「あそびのじかん」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「あそびのじかん」 
2019/7/20~10/20



東京都美術館で開催中の「あそびのじかん」を見てきました。

時に好奇心や創造性を喚起させる様々な遊びは、子どもと大人を問わず、多くの人々を夢中にさせてきました。

その遊びをテーマした展覧会が「あそびのじかん」で、6組の現代美術家らが参加型のインスタレーションを中心にした作品を発表していました。


開発好明「受験の壁」 2019年

開発好明が展示室内に巨大な壁を築き上げました。「受験の壁」なる作品で、古びたタンスを積み上げた、高さ8メートルのクライミングウォールでした。


開発好明「受験の壁」 2019年

一見するところ壁を超えなくては先に進めないようにも思えましたが、実際は1段目のみ手をかけることも可能で、右手には向こうへ抜けるための出口もありました。


開発好明「受験の壁」 2019年

開発は受験戦争で受験生の背負うプレッシャーを壁に表現していて、それぞれの背負う「家」の象徴を示すため、タンスを用いていました。さらに出口の先には何やら迷路のような空間が広がっていて、扉には「行き詰まった時、人生を振り返るのも良い。」なるテキストも記されていました。プレッシャーに置かれた状況下こそ、むしろ立ち止まって自らを省みることが必要なのかもしれません。


野村和弘「笑う祭壇」 2014/2019年

ひっきりなしにカラカラと鳴る音が聞こえてきました。それが野村和弘の「笑う祭壇」で、ボタンを小さな台座に乗せるゲームのような作品でした。そして会場では多くの人がボタンを手にしながら、台座を目がけ、線の外から何度も投げ入れる姿が見られました。


野村和弘「笑う祭壇」 2014/2019年

とはいえ、台座はあまりにも小さく、稀に当たって音を立てるものの、繰り返してもうまく乗せることが叶いません。(ボタンは1人小皿2杯分まで)いつの間にか躍起になって投げ込んでしまいましたが、ふと我に返って台座の下に広がる色とりどりのボタンを見やると、さも点描による抽象画のようにも思えました。


ハンバーグ隊「今までの行動や信頼性が一言の言葉で揺らぐなら、人のために何かをすることは∞でしかない」 2019年

私が思いがけないほどに引かれたのが、SNS上のグループチャットで活動し、13人のメンバーで構成されたハンバーグ隊のインスタレーションでした。ちょうど暗室の展示室の壁面に、三原色の映像が映されていて、時折、色が揺れ動いては、他の色と混じりっていました。またその動く様は奇妙なほどリズミカルで、しばらく眺めていると、思わずステップを踏んでは踊りたくなるほどでした。


ハンバーグ隊「今までの行動や信頼性が一言の言葉で揺らぐなら、人のために何かをすることは∞でしかない」 2019年

そして映像の反対にあるプロジェクターを見やると、実に意外なシステムで三原色が投影されていることが分かりました。というのも3つに重なったプロジェクターは、電動の乗馬フィットネス機器の上に置かれていて、ランダムに作動することで、映像が揺れ動いていたからでした。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

一際、大勢の観客を集めていたのが、タノタイガによるお面のインスタレーション「タノニマス」でした。展示室内には床から天井へ至るまで無数のお面で彩られていて、多くはカラフルにデコレーションされていました。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

実のところお面は作家の顔から型を取っていて、全て同じものでした。しかし会期中、観客がワークショップでお面にデコレーションをしていて、それらも同じように飾られていたわけでした。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

ワークショップは事前の整理券制で、私が出向いた時は既に受付を終えていました。とは言え、展示室内では大人と子どもを問わず、文房具などを手に楽しそうにデコレーションをする姿を目の当たりに出来ました。同じ形のお面でありながら、デコレーション次第で無数に異なった表情を見せているのも面白いところかもしれません。


TOLTA「ポジティブな呪いのつみき」 2016年〜2019年

「言葉」の関わりをテーマに作品を発表している、TOLTAの展示も多くの観客の注目を集めていました。「ポジティブな呪いのつみき」では、複数の言葉が書かれたつみきがたくさん置かれていて、自由に組み合わては、思い思いの文章を作ることが出来ました。


TOLTA「ポジティブな呪いのつみき」 2016年〜2019年

ただ文章の組み合わせは、必ずしも全てに脈絡があるわけでなく、ポジティブな言葉ながらもシュールで、不穏な雰囲気を醸し出していました。



ラストは「みんなとアイディアを共有しよう」と題し、好きな遊びを紙に記入し、自由に壁にかけられるコーナーもあり、来場者同士で様々な遊び方を共有することも出来ました。多くの遊びの書かれた紙を前にした時、もはや遊びは人によって無限にあるとさえ思えました。


うしお「不如意の儀」 2019年

参加型の作品が多いため、動きやすい服装、あるいは靴がマストと言えるかもしれません。見るだけでなく、手足を動かし、そして作品について頭で考えては、まさに全身で遊ぶことの楽しさを感じられるような展覧会でした。

夏休み期間中(7/26~8/30)の金曜日は、サマーナイトミュージアムとして21時まで開館し、入館料が割引になります。 *学生は無料(要証明書)。一般・65歳以上は団体料金。


文谷有佳里 公開ドローイング作品

私もサマーナイトミュージアムを利用し、金曜の夕方以降に観覧してきましたが、場内は比較的余裕がありました。しかし先にも触れたようにタノニマスのワークショップの整理券の受付は既に終了していました。ワークショップに参加を希望する方は、早い時間に出かけた方が良いかもしれません。


毛利悠子「1/0」 2011年〜2016年

引き続きコレクション展の「MOTコレクションただいま/はじめまして」も見てきました。リニューアルオープン時の第1期とは一部の内容が入れ替わり、新たに小林正人、松本陽子、毛利悠子の3作家が展示に加わっていました。


小林正人「この星へ#2」 2009年

現代美術館の醍醐味の1つには充実したコレクション展にもあります。あわせてお見逃しなきようにおすすめします。


夏休みから秋に向けてのロングランの展覧会です。10月20日まで開催されています。

「あそびのじかん」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2019年7月20日(土)~10月20日(日)
休館:月曜日。但し8月12日、9月16、23日、10月14日は開館し、8月13日、9月17、24日、10月15日は休館。
時間:10:00~18:00
 *7月26日、8月2、9、16、23、30日の金曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円、大学・専門学校生・65歳以上850(680)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOTコレクションも観覧可。
 *7月26日(金)~8月30日(金)の毎金曜日17時~21時はサマーナイトミュージアム割引あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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