「虫展-デザインのお手本-」 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
「虫展-デザインのお手本-」
2019/7/19~11/4



21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「虫展-デザインのお手本-」を見てきました。

約4億年前から地球上で生息してきた虫は、環境の変化に応じながらも多様に進化し、人間の生活とも深く関わってきました。

その虫をデザインの手本として捉えたのが「虫展-デザインのお手本-」で、虫好きで知られる解剖学者の養老孟司を監修に迎え、デザイナー、建築家、アーティストらが、虫からインスピレーションを受けた作品を展示していました。


佐藤卓「シロモンクモゾウムシの脚」 精密写真提供:小檜山賢二

いきなり虫の巨大模型が姿を現しました。それが佐藤卓による「シロモンクモゾウムシの脚」で、約5ミリほどしかないゾウムシの脚を、700倍ものスケールにして模した作品でした。下に潜って見上げると、まるで人が700分の1のスケールになっているような錯覚に陥るかもしれません。


阿部洋介+小檜山賢ニ+丸山宗利「虫のかたち」 映像編集:高野光太郎、音楽:蓮沼執太

阿部洋介らによる映像インスタレーション、「虫のかたち」も迫力満点でした。蓮沼執太による軽快な音楽とともに、前方3面、及び床面へ色とりどりの昆虫の拡大写真が次々と映されていて、まさに昆虫の世界を全身で浴びるように体感出来ました。


阿部洋介+小檜山賢ニ+丸山宗利「虫のかたち」 映像編集:高野光太郎、音楽:蓮沼執太

あまりにもカラフルな昆虫ばかりが映されるため、初めはCGかと思ってしまいましたが、実際は研究者が長年に渡って撮影し続けてきた昆虫の細密写真でした。そもそもこれほど大きな昆虫の写真を見る機会からして殆どありません。


吉泉聡「アメンボドーム」 制作協力:三原悠子(三原悠子構造設計事務所)

TAKT PROJECTの吉泉聡は、水に浮かぶアメンボに着想を得て、実際のアメンボの数百倍にも及ぶアメンボドームを築き上げました。ドームは固定されておらず、表面張力で建っていて、時折、風に揺られてか、ゆらゆらと動いていました。


パーフェクトロン「キレイとゾゾゾの覗き穴」 写真提供:奥山清市

パーフェクトロンの「キレイとゾゾゾの覗き穴」も面白いのではないでしょうか。ハンディタイプの万華鏡の中には虫が入れられていて、くるくる回転すると、まるで貴石を覗き込むかのようにキレイな光景が広がりました。しかしその一方、思わずゾッとさせられるような、言わばおぞましい模様も現れて、虫の一様ではない姿を知ることが出来ました。


向井翠「虫漢字のかんじ」

向井翠の「虫漢字のかんじ」も目を引く作品でした。壁の一面に、蚊や蚕、蜂など「虫」が付いている漢字のパネルが並んでいて、それぞれのパネルを押すと読み方が表示される仕掛けになっていました。


向井翠「虫漢字のかんじ」

特に興味深いのは、虹や蛸など、虫とは関係のないものにも虫が付いていることでした。何故に虫であるのかについて考えるのも面白いかもしれません。


鈴木啓太「道具の標本箱」 展示協力:針山孝彦(浜松医科大学)、小檜山賢二 標本協力:福井敬貴

今回、最も印象に深かったのが、鈴木啓太の「道具の標本箱」でした。ここでは虫の身体と人間の道具の関係について触れながら、てんとう虫の足を発想源にしたスニーカーや、カブトムシの頭角に着目した栓抜きなど、様々な道具を考案していました。


鈴木啓太「道具の標本箱」 展示協力:針山孝彦(浜松医科大学)、小檜山賢二 標本協力:福井敬貴

オニクワガタの歯をトングに見立てたり、エビガラスズメの巻き上げ式の口をメジャーになぞらえるなど、虫と道具を繋ぐアイデアからして面白いのではないでしょうか。その意外な組みあわせに終始、見入りました。


岡篤郎+小林真大「MAO MOTH LAOS」 サウンドデザイン:穴水康祐

ラオスを拠点に活動する小林真大の一日を追った、「MAO MOTH LAOS」のドキュメンタリー映像も目立っていたかもしれません。小林は、ラオスの首都のビエンチャンより車で8時間ほどに位置する、標高1400メートルの村、プークンに住んでいて、アジアの蛾のフィールド研究とブレイクダンサーとして活動を行なっています。


岡篤郎+小林真大「MAO MOTH LAOS」 サウンドデザイン:穴水康祐

小林が無数の蛾に囲まれながら、ダンスをする様子が映されていましたが、そもそも同国では市場に食用として虫が売られるなど、生活と昆虫が密接な存在にあり、虫が近くに飛んできても嫌がることはしないそうです。一様に虫といえども、生態はもちろんのこと、人とのあり方など、地域や国によって大きく異なることについて、改めて考えさせられました。


「虫マメチ」

会場の随所に掲示された「虫マメチ」と「養老語録」も見逃せません。「虫マメチ」は「コオロギの耳は脚にある」や「一番小さな昆虫は0.139ミリしかない。」などの豆知識を記していて、虫の生態を理解するのに有用でした。一方の「養老語録」は、監修の養老の虫に関したコメントが付されていて、いずれもが2015年に廣済堂出版より刊行された著作「虫の虫」のテキストの一節でした。


「虫の標本群」 標本蒐集:福井敬貴 標本協力:九州大学総合研究博物館

虫といえば、昨年、国立科学博物館で大規模な「昆虫点」が開催された他、今年も東京スカイツリータウンで「大昆虫展」が開かれるなど、各地で様々な展示が行われています。


隈研吾建築都市設計事務所+アラン・バーデン/江尻憲泰/佐藤淳「トビケラの巣」

しかしデザインの専門施設である21_21 DESIGN SIGHTだけに、率直なところ想像も付かないほど従来の昆虫展とは内容が異なっていました。虫の生態を通して、デザインの可能性を探る、かつてない虫の展覧会と言っても良いかもしれません。


会場内の撮影も可能でした。11月4日まで開催されています。

「虫展-デザインのお手本-」 21_21 DESIGN SIGHT@2121DESIGNSIGHT
会期:2019年7月19日(金)~11月4日(月・祝)
休館:火曜日。但し10月22日は開館。
時間:11:00~19:00
 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
 *15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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