「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」
2019/8/2~8/25



資生堂ギャラリーで開催中の「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」を見てきました。

1982年に愛媛県に生まれた小林清乃は、かねてより無名の人や市井の人が残した言葉に関心を寄せては、「私とそれ以外の世界の関わり」(解説より)をテーマにした作品を発表してきました。



暗がりの空間の中、ステージの上で円を描くように並ぶのが、7台の小さなスピーカーで、いずれも女性の音声で、日常の何気ない出来事と思しき内容のテキストが日本語でひたすらに語られていました。しかししばらく聞いていくと、それぞれには戦争についての話題があるなど、少なくとも現代の日本とは異なった時代が舞台であることが分かりました。



実際のところ、そのテキストは、1945年の3月から約1年間、東京の女学校を卒業した7人の残した手紙で、現在の同世代の女性が演じつつ朗読していたものでした。そして手紙の故か、くだけた話し言葉ではなく、書き言葉であるのも特徴でした。今ではなかなか聞くことの出来ない畏まった言葉のように思えるかもしれません。



それぞれの手紙は、日付に基づき、時系列でかつ同時にスピーカー上で再生されていて、相互に関わりあうようで、すれ違うような、複雑な音声のコミュニケーションが築かれていました。



小林は一連のサウンドインスタレーション「Polyphony 1945」において、戦争によって散り散りになった女性が手紙の中で語った「ふたたび、逢いたい」との気持ちを、過去の手紙の声と今に発する声にて、時空を超えて再会させたいと考えたそうです。中には東京大空襲で被災したり、終戦前に広島へと疎開した女学生もいました。



バッハの「平均律 クラヴィア第13番」のピアノの厳かな調べが聞こえてきました。戦争中もクラシック番組は放送されていて、こうしたピアノ曲を女学生らが聞きつつ、手紙に感想を書きあったこともあったそうです。



2つの原子爆弾が甚大な被害をもたらし、多くの人命を失いつつ、ようやく終戦へと至った1945年の8月から、今年で74年を迎えます。物静かに、しかしどこか気位高く日常を語る女学生の声を通し、改めて戦争や平和について考えたい展覧会と言えるかもしれません。



【第13回 shiseido art egg 展示スケジュール】
今村文展: 2019年7月5日(金)~7月28日(日)
小林清乃展:2019年8月2日(金)~8月25日(日)
遠藤薫展: 2019年8月30日(金)~9月22日(日)


8月25日まで開催されています。*写真はいずれも「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」会場風景及び展示作品。

「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2019年8月2日(金)~8月25日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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