『ボテロ展 ふくよかな魔法』 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
『ボテロ展 ふくよかな魔法』
2022/4/29~7/3



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ボテロ展 ふくよかな魔法』を見てきました。

1932年にコロンビアにて生まれた美術家、フェルナンド・ボテロは、1950年代の半ばよりボリュームのある形態で対象を描き出すと、独特の絵画表現にて評価されてきました。

そのボテロの生誕90年を期して開かれたのが『ボテロ展 ふくよかな魔法』で、会場には近年の作品を中心に、油彩、水彩、素描のあわせて70点が公開されていました。

まず初めは若きボテロの作品で、まだ17歳の時の『泣く女』や20代にして描いた『バリェーカスの少年(ベラスケスにならって)』などに目を引かれました。

この『泣く女』にもすでにボリュームへの関心を見て取れましたが、20歳にしてヨーロッパへと渡ったボテロは、特にイタリアにおいてクワトロチェントの絵画や、ロベルト・ロンギといった理論家の著述を通じ、自らの絵画の基盤を形成していきました。

それに続くのが果物や楽器といった静物の作品で、いずれもバルーンに空気を送ったようなふくらんだすがたを見せていました。1956年にボテロは、アトリエでマンドリンを描き、マンドリンの穴を小さく表すと楽器がふくらんで見えたとしていて、いわゆる「ふくらみ」のボテロの様式が構築されていきました。

ボテロの作品のモチーフとして重要なのは、聖母や守護天使といった信仰と、故郷のコロンビアの人々の暮らしなどを表したラテンアメリカの世界でした。そもそもボテロの創作には青年時代の記憶が活動の主題となっていて、例えば司祭らは、ボテロが故郷で生きた1930年から40年代において突出した地位にありました。

また2006年にメキシコ南部の都市、シワタネホにてサーカスに出会うと、サーカスの役者らを主題とした作品を描くようになりました。


『ルーベンスと妻』 2005年

ボテロは1950年代に欧州へ渡航して以来、ベラスケスやヤン・ファン・エイク、それにレオナルド・ダ・ヴィンチといった美術史における重要な芸術家の作品を引用していて、いずれも「ふくらみ」の様式にて絵画へと表しました。


『モナ・リザの横顔』 2020年

そもそもボテロが注目を集めるきっかけとなったのは、1963年にメトロポリタン美術館で『モナ・リザ』が公開された際、ボテロの『12歳のモナ・リザ』がニューヨーク近代美術館にて紹介されたことで、今回も2020年に改めてモナ・リザを表した『モナ・リザの横顔』が展示されていました。


『アングルによるモワテシエ夫人にならって』 2010年

一連のふくらみの絵画を追っていて印象に深いのは、丸みを帯びたフォルムが醸し出す安定感、ないし包容力と、鮮やかな色彩をともないながらも、意外とマットな質感を見せていたことでした。


『アルノルフィーニ夫妻(ファン・エイクにならって)』 2006年

『アルノルフィーニ夫妻(ファン・エイクにならって)』は、初期フランドル美術の傑作『アルノルフィーニ夫妻像』を参照したもので、どこか神秘的な同作の絵画世界がふくらみによってユーモラスに表現されていました。人々の顔にほとんど表情がないのにもかかわらず、人懐っこいような親しみを覚えるのも不思議な魅力といえるかもしれません。


『ピエロ・デラ・フランチェスカにならって(2点組)』 1998年

第6章「変容する絵画」の一部作品に限り、撮影が可能でした。また5月中の金曜・土曜日の17時以降は、展示室内の全作品の撮影ができます。(混雑時には制限する場合あり。)


会期中のすべての土日祝日は、事前にオンラインによる入館日時予約が必要です。


『小さな鳥』 1988年 広島市現代美術館

入口近くの屋外にボテロのかわいらしい立体作品、『小さな鳥』が展示されていました。お見逃しなきようご注意ください。

7月3日まで開催されています。

『ボテロ展 ふくよかな魔法』@botero2022) Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2022年4月29日(金・祝)~7月3日(日)
休館:5月17日(火)。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金曜と土曜は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1800円、大学・高校生1100円、中学・小学生800円。
 *会期中の土日祝はオンラインによる入場日時予約が必要。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分
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