイプ椅子が並ぶ中、サックスが実際に客を招き、自作の中で茶の湯、すなわち「ティーセレモニー」を行う光景が映像で紹介されていました。なお映像は約15分弱で、途中に入場することは出来ません。
先に映像を見るか、先に展示を一通り回るのかは、鑑賞者の判断に任せられていますが、映像は種明かし的な内容もあるので、どちらかと言えば、最後に見た方がより楽しめるのかもしれません。
チープとも受け止められる素材を用いながらも、個々の作品には彫刻としての強度があり、茶室はもとより、外露地、内露地へと続く空間全体からして、サックスの茶の湯に対しての強いリスペクトがひしひしと感じられました。まさに利休の見立ての世界が、サックスの手を介して現代に再生されたとして捉えても良いかもしれません。また本来の茶の湯とサックスの「ティーセレモニー」の間に見え隠れする絶妙なズレも、引き付けられるものがありました。
撮影が可能です。6月23日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。
「トム・サックス ティーセレモニー」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:2019年4月20日(土)~6月23日(日)
休館:月曜日 *祝日の場合は翌火曜日、但し4月30日は開館。
時間:11:00~19:00
*金・土は20時まで開館。
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
*同時開催中の「収蔵品展066 コレクター頌 寺田小太郎氏を偲んで」、「project N 75 衣真一郎」の入場料を含む。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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