都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「奈良大和四寺のみほとけ」 東京国立博物館・本館
東京国立博物館・本館11室
「奈良大和四寺のみほとけ」
2019/6/18~9/23
東京国立博物館・本館11室で開催中の「奈良大和四寺のみほとけ」を見てきました。
奈良県北東部に位置し、7世紀から8世紀にかけて創建された、岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の各寺院には、古くから人々の信仰を集め、多くの仏像が築かれてきました。
その四寺より、国宝4件、重要文化財9件を含む、計15件の仏像、及び文書が、東京国立博物館へとやって来ました。
入口正面に待ち構えていた、長谷寺の「十一面観音菩薩立像」からして魅力的でした。高さ10メートルを超える本尊を模した小像で、極めて精緻に細工された光背を従えつつ、左手に水瓶、下に降ろした右手で錫杖をとり、いささか険しい表情を取りながら立っていました。
また同寺の仏像では、通常、本尊の両脇に安置されている「雨宝童子立像」と「難蛇龍王立像」も存在感があったのではないでしょうか。ともに2016年の「長谷寺の名宝と十一面観音の信仰」展(あべのハルカス美術館)で、初めて一般の展覧会で公開された仏像で、大きな頭部をはじめとした重厚感のある「雨宝童子立像」はもとより、中国風の服を着て、頭上に龍を抱いた「難蛇龍王立像」も、力強い造形を見せていました。
古代政治の中心地、飛鳥に位置する岡寺の仏像では、飛鳥時代後期から奈良時代にかけて活躍した開祖を象った「義淵僧正坐像」に並々ならぬ迫力が感じられました。深く刻まれた皺を露わに、やや目を付しながら、静かに座る姿を捉えていて、肋骨や目や口元の周りの皮膚などは、どこか生々しいまでに表現されていました。また同寺は、珍しい彫刻の涅槃である「釈迦涅槃像」にも目が止まりました。右手を頭に添え、左手を体に沿うように伸ばしては、横たわる釈迦を捉えていて、表情はやや涼しげでもあり、さも気持ちよく眠りこけているかのようでした。
快慶の傑作、「文殊五尊像」が本尊であることで知られる安倍文殊院からは、「文殊菩薩像」の像内から発見された経巻が出展されていました。平安時代末から鎌倉時代前期に活動し、文殊菩薩像を発願した僧、明遍が書写したもので、水色に染まった美しい色紙にも目を奪われました。
ハイライトは、室生寺の4体の仏像、すなわち「地蔵菩薩立像」と「十一面観音菩薩立像」、それに「十二神将立像(巳神・酉神)」と捉えて差し支えありません。全てが展示室奥の一台のステージに載っていて、中央奥に「地蔵菩薩立像」と「十一面観音菩薩立像」、そして手前の左右に「十二神将立像」の「巳神」と「酉神」が並んで展示されていました。
どっしりとした体躯でありながらも、ふくよかな丸顔ゆえか、親しみやすくもある「十一面観音菩薩立像」と、やや小ぶりの「地蔵菩薩立像」は、いずれも板に彩色で描いた板光背を従えていて、とりわけ唐草の模様が細かに描かれた「地蔵菩薩立像」は、おおよそ10世紀の作とは思えないほど鮮やかな色彩を見せていました。これほど絵画としても美しい光背もなかなかないかもしれません。
かつて「国中」(くになか)」と呼ばれた地域に位置する岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院では、現在、「奈良大和四寺」として、参拝客誘致に積極的に取り組んでいるそうです。私も岡寺と安倍文殊院へは参拝したことがありますが、室生寺、長谷寺へは足を伸ばしたことがありません。一度は現地で仏像を拝めればと思いました。
会場は本館の11室で、特別展の展示室ではありません。本館正面玄関すぐ右手に位置し、いつも総合文化展(常設展)で仏像が公開される展示室にて行われています。
よって今回も入場に際してチケットを提示する必要はなく、総合文化展チケットで観覧可能です。(特別展開催時は特別展チケットでも観覧可。)東博にお出かけの際はお見逃しなきようにおすすめします。
なお通常、総合文化展の仏像展示では一部の撮影も可能ですが、「奈良大和四寺のみほとけ」では全面的に撮影が出来ません。
9月23日まで開催されています。
「奈良大和四寺のみほとけ」 東京国立博物館・本館11室(@TNM_PR)
会期:2019年6月18日(火)~9月23日(月)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで開館。
*9月20日(金)、21日(土)は22時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。7月16日(火)、9月17日(火)。但し7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下。
*( )は20名以上の団体料金。
*開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)でも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「奈良大和四寺のみほとけ」
2019/6/18~9/23
東京国立博物館・本館11室で開催中の「奈良大和四寺のみほとけ」を見てきました。
奈良県北東部に位置し、7世紀から8世紀にかけて創建された、岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の各寺院には、古くから人々の信仰を集め、多くの仏像が築かれてきました。
その四寺より、国宝4件、重要文化財9件を含む、計15件の仏像、及び文書が、東京国立博物館へとやって来ました。
入口正面に待ち構えていた、長谷寺の「十一面観音菩薩立像」からして魅力的でした。高さ10メートルを超える本尊を模した小像で、極めて精緻に細工された光背を従えつつ、左手に水瓶、下に降ろした右手で錫杖をとり、いささか険しい表情を取りながら立っていました。
また同寺の仏像では、通常、本尊の両脇に安置されている「雨宝童子立像」と「難蛇龍王立像」も存在感があったのではないでしょうか。ともに2016年の「長谷寺の名宝と十一面観音の信仰」展(あべのハルカス美術館)で、初めて一般の展覧会で公開された仏像で、大きな頭部をはじめとした重厚感のある「雨宝童子立像」はもとより、中国風の服を着て、頭上に龍を抱いた「難蛇龍王立像」も、力強い造形を見せていました。
古代政治の中心地、飛鳥に位置する岡寺の仏像では、飛鳥時代後期から奈良時代にかけて活躍した開祖を象った「義淵僧正坐像」に並々ならぬ迫力が感じられました。深く刻まれた皺を露わに、やや目を付しながら、静かに座る姿を捉えていて、肋骨や目や口元の周りの皮膚などは、どこか生々しいまでに表現されていました。また同寺は、珍しい彫刻の涅槃である「釈迦涅槃像」にも目が止まりました。右手を頭に添え、左手を体に沿うように伸ばしては、横たわる釈迦を捉えていて、表情はやや涼しげでもあり、さも気持ちよく眠りこけているかのようでした。
快慶の傑作、「文殊五尊像」が本尊であることで知られる安倍文殊院からは、「文殊菩薩像」の像内から発見された経巻が出展されていました。平安時代末から鎌倉時代前期に活動し、文殊菩薩像を発願した僧、明遍が書写したもので、水色に染まった美しい色紙にも目を奪われました。
ハイライトは、室生寺の4体の仏像、すなわち「地蔵菩薩立像」と「十一面観音菩薩立像」、それに「十二神将立像(巳神・酉神)」と捉えて差し支えありません。全てが展示室奥の一台のステージに載っていて、中央奥に「地蔵菩薩立像」と「十一面観音菩薩立像」、そして手前の左右に「十二神将立像」の「巳神」と「酉神」が並んで展示されていました。
どっしりとした体躯でありながらも、ふくよかな丸顔ゆえか、親しみやすくもある「十一面観音菩薩立像」と、やや小ぶりの「地蔵菩薩立像」は、いずれも板に彩色で描いた板光背を従えていて、とりわけ唐草の模様が細かに描かれた「地蔵菩薩立像」は、おおよそ10世紀の作とは思えないほど鮮やかな色彩を見せていました。これほど絵画としても美しい光背もなかなかないかもしれません。
昨日6/18の夕刻、特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」の報道内覧会が行われました。奈良県北東部に所在する岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の名品を紹介する本展は、総合文化展の観覧料金でご覧いただけます。会期は9/23まで。※会場(本館11室)内は撮影できませんhttps://t.co/JQlorX6rgY pic.twitter.com/5M66h9YszN
— トーハク広報室 (@TNM_PR) 2019年6月19日
かつて「国中」(くになか)」と呼ばれた地域に位置する岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院では、現在、「奈良大和四寺」として、参拝客誘致に積極的に取り組んでいるそうです。私も岡寺と安倍文殊院へは参拝したことがありますが、室生寺、長谷寺へは足を伸ばしたことがありません。一度は現地で仏像を拝めればと思いました。
会場は本館の11室で、特別展の展示室ではありません。本館正面玄関すぐ右手に位置し、いつも総合文化展(常設展)で仏像が公開される展示室にて行われています。
よって今回も入場に際してチケットを提示する必要はなく、総合文化展チケットで観覧可能です。(特別展開催時は特別展チケットでも観覧可。)東博にお出かけの際はお見逃しなきようにおすすめします。
なお通常、総合文化展の仏像展示では一部の撮影も可能ですが、「奈良大和四寺のみほとけ」では全面的に撮影が出来ません。
9月23日まで開催されています。
「奈良大和四寺のみほとけ」 東京国立博物館・本館11室(@TNM_PR)
会期:2019年6月18日(火)~9月23日(月)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで開館。
*9月20日(金)、21日(土)は22時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。7月16日(火)、9月17日(火)。但し7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下。
*( )は20名以上の団体料金。
*開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)でも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )