「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 
2019/10/18~2020/1/13



メゾンエルメスで開催中の「みえないかかわり イズマイル・バリー展」を見てきました。

1978年に生まれ、チュニスとパリを拠点に活動するイズマイル・バリーは、「目に見える事物や知覚そのものの儚さを問う」(公式サイトより)べく、映像やインスタレーションなどの作品を制作してきました。



「出現」と題した3分間の短い映像に目を奪われました。誰とも分からない人物の両手が、アラブと思しき都市の広場を背景に、白い紙を光に透かす様子を映していて、ちょうど紙の向こうに手をかざした時にのみ、イメージが立ち上がってきました。



実のところ映像は、バリーの出身でもあるチュニジアの独立の日を捉えていて、それを祝うためか大勢の人々が集っていましたが、いずれもが光に包まれては現れたり消えたりしていて、あたかも不安定で実在しない幻想のようにも見えました。



「線」も人の身体、今度は腕を扱った映像で、左手を添えた右腕の脈の上に、ただ1つの小さな水滴をのせた様子を捉えていました。一見、何も変化がないようにも思えましたが、よく見ると水滴は脈の動きと同時にかすかに震えていて、水滴が魂をもっては鼓動を打つかのようでした。何とも繊細な感覚を表してはいないでしょうか。



エルメスの展示室全体を、1つの「光学装置」(公式サイトより)へと変貌させたインスタレーションも魅惑的でした。薄暗がりのスペースの壁には、淡い色のついたトレーシングペーパーなどの薄い紙が貼られ、風に揺られつつ、わずかに靡いてもいました。この他にもドローイングであったり、木片などが組み込まれていて、いずれも明るい光を放っていました。



ここで面白いのは、この暗室全体もバリーの作り出した作品であることでした。というのも、エルメスのガラスブロックを完全に塞いでいるわけではなく、ガラスの内側に仮設の壁を築いて暗くしていたからでした。



そしてちょうど紙やドローイングの部分に小さな切り込みを入れて、外から内部へと光を誘っていました。つまり先に見ていた光は内にあるわけではなく、外からもたらされたものでした。



この壁の存在によって空間は大きく表情を変えていて、作品の表と裏の関係を半ば曖昧にしていました。率直なところ、私自身、内部の暗い部分のみの展示と思い込んでいたため、外のガラスブロックのある空間に出た時は、まるでパラレルワールドを行き来したかのような錯覚に囚われました。



ちょうど夕方前に出向きましたが、鋭敏な光を取り入れたインスタレーションゆえに、日没後には表情を変えて見えるかもしれません。手触り感のあるドローイングや映像に惹かれつつ、光を操って見せるバリーの才知にたけたアプローチにも感心させられました。



1月13日まで開催されています。おすすめします。

「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス
会期:2019年10月18日(金)~2020年1月13日(月・祝)
休廊:11月13日(水)、12月11日(水)、年末年始(12月30日〜1月2日)。
時間:11:00~20:00 
 *日曜は19時まで。入場は閉場の30分前まで。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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