「川島小鳥 まだなまえがないものがすき」 キヤノンギャラリーS

キヤノンギャラリーS
「川島小鳥 まだなまえがないものがすき」
2019/7/20~9/9



キヤノンギャラリーSで開催中の「川島小鳥 まだなまえがないものがすき」を見てきました。

1980年に生まれた写真家の川島小鳥は、2007年に「BABY BABY」でデビューを果たすと、2015年には「明星」で第40回木村伊兵衛写真賞を受賞するなどして評価を得てきました。



一面の暗がりの展示室の中に大小様々な写真が目に飛び込んできました。それが川島が過去に撮りためてきた「数えきれない世界のカケラ」なる作品で、モノクロ、カラーを合わせて約100点ほどが展示されていました。



いずれの写真も都市の日常的な風景などを捉えていて、とりわけ人を写したポートレートには、対象に近しい親密な雰囲気が感じられました。また作品は自然体でありながらも、モチーフを部分的に切り取った、風景の断片、言わば「カケラ」を捉えているような印象も受けました。



ラーメン屋のカウンターと思しき店内や、電車の中でつり革に両手でつかまって立つ人、そしてゴミが無造作に捨てられたゴミ捨て場のほか、たくさんの食品サンプルの並ぶショウウインドウ、はたまた昼間の山手線のホーム、あるいは車窓から眺めた雑多な街並みの向こうのスカイツリーの写真なども目を引きました。それこそ誰もが目にするような光景と言えるかもしれません。



また必ずしも明示的ではないものの、幾分、年代を感じさせる写真が混じっているのも興味深いところでした。実際に作品の中には20年前に撮った写真も含まれていました。



さて会場では川島の写真の他にもう1つ、重要な要素が組み込まれていました。それが写真とともにランダムに展示されたテキストで、全てが川島と親交の深い谷川俊太郎による詩作でした。それらは「かなしみ」や「はにかむ」、「できたら」などと題した短編の作品で、全部で30編ほどありました。



谷川のテキストを通して、改めて川島の写真に接すると、点在する風景などの「カケラ」が互いに響きあい、複数の物語が紡がれるようにも感じられるかもしれません。写真と詩を見やりつつ、漠然とストーリーを頭に浮かべながら、会場を2巡、3巡しては楽しみました。



なおタイトルの「まだなまえがないものがすき」とは、谷川の詩、「どうでもいいもの」の一節を引用したそうです。そうした「なまえがないもの」や「どうでもいいもの」が川島のファインダーを通して見ると、どこか愛おしく思えてなりませんでした。

9月9日まで開催されています。

「川島小鳥 まだなまえがないものがすき」 キヤノンギャラリーS
会期:2019年7月20日(木)~9月9日(月)
休廊:日・祝日。夏季休館:8月10日(土)~8月18日(日)
時間:10:00~17:30
料金:無料
住所:港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1階
交通:JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行線品川駅より徒歩約10分
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